alltough you killed God,I don't revenge you.part 2
日本。
「気をつけろよ、サイキ。森を舐めている奴は命を落とすんだぜ」
転びそうになった僕を見かねたのか、先頭にいたカイルは立ち止まって言った。森は傾斜が激しく、歩きにくいところが多かったが、彼は真っ直ぐな道を歩くかのようにすいすいと先を行ってしまう。
カイル、アンジェリカ、レイン、僕の四人は鬱蒼とした森の中を歩いていた。この森に詳しいのはカイルだ。カイルは何度もこの森に訪れたことがあるらしい。
いや、そうじゃない。この森を抜ける道を知っているのは、もはやカイルしかいないのだ。
僕らをここまで導いてくれた探険家はいなくなってしまった。僕の推理が正しければ、彼はすでに殺されている。彼らの手によって。
なぜ彼らは探険家を殺したのか。疑問は残る。手口は分かったが、理由が分からない。
「どうして彼は消えてしまったのかしら」
アンジェリカは蒼ざめた顔をして言った。僕にはそれが嘘であるかのように見えた。いや、実際彼女の言うことは嘘だ。彼女は真相を知っている。
レインは―――これもまた、演技なのだろう―――気味が悪そうに「消えたなんて言うなよ。人が消えるわけがない」と言った。
太陽が沈む。
「今日はここまでだ。テントを張ろう」
カイルはそう言うと、返事を待たずにテントを張り始めた。冗談じゃない、とアンジェリカが吐き捨てたのを僕は聞き逃さなかった。けれど、カイルには聞こえなかったようだ。レインは彼女を宥めようとしている。
カイルたちは留学生だった。一般人が自由に出入りできる牢獄が日本の森の中にあるということを彼らは知り、興味を持った。そして、そこに行ってみようということになった。英語が喋れる日本人ということで探検に誘われた僕はやはり興味をそそられ、ここまでやってきたのだ。ちなみに、全ての会話は英語である。
それにしても、まさかこんなことになるとは思わなかった。
翌朝。僕が目覚めると、レインはすでにいなかった。
「おはよう、サイキ。よく眠れた?」
アンジェリカだ。昨日の不機嫌はどこに行ってしまったのか、彼女は清々しい表情をしていた。
「まあね。―――レインは?」
僕はアンジェリカに尋ねる。彼女とレインは恋人同士だ。もしかしたら、行き先を彼女に告げているかもしれない。
「さあ、知らないわ。私が起きた時はもういなかったもの。カイルなら知っているんじゃない?」