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white snow  作者:
Kazuya Saiki (the angel became a devil in a church on Sunday afeternoon.)
17/60

Jesus Christ


 「蝋燭?」

 「ええ。高価なものではなくて、市場に売っている普通の蝋燭です。私たちには、なぜ蝋燭が盗まれるのか分かりません」

 僕らは『祈りの間』についた。大理石でできている床を歩くと、靴の音が反響する。

 ふいにヴィネが声をかけてきた。

 「ここがどうして『祈りの間』と呼ばれているか、分かりますか?」

 アーティも彼女を見やる。

 「ええ。……何となく分かります」

 そこには十字架に張り付けられたイエス・キリストがいた。もちろん模型だ。彼は悲痛そうな表情を浮かべていた。上の方の脇腹辺りに刺し傷がある。肢体は釘で打ちつけられていた。あまりにも無残だ。信者でなくとも、祈りたくなるようなものだった。

 その時、他の修道女たちが『祈りの間』にやってきた。

 「あら、アレッシア。まだお祈りをしていなかったの?」

 「ええ。ちょっと色々あってね」

 色々、というのは蝋燭泥棒の件についてなのだろう。ルイージャは顔馴染みであるアーティに「そちらの方は?」と尋ねていた。そちらの方、つまり僕のことなのだろう。

 「カズヤだよ! ボクの新しい友だち!」

 「そう、よかったわね。これも神様のお導きに違いないわ」

 そう言って、ルイージャは巨大な十字架を仰ぎ見た。

 「そうだ、ヴィネ。イザベラ様がどこにいるか知っている?」

 キアラはややきつい口調で言った。彼女は普段からそうなようで、ヴィネは気にしなかった。ヴィネがイザベラがいる場所を言うと、キアラは納得したようにその場を退出した。残されたルイージャは「ありがとうございます。では、ごゆっくり」とお辞儀をし、彼女の後について行った。

 「アレッシア、君は行かなくていいの?」

 すると、アレッシアは微笑んだ。

 「ええ、ここにいます。皆様といる方が楽しいもの」

 「だよねっ!」

 アーティはつられてにっこりと笑う。するとその時、教会の鐘が鳴り響いた。同時に、門が閉まる音がする。

 「何だ?」

 アレッシアの顔色が蒼白になった。

 「大変! ああ、どうしましょう……!」

 彼女は泣き崩れるようにその場に座り込んでしまった。

 「どうしたのですか?」

 嫌な予感がよぎった。案の定、彼女はそれを口にした。

 「今日は特別な日だったの。今日はもう礼拝堂の外に出られません……」

 「ボクも?」

 「はい。誰であろうと、『忌日』は日没後に外出してはいけないのです。もし外に出てしまえば、災いが一身に降り注ぎ、二度と神の元へ行くことができないでしょう」

 ヴィネが言った。









 夜。イザベラは戸締まりの点検をするために、ランプを片手に教会の廊下を歩く。懐中電灯ではなくランプを使用しているのは、経費節約のためだ。

 イザベラが全ての点検を終えた時、前方から何かが落ちる音がした。

 「……?」

 イザベラは多少不安になった。

 ―――見周りをしたけど、誰もいなかったじゃない。大丈夫よ、大丈夫。

 それでも不安はぬぐい切れなかった。彼女は身震いをし、急ぎ足でその場を去った。

 翌日、彼女は皆の注目を集めることとなる。彼女はいくつもの蝋燭に囲まれて、死んでいた―――。

 

 

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