hospital on the mountain again.
「目が覚めた?」
僕はベッドに横になっていた彼女に声をかけた。彼女は頷き、ゆっくりと起き上がる。暫くして、彼女は思い立ったように窓の格子に手を添えた。彼女の吐く息が窓硝子を白く曇らせる。
雪が降っている外。部屋は薄暗いままだ。いや、どれだけ明るくても僕には暗く感じる。気持ちが沈んでいるからかもしれない。
「ずっとこのままだったら良かったのに」
彼女は哀しげに微笑んだ。
「世界は点と点と点で繋がっているの。もしもこの世に三つの世界があるとしたら、私たちは一つ目の点で生まれ、死ぬ。死んだら二つ目の点に行く。また死んだら、今度は三つ目。そうやって生きていくの。ずっとその三つの世界を巡って行くのよ。どう? 素敵でしょう」
僕には彼女の言いたいことが分からなかった。―――いや、そうじゃない。分からなくなってしまったんだ。
彼女はあの日を境に壊れてしまった。彼女を元通り戻すことは不可能だった。
「もしも私が死んだら、あなたは悲しむのかしら」
「そういう冗談は嫌いだよ」
彼女はくすりと笑う。
「そうね。あなたは優しいから、正直に『どうでもいい』って言えないのよね。分かっているわ」
―――違うよ。そうじゃない。
けれど、僕はそれを言うことができなかった。
「私はもう何も見たくないけれど。あなたにはまだ、希望が残っているわ」
彼女の透き通った声は今にも消え入りそうだった。
外の世界に絶望している少女。目を離した隙にいなくなってしまいそうなくらい儚げだ。
「あなたはまだ絶望したら駄目なのよ。あなたを待っていてくれる人がいる」
「無理だよ。僕は……」
『狂っていることの何が悪いと言うの』
何が悪くて何が正しいのか。
『俺は彼女を愛していた。だから殺した』
僕らは何のために生きているのか。
彼女は諭すように言った。懐かしい、もう随分と見せてくれなかったあの笑顔を浮かべて。
「外に出るべきよ。あなたが患っている病気を治す一番の方法は外に出ることなの」
―――君だって同じじゃないか。そう言うと、彼女は意地悪く笑った。
「嫌だって言うのは、許さないから」
彼女は淫らなキスをする。
「ボクのせいだって思ってもいい。ボクがカズヤをメチャクチャに壊してしまった。全部ボクが悪いんだ。経緯はどうであれ、結果的にカズヤを精神病院に強制入院させてしまったんだから」
「……責めるつもりはないよ」
僕は彼女の長い髪を撫でた。
「それなら、ボクのために君は外に出るべきなんだ。でないと、君はいつまでたっても前に進めない。―――それくらい分かっているんでしょう? カズヤ」
アルテミスは僕の手をきゅっと握る。彼女が心に負った傷は計り知れないものだった。それでも、君は笑っていた。暗い影を落として―――。
次話から主人公交代となります。ファンタジー要素入るかもです。




