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white snow  作者:
Kazuya Saiki (the angel became a devil in a church on Sunday afeternoon.)
21/60

hospital on the mountain again.

 「目が覚めた?」

 僕はベッドに横になっていた彼女に声をかけた。彼女は頷き、ゆっくりと起き上がる。暫くして、彼女は思い立ったように窓の格子に手を添えた。彼女の吐く息が窓硝子を白く曇らせる。

 雪が降っている外。部屋は薄暗いままだ。いや、どれだけ明るくても僕には暗く感じる。気持ちが沈んでいるからかもしれない。

 「ずっとこのままだったら良かったのに」

 彼女は哀しげに微笑んだ。

 「世界は点と点と点で繋がっているの。もしもこの世に三つの世界があるとしたら、私たちは一つ目の点で生まれ、死ぬ。死んだら二つ目の点に行く。また死んだら、今度は三つ目。そうやって生きていくの。ずっとその三つの世界を巡って行くのよ。どう? 素敵でしょう」

 僕には彼女の言いたいことが分からなかった。―――いや、そうじゃない。分からなくなってしまったんだ。

 彼女はあの日を境に壊れてしまった。彼女を元通り戻すことは不可能だった。

 「もしも私が死んだら、あなたは悲しむのかしら」

 「そういう冗談は嫌いだよ」

 彼女はくすりと笑う。

 「そうね。あなたは優しいから、正直に『どうでもいい』って言えないのよね。分かっているわ」

 ―――違うよ。そうじゃない。

 けれど、僕はそれを言うことができなかった。

 「私はもう何も見たくないけれど。あなたにはまだ、希望が残っているわ」

 彼女の透き通った声は今にも消え入りそうだった。

 外の世界に絶望している少女。目を離した隙にいなくなってしまいそうなくらい儚げだ。

 「あなたはまだ絶望したら駄目なのよ。あなたを待っていてくれる人がいる」

 「無理だよ。僕は……」





 『狂っていることの何が悪いと言うの』

 何が悪くて何が正しいのか。

 『俺は彼女を愛していた。だから殺した』

 僕らは何のために生きているのか。





 彼女は諭すように言った。懐かしい、もう随分と見せてくれなかったあの笑顔を浮かべて。

 「外に出るべきよ。あなたが患っている病気を治す一番の方法は外に出ることなの」

 ―――君だって同じじゃないか。そう言うと、彼女は意地悪く笑った。

 「嫌だって言うのは、許さないから」

 彼女は淫らなキスをする。

 「ボクのせいだって思ってもいい。ボクがカズヤをメチャクチャに壊してしまった。全部ボクが悪いんだ。経緯はどうであれ、結果的にカズヤを精神病院ここに強制入院させてしまったんだから」

 「……責めるつもりはないよ」

 僕は彼女の長い髪を撫でた。

 「それなら、ボクのために君は外に出るべきなんだ。でないと、君はいつまでたっても前に進めない。―――それくらい分かっているんでしょう? カズヤ」

 アルテミスは僕の手をきゅっと握る。彼女が心に負った傷は計り知れないものだった。それでも、君は笑っていた。暗い影を落として―――。

 

 

 

次話から主人公交代となります。ファンタジー要素入るかもです。

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