calling herself Rin is the girl.part2
依頼者視点となります。更新が遅くなってすみません(^^ゞ
「いい加減にしなさい!」
もの凄い剣幕で事務所の扉を開け放ったのは、やや小太りの身体を宝石で着飾った中年女性だった。彼女は呆然としているミーナたちを余所に、ずかずかと少女の元へ行く。
「『エリカ』! あんた、また勝手にこんなところに来て!!」
「『エリカ』……?」
ミーナたちは顔を見合わせる。すると、中年女性はフンっと鼻で笑って「どうせこの子が『リン』とでも名乗ったんだろう? まったく、姉さんもとんだ子供を押し付けてくれたよ。この子はね、エリカっていうちゃんとした名前があるのさ。それなのに、私が引き取った時から自分のことを『リン』だと思い込んでいる。気違いなのさ」と吐き捨てた。
「気違い? ハンッ、それを言うならあんたの方が気違いだぜ!」
リン―――いや、エリカ―――は反抗的な目を義母に向ける。
「宝石で着飾らないと見られないような姿だなんて―――ま、あんたの場合、身につけていても見られないけどな!」
「何だって?! ああ、こんなイカれた子を押し付けられるなんて、私ゃ本当に不幸だよ。何度言っても妄想を止めないし、口調はまるで男みたいで―――」
「オレは男だ!!」
少女は叫ぶように言った。
「オレは『エリカ』なんて名前じゃねえ。オレは『リン』だっつってんだろ!」
その時、一人の少年が恐る恐る事務所にやって来た。クリフトだ。少女は目を見張った。
「お前……」
驚きと怒りのあまり声が出ない。
白に近い金髪、氷のように澄んだ瞳。その表情からは何を考えているのかまったく読めない。―――間違いない。あいつだ。
エリカの脳裏に、遠い昔の記憶―――仲間のフリをして、自分たちを裏切った男―――が浮かぶ。
「―――っの野郎!!」
エリカはクリフトに飛びかかると、馬乗りになって彼を殴った。
「!? おいっ、やめろって!!」
クリフトの後から現れた背の高い青年は、何事かと驚いて二人を引き離す。
「大丈夫か?」
青年はクリフトを立たせてやると、一部始終を見ていた者たちに「一体何があったんだ?」と尋ねる。
「さあ。僕の知ったことじゃない」
サクラはさも興味なさげに肩を竦めた。その時、静寂を破る音がした。
「エリカ! 余所様の子になんてことをするんだ! 謝りなさい!」
その音は、厚化粧の義母がエリカの頬を叩いた音だった。
「だって、あいつは―――!」
エリカは一瞬クリフトに目をやり、彼の表情に驚きの色がないのを確認すると、舌打ちした。
「憶えてねえのかよ。それとも、忘れているフリをしているだけか? 卑怯なあんたらしいよ。……まあ、どっちでもいい。あんたがあんたであることは変わらねぇしな。義母に免じて、とりあえず謝ってやるよ、悪かった」
義母が何やら喚いたが、オレは無視した。『あの人』に比べたら、義母なんて怖くも何ともない。
「お前に話がある。ちょっと時間をもらってもいいか?」
半ば強制的だったが、それでもオレは確かめたかった。
忘れてるとは言わせねえ。忘れていたとしても必ず思い出させてやる。オレたちのことを―――。




