a storm is rising.
結局クリフトの両親は見つからず、どこに住んでいたかも分からずじまいになってしまった。ミーナの苦労は水の泡になってしまい、プライドの高い王子様は珍しくもにっこりと、絶対零度の笑みを浮かべて一言。「僕はこのことについて一切関与しないからな」
怒りの度が計りきれなくなってしまった。
「どうするんだよ……」
勝手について来てしまったとは言え、帰るべき家がなく親すらいないガキを再び外に放り出すなんて俺にはできない。そんなことができる奴は人間的に終わっていると思う。
大きく溜息をつく俺に、ミーナは呆れたように「ヒバリは何も考えていないんだから」と言った。カチンとくる言葉だが、今に関して言えばごもっともな意見だ。
悩み事ができそうになったら悩む前に即・逃げるというのがモットーの俺がこんなにも悩んでいるというのに、当の本人はまったく気にしていないようである。いや、言葉が通じていないだけか?
「あの、水を差すようなことを言ってもいいですか?」
すばる兄さんがやや困ったように、全員を見渡して言った。
「どうぞ」
頭が痛くなりそうな展開に、サクラは投げやりに許可した。席を外したい、というのが本音だろうが。
案の定、すばる兄さんはとんでもないこと―――世間の常識から見れば、至極まともなこと―――を口にする。
「この国には、身寄りのない子供を保護したら保護をした人間が養う決まりがあります」
……今、何て言イマシタカ?
社会科の授業で習ったことなどすっかり忘れてしまったというかのように俺は訊き返す。すばる兄さんは面倒くさがることなくもう一度、同じことを言った。
そういえば学校で習ったよなぁ、という感じでしか思い出せない法律。―――フザけた法を作りやがって。この法律を作った政府の人間、今すぐ叩きのめしてやる。
絶望的な気分に追い打ちをかけるかようにミーナは言った。「法を破ったら、ヒバリは犯罪者になっちゃうね」
俺にどうしろと? 五年間このガキと暮せって言うのか?
「そうするしかないでしょう」
すばる兄さんは俺の言葉に頷いた。兄貴を尊敬していないわけでもないが、無神経過ぎるところはどうかと思うな。人間、誰だって落ち込むことはあるんだぜ。
「ハイ、決定~! それじゃあ私たちはもう帰るから!」
何気に非情だな、こいつ。
「お先に失礼します」
続いて出て行く兄。
おい、お前らただ面倒事を俺に押しつけてるだけだろ! 保護者なら別に誰がなったって構わないだろうが!!!
「お前が拾ったんだから、お前が面倒見るべきだろう」
俺まだ21なんですけど!! 人生これから、って時ですよ?! そんなの御免だ!!
すると、サクラは冷笑して決定的な一言を告げた。
「たとえ僕がこいつの面倒を見ることになってもね、僕には保護者の権利がないんだよ。未成年だからね」




