Lesson23 『胆力こそが男の通貨。』
帝国は俺の祖国である王国にとっての不倶戴天の敵である。
王国王室と帝国帝室が同祖であることから、互いの君主が互いの領地の支配権を主張している。
これが戦争の理由。
大昔は両国共に五公五民を原則としていたが、戦争を理由に六公四民に引き上げた。
そして、その税率は休戦条約が締結されても決して下がる事はない。
日頃は互いを仇敵と罵り合う両国ではあるが、徴税面に関しての足並みだけは綺麗に揃っている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『えっと、この辺はもう帝国なのかな?』
「いや、俺達の地図じゃ自国領だ。」
『つまり帝国の地図では帝国領って事だな。』
俺とジェフは地図から顔を上げて思わず笑い合う。
そう、俺達は真の意味で国境を越えたのだ。
小川の向こうにはゴブリンの親子。
凶暴な種族という事になっているが、そんな気配は感じない。
弓を背負っているが、手に掛ける素振りすらもない。
目が合ったので俺が会釈すると、向こうも似たような動作をしてから去って行った。
小一時間ほどして、今度は帯剣したゴブリンの1団が小獣道の先で俺達を待っていた。
相変わらず殺気は感じない。
『「こんにちはー。」』
事前の打ち合わせ通り、俺とジェフが一礼をしながら挨拶をすると、リーダー格らしき大柄なゴブリンが「∥※℉×@9>&」と丁寧に右手を上げる。
どうやら右の掌を見せるのが彼らの挨拶らしい。
きっと武器使用の意図が無いことの意思表示なのだろうか。
俺達も右手を上げて掌を見せると、更に雰囲気が和らいだ。
さて、ここからが冒険だ。
俺はリュックの中から銭袋を取り出し、中からコインを取り出した。
鉄貨。
それもゴブリンが用いる鉄貨だ。
軍を追放された日に大佐から貰った退職金。
せめて有効活用しなきゃ、タダ働きだからな。
俺は取り出した1枚の鉄貨をリーダーにゆっくりと手渡す。
それまで泰然としていたゴブリン達が目を丸くして顔を見合わせる。
そりゃあね、立場が逆なら俺も戸惑うよ。
君だって突然やって来たゴブリンに銀貨を渡されたら驚くだろ?
ゴブリン達は少し考え込んでいたが、リーダーの隣に居た副官らしきゴブリンが腰から団子(?)のような物をひとつまみして俺に渡す。
鉄貨1つで団子1つのレートなのだろうか?
試しに団子を口に入れるジェスチャーを見せてみると、彼らは少しだけ不安そうな表情になる。
よし、毒ではないな。
そもそも全員が団子袋を腰に付けている。
きっとこれは彼らの携帯食。
『パクっ。
もぐもぐ、ゴクン。』
「テッド!?」
『ヨモギで味付けした団子。
コメでは無くキビだな。』
ゴブリン達が感嘆したように、こちらを眺めている。
胆力or蛮勇を評価してくれたのだろうか?
すると、黙り込んでいたリーダーが鉄貨幣を5枚俺に握らせてくる。
「※&×@6>¥」
恐らくはこちらの食料を売れという意味だろう。
或いは金銭感覚を試されているのだろうか?
俺は恐る恐るブルータウンの売店で買った軍の放出レーションを渡す。
体積的には団子より遥かにデカい。
不公平な取引ではないと思うが。
リーダーは数秒だけ考えると、レーションを手に取り2つに割って見せた。
そして小さい方の欠片を自分が取り大きい方を返してくる。
そして、それを更に砕くと仲間に振り向きながら口の中に放り込んでモグモグと咀嚼した。
人間種のレーションがゴブリンの体質に合うかは謎なので薄っすら不安になる。
そして先程の団子咀嚼が如何に軽率だったかを痛感して反省。
リーダーは表情1つ変えずにレーションを堂々と食べ切った。
そして鷹揚な態度で「#&6<℉」と言うと仲間を促して立ち去っていく。
『ごちそうさまでした。』
俺が慌てて返礼した時には彼らの背は木立の影に消えていた。
Lesson23 『胆力こそが男の通貨。』
【名前】
テッド・ウォーカー
【職業】
冒険者
【資産】
銀貨57枚
鉄貨91枚 (ゴブリン経済圏でのみ通用)
【所持品】
折り畳み釣り竿
簡易テント
大型リュック
万能ナイフ
ポートフォリオ
騎士用手袋
【生産可能品目】
山椒粉
フカヒレ
ラー油
【ポートフォリオ】
ホーンラビット
スライム
サンドシャーク
猪
山椒
ドブネズミ
【仲間】
リコ・クラーク (司書)
ジェフリー・フィッシャー (漁師)
キース・ポーター (運送業)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(あとがき)
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