who didn't forgive it.
レインは死んでいた。首吊り状態で―――。
「レインっ!」
アンジェリカは彼の元へ駆け寄った。
レインは驚きに満ちた目を見開いていた。眼球は乾いていた。確認するまでもなく、彼は死んでいた。アンジェリカはレインの足元で崩れ落ちる。
「どうしてっ……! レインっ……」
途方に暮れるアンジェリカを気遣いながら、カイルは言った。「ひとまず彼を降ろしてあげよう」
「自殺……なのかな」
僕は恐る恐る死体を見た。外傷はない。だが、カイルは険しい目つきをしていた。どうしたんだと声をかけると、彼はある重大なことを指摘した。
「首吊りで自殺する場合、縄の痕は斜めになるんじゃないか?」
何かを考える間もなく、僕は死体に目をやった。縄の痕は―――。
「水平だ……」
つまり、誰かがレインを殺したということになる。誰か? そんなの決まっているじゃないか。
「あなたたちが殺したのね!」
アンジェリカは喚き叫んだ。彼女は恋人を失ったあげく、殺人の可能性があると言われて取り乱していた。
「落ち着け、アンジェリカ。俺がレインを殺すわけないだろう。それに、知り合ったばかりのサイキが彼を殺す理由もない」
「レインが自殺したって言うの? そんなわけないじゃない、彼は殺されたのよ! あなただってそう言ったわ!」
「殺されたとは言っていない。それに、俺たちの中に犯人がいるとは限らないだろう?」
カイルの言うことはもっともだった。犯人がこの中にいるとは限らない、確かにそうだ。……可能性は極めて低いが。もしも、この中に犯人がいなかったとしたら―――。
「あの人よ……。あの人が彼を殺したんだわ! 消えたと見せかけて彼を殺したのよ、そうに違いないわ!」
彼女が言う『あの人』。探検家のことだ。探検家が生きている? まさか、そんなはずない。それとも、僕の推理が間違っていたと言うのか?
「とりあえず、今までに起きたことを整理してみないか?」
僕は何も分からないまま話を切り出した。彼らを落ち着かせるためには話し合いをさせることが一番だと思った。
「まず、探検家が牢獄で消えた。どこを探してもいなかった、それは確かだね?」
牢獄内は暗かった。起伏の激しいところを歩いた経験がない僕は足元ばかりを見ていたので、本当に探検家がいなかったのか分からない。探検家が目の前にいたにも関わらず、声も出さずに死んでいく探検家が目の前にいたかもしれなかったことに僕は気付けなかったのかもしれない。
二人は強く頷いた。「いなかったよ、どこにも」
「そして、翌朝―――つまり今日―――レインは何者かに殺された」
僕がそこまで言うと、アンジェリカは下唇を噛みしめて俯いた。カイルもやるせない表情を浮かべている。
その時、僕はあることに気付いた。もしかしたら犯人はあの人に好意を抱いていたのではないか。
「コーヒーいる? インスタントだけど」
そう訊かれ、僕は頷いた。
答えは夜になれば分かるはずだ―――。