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white snow  作者:
Kazuya Saiki (the angel became a devil in a church on Sunday afeternoon.)
19/60

one wing engel fall down sky.


 「それにしても、どうして蝋燭を並べる必要があったんだ?」

 五本の蝋燭。死体を中心に、五芒星を作っていた。

 「五芒星ペンタグラム―――」ヴィネは呟いた。

 「ペンタグラムは、陰陽道では魔除けの呪符として伝えられているのですよね?」

 ルイージャはペンタグラムの説明を始めた。

 ペンタグラムの印にこめられたその意味は、陰陽道の基本概念となった陰陽五行説、木・火・土・金・水の5つの元素の働きの相克を表したものであり、あらゆる魔除けの呪符として重宝されていた―――。

 「もしかしたら、犯人は魔除けの効果を狙って蝋燭を置いたのではないでしょうか」

 謎の蝋燭。なぜ犯人は蝋燭を置いたのか。それに―――。

 「盗まれた本数と同じですね」

 ルイージャは僕が思ったことをそのまま言ってくれた。

 「それが何なのよ。蝋燭なんて、今はどうでもいいことじゃない」

 キアラは苛立ちを隠そうともせず言い放つ。

 「いや、そうでもないんだ」アーティは不敵に笑った。

 「蝋燭を盗んだのも、修道長を殺したのも、全て同一人物が行ったんだよ」

 二つの事件は繋がっていたと言うのか。

 「分かったよ、犯人が」

 アーティは自慢するわけでもなく、小説を読んでふと思いついたかのように言った。

 「犯人が分かったって?」

 僕が訊き返すと、アーティは頷いた。

 「全ては繋がっていた。犯人はイザベラ様を殺す機会を窺っていた。そして、昨日の夜に実行したんだ」

 「何も昨日じゃなくてもいいじゃないか。『忌日』だったんだろう? 犯人が特定し易い時に、どうして」

 アーティは一冊の本を僕に渡した。

 『聖なる人』

 アーティはページを指定した。そこを開いてみると、こう書かれていた。





 『聖人はたとえ忌日であろうとも殺されない』。





 「まさか……」

 「そのまさかだよ。この本は礼拝堂にある机の上に置いてあった。―――犯人はイザベラ様を尊敬していた。聖人だと思うほどにね。だが、証拠がない。犯人は証拠が欲しかった」

 「それで、犯人はこの本に書かれていることを試してみたのか……」

 死ななければ成功。死んでしまったら―――。

 「聖人であるはずのイザベラ様が死んでしまった時、犯人は途方もない悲しみと絶望に襲われただろうね。―――そうでしょう?」

 アーティは振り返って言った。そこには彼女はんにんがいた。アーティは彼女がいるのを知っていてこの話を切り出したのかもしれない。

 「君がどうして尊敬してやまないイザベラ様を殺したのか、ボクはもう分かっている。君が犯人だという証拠も」









 「ふふ。悪いことって、やっぱりバレてしまうものなのね」

 彼女は諦めたように両手を挙げた。斉木は絶句した。

 「どうして……」

 彼女は妖艶に微笑んだ。その微笑み方には見覚えがある。

 「どうして私が犯人だと思ったの?」

 彼女は犯行を認めた。あまりにもあっさりとしていた。

 「ここにはイザベラ様を尊敬している修道女が沢山いた。だから、『聖なる人』の本を見つけた後もボクには犯人が誰なのか分からなかった。けれど君は自ら言ったじゃないか。君が―――アレッシアが―――犯人である証を」

 『五芒星ペンタグラム―――』

 ”彼女は身体を丸め、その場に縮こまっていた。”

 ”「わ、私、雷苦手なんです」”

 ”「へぇ~、知らなかった! ヴィネって案外怖がりなんだね!」”

 ”「雷だけはどうしても……嫌いなんです」”

 すみません。ヴィネはそう言い、微笑んだ。気にするなよ、と斉木は彼女アレッシアに言う。

 ヴィネ。

 彼女の名前は―――。

 「『アレッシア・アントニオ・ヴィネ』。それが私の名前よ。―――顔はベールでほとんど隠れていたし、キアラたちはファミリーネームで私を呼ぶこともあったから、あなたは『ヴィネ』と『アレッシア』という二人の人間が存在していると勘違いしてくれていたようだけれど」

 ヴィネ―――アレッシアでもある―――は冷めた目で斉木を見てから、視線をアーティに移した。

 「どうやらあなたは騙されなかったようね」

 アーティは肩を竦めた。「君に見惚みとれていたカズヤと一緒にしないでよ」

 「見惚れてなんかいないよ」

 「さあ、どうだろうね」

 斉木は反論しようと思ったが、止めた。今の論点はそこじゃない。

 五芒星は魔除けのために使われる。だが、逆さまに描いた時の五芒星は―――。

 「君は真っ先に逆さまに描かれていた五芒星の意味に気付いた。だから思わず声に出してしまったんだ」

 「? 蝋燭を立てたのはアレッシアじゃないのか?」

 アレッシアは首を横に振る。「いいえ、違うわ」

 それなら誰が? 

 僕の考えを見透かしたようにアーティは頷いた。

 「ヴィネ―――いや、アレッシアは違う。確かに修道長を殺したのは彼女だ。けれど、彼女は殺しただけだった」

 犯人が二人いる……?

 「修道長を尊敬し、『聖なる人』を読んでいた修道女はアレッシアだけではないはずだ。けれど、彼女には五芒星を描く必要はなかった。なぜなら、『聖なる人』に五芒星のことは書かれていなかったからだ。五芒星を描いたのは、修道長が殺されているのを真っ先に発見した人物。そして、五芒星の意味をとてもよく知っていた―――」




 『ペンタグラムは、陰陽道では魔除けの呪符として伝えられているのですよね?』




 「ルイージャ、五芒星を描いた人物に当てはまるのは君しかいないんだ」

 

 



 




 


 

 

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