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Lesson4 『酒場は有用なインフラだから世界中にある。』

幾ら冒険者の俺とは言え、ずっと野営しているのは気が滅入る。

どれだけ野生児ぶっても、結局人間は街暮らしが一番なのだ。

割の良い安宿に陣取り、フラフラとグリーンタウンを散歩する。


遊んでいる訳ではない。

喉元まで出掛かっている【答え】を出したかったのだ。

商売のコツを掴みかけている確信はあった。

ただ、己の無学のせいか、それをまだ言語化出来ていないのだ。

なので、少しでも多くの人と交わり、言語化の切っ掛けを得ようと思ったのだ。



『マスター、お久しーっす。』



「おーう、冒険屋ー!!

久しぶりだなー、どこ行ってた?」



『冒険に決まってるじゃないですか。』



「はっはっは、違ぇねえw

何か珍しい話はあったか?」



『そっすねえー。

農村じゃあホーンラビットが増えて困ってる事くらいでしょうか?』



「あはは、珍しくもなんともねーww

何千年前からずっとある話だww」



そりゃあ、そうだ。

酒場で話すにはパンチが弱い。



「もっと、アレだ。

ドラゴンとかキマイラとかワイバーンとか!

そういう絵巻物に出て来るようなデカい連中相手の武勇伝はねーのか?」



『そんな連中と鉢合わせてたら、今頃死んでますってww』



「違ぇねぇww」



『「はっはっはww」』



色々酒場を回ってみたが、この飛翔亭が俺には一番合っていた。

マスターが話好きの社交好き。

宿屋区域の真ん中にあるので出張族が多いのも流れ者の俺にとっては居心地が良い。



「おう、ウォーカー。

オマエ、あちこち偵察に行ってるんだよな?」



『あ、はい。』



「あっちにゴールド商会の会長が飲んでるから色々話を聞かせてやってくれよ。」



『え!?

ゴールド商会?』



おいおいおい、グリーンタウンでも五本の指に入る大店じゃないか。

俺みたいな流れ者が話し掛けていいのか?



「ん?

この前は仲良く飲んでただろ?」



『え?

俺がっすか?』



「ほら、ゴブリンの話で盛り上がってたじゃん。」



『ああ、あの爺さん。』



「ほら、奥で1人で飲んでるから、オマエから声を掛けてやれ。」



『あ、はい。』



ゴールド商会の会長などという肩書を聞けば思わず臆してしまうが、一緒に飲んだオッサンだと思うと何とかなる気がする。



『どもー。』



「おーう!

ウォーカー君、久し振り!!

冒険してるー?」



『せいぜい森の奥でホーンラビットと格闘しているくらいっすね。』



「うはは、結構結構!

若いうちはヤンチャしてナンボだ。」



『角にビビって逃げ回ってるだけっすよw』



「謙遜謙遜w

何、冒険者ってモンスター退治が主業務なの?」



『いやー、そんな積極的なモンじゃないっす。

ほら、街道外れの小さな村があるじゃないですか?』



「え?

ミゲルの奴が村長やってる村?」



『あ、お知り合いなんですか?』



「そりゃあ、児童学校時代の同級生だもん。

一緒に軍学校の試験も受けたんだぜ?

2人共体力テストで落とされたけどww」



『あ、そうなんですね。』



「今度アイツに会う事があったらさあ。

たまには遊びに来いって伝えといてよ。

もう10年は会ってないんじゃないかな?」



『分かりました。

明日から村に行くので、伝言を伝えておきます。』



「え? ホント? 行くの?

ああ、じゃあさ。

ワシからの手土産もついでに届けてくれない。」



『あ、はい。』



後はトントン拍子に話が進んだ。

翌朝、会長の屋敷を訪問。

勝手口から回ろうとしたのだが、何と正門から通された上に会長の書斎で茶菓子まで出されてしまった。

ミゲル村長への手土産と馬車チケットを貰えた。

俺にも銀貨100枚が無造作に渡される。



『あ、ども。

スイマセン。』



「そりゃあプロに依頼するんだから代金を支払うのは当然だろ。」



『それでもありがとうございます。』



「ま、今度また珍しい話を聞かせてくれよ。」



そんな会話を終えてからチャーター馬車で村に向かう。

村人達は俺が馬車で現れた事にまず驚き、続いてゴールド商会とのツテを持っている事を知り更に驚いた。

ミゲル村長は旧友からの連絡に大いに喜び、久しぶりにグリーンタウンを訪れる事を約束してくれた。

ミゲル以上に喜んだのがハンスである。



「そりゃあそうだよ。

村長にオマエを紹介したのが俺じゃん?

オマエが変なことしたら俺が怒られるし、オマエが頑張ってくれたら俺の株が上がるんだよ。」



『あ、確かに。』



「テッド君。

色々ありがとな。」



ハンスは笑って俺の肩を叩きながら干し肉を一袋プレゼントしてくれた。

冷静に考えればそうだよな。

こんな小さな村で評判落としたら本当に住みにくくなりそうだもんな。

俺も言動には注意しないといけないな。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



今日は森の奥の瓢箪湖ではなく、村の周辺をひたすら歩く。

決まってるだろ?

ホーンラビットの巣穴を探すんだよ。

みんな困ってるみたいだしさ。


探しながら、ずっと酒場での遣り取りを振り返っていた。

本来、ゴールド商会の会長なんて口を利く事すら許されない相手だ。

そんな男の屋敷に招かれ、茶菓子や駄賃まで貰えた。

何故だ?


きっと、出逢ったのが酒場だったからだ。

酒の席は完全プライベート。

社会的地位など関係なく談笑する事が出来る。

そこで出逢ったからフラットな友好関係を事前に築けてた。


…どうして盛り上がったんだっけ?


あ、思い出した。

マスターが俺を会長に紹介してくれたんだよ。



  「御隠居、この男は面白い商売をしてるんだよ。

  おいウォーカー、爺さんに帝国の話を聞かせてやりな。」



そう。

マスターのその一言が切っ掛けで会長のテーブルに招かれたのだ。


無論、マスターだって誰でもかれでも紹介する訳じゃない。

俺が【冒険者】という珍妙な商売を始めたから、会長に対して酒の肴として提供したのだ。

酒場だって競争は激しい。

あの店で飲んでも退屈だ、なんて思われたらすぐに潰れちゃうからな。


…そうだ。

あのマスターの紹介は会長へのサービスであり、俺へのサービスなのだ。

当然マスターのメリットは、俺や会長がまた飲みに行く事だ。

だって期待しちゃうじゃん。

また良い人を紹介してくれるかもって思っちゃうじゃん。



『お、これは巣穴かー?

それにしては小さすぎる気もするなー。』



村外れの丘で不審な穴を見つけた俺は棒きれでガンガン叩いてホーンラビットを探す。

日差しがかなり強く汗が滝の様に流れたが、不思議と疲労は無かった。

自分で獲得した縁だからな。

苦労すらも心地良いのだ。



Lesson4 『酒場は有用なインフラだから世界中にある。』

【名前】


テッド・ウォーカー



【職業】


冒険者



【資産】


銀貨107枚



【所持品】


折り畳み釣り竿

簡易テント

大型リュック

万能ナイフ



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



(あとがき)


最後までお読みいただきありがとうございました。

このLesson(教訓)が有意義であったと感じていただけましたら、冒険の道標としてページ下部の【☆☆☆☆☆】やブックマークで評価して下さると幸いです。


ご安全に。

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