he stretched out his arm as if he were grasping at thin air.
BL要素が混じり始めたような、そうでないような……。
「俺はまだここにいるよ」
そう言ったのはヒバリだった。彼は玄関口で少年が出てくるのを待っていると告げる。早く帰って小説を読みたいサクラは「好きにしろ」と一言残し、すぐに去って行った。ミーナは慌てて彼の後を追いかけていく。
「何か気になることでも?」
すばるは帰り際、弟に尋ねた。ヒバリの気まぐれなところは相変わらずだが、それとは違うような気がした。さっさと帰ることはあっても、誰か人を待っていたことなど一度たりともなかったからだ。
「誰か一人ここにいないと西村サンを助けられないじゃん?」
『執行人』は人を殺さない。罪に見合う『罰』を与えるだけだ。
「……そうでしたね」
「じゃあ、後は俺に任せとけ。奴が出て行った後で救急車を呼ぶからよ」
「分かりました。後始末をお願いします、ヒバリ」
「了解」
鮮血が辺り一面に散乱している。やや離れたところに人が倒れていた。西村春子だ。少年はぼんやりとそれを見ていた。暫くしてから、彼は何か用事を思い出したかのようにポケットから布を取りだした。処刑に使った獲物に付着した血液を拭き取る。それから少年は布を床に捨てた。
『外に出れば、思い出せるわ』
あの子は今どうしているのだろうか。とりあえず言われたことに従ってみたが、人を傷つけることをするのは気持ちの良いことではなかった。
僕は狂っていない。狂っているのは、この世界の方だ。
記憶が蘇る。世界はまだ、終わっていない。
僕は外に出た。周りは静まり返っていた。この場所だけ時が止まってしまったかのようだ。躊躇いなく人を傷つけてしまった僕に科せられた罰なのかもしれなかった。
「綺麗な空だな」
頭上から声が降ってきた。僕は顔を上げた。―――空は見事に曇っている。この空を綺麗だと思う人がいることに驚きを覚えた。
「そう思わないか?」
彼は自信満々に言う。他の誰でもない、僕に向かって。その時に、僕はまた記憶の一部を取り戻したのだった―――。
「綺麗な空だな。そう思わないか?」
―――子供に『執行人』をやらせる『魔女』がいたなんてな。驚きだ。
「曇ってるよ」
そいつは生意気にも、ずばりその通りなことを言う。せっかく人がフレンドリーに歩み寄ってやろうってのに、何だよその態度は。何か文句でもあんのか? ―――そう言おうとした、その時だった。
「やっと見つけた!!」
虚ろな目に光が宿ったかと思うと、意味不明なことを言いながらそいつは嬉しそうに抱きついた。誰に? 俺にだ。そして奴は続けざまに信じられないことを言った、無邪気な笑顔を浮かべて。
「ずっと君を探していたんだ。会いたかったよっ、『メグリヤ』!」




