Lesson20 『カネは堂々と受け取れ。』
今日もクラーク女史に叱責される。
俺の決めた、【仲介料1割】というのが気に入らなかったらしい。
「何も怒っている訳ではないんです。
ただ、1割というのは良心的過ぎます。
商業ギルドの相場はご存知なんですよね?」
『うん。
どこの商会も右から左に流すだけで3割は抜いてる。
アイツらが3割って言ってるだけで、実際はもっと中抜きしてると思う。』
クラーク女史は少しだけ俺から目線を逸らして上品に溜息を吐く。
「瑪瑙の納品は心から感謝しております。
この地域は辺境なのでアカデミーの支部もありませんし、テッドさんがこんなに迅速に対応して下さったことで本当に助かりました。
学術に携わる者として、その寄与に敬意を抱いております。」
『…はい。』
「ただ。」
『はい。』
「結果としてテッドさんは瑪瑙の買付・運搬・納品までを銀貨1枚で請け負ってしまった事になるんです。
これではタダ働きどころか持ち出しではありませんか。
どうしてこんな事をしたんですか?」
『いや、クラークさんが喜ぶと思って…』
「ッ!?」
クラーク女史は唇を噛んだまま駆け去ってしまった。
うーん、また怒らせてしまったなぁ。
俺、あの人に嫌われてるのだろうか?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
どうやらマージン1割というのは非常識だったらしく、その後も色々な人から怒られる。
俺は報酬なんて働いた奴が貰えばいいと思うのだが、皆に言わせればそれは世間を知らない幼稚な思考らしい。
「いや、怒ってる訳じゃないからな?
冒険者という屋号はオマエの物だ。
だから俺達はオマエの決定には従って当然だ。」
言いながらジェフは銀貨5枚を机の上に置く。
『え?』
「いや、1割だろ?」
『いやいや、友達からカネは取れないよ。』
「俺だって友達のマージンを踏み倒せないよ。」
『…。』
「オマエさぁ。
俺と立場が逆ならマージン踏み倒すのか?」
『そ、そんな事する訳ないだろう!』
「うん。
そういうこと。
ここに来る途中でさ、竹細工村でポイズントードを5匹仕留めた。
アイツら相当困ってたみたいでさ、その場で銀貨50枚を払ってくれたよ。
その1割だ。」
『…分かった。
受け取る。』
「おいおい、別に悪い事をしてる訳じゃないだろう。
もっと堂々と受け取ってくれ。
その方が俺達だって胸を張れる。
誰だって正当な取引の下で暮らしたいんだよ。
オマエがビクビクしてたら、皆が不安になるんだよ。
冒険者って本当はズルい商売なんじゃないかってな。」
『これだけは胸を張って言える。
俺は役に立つ仕事をしている。
皆の暮らしを良くする為に働きたい。』
「その表情だ。
いいか、テッド。
オマエは間違っちゃいない。
村の連中も喜んでるし、働いた奴には日銭が入る。
オマエのお陰で皆の生活が楽になってるんだぜ。」
完全に納得は出来ないが、もう受け取らざるを得ない。
それも堂々と胸を張ってだ。
『ジェフ、一緒に飯でも行かないか?』
「ふふふ、その手には乗らないぞ。
どうせ銀貨5枚分のランチをおごってくるれるつもりなんだろ?」
『…お見通しか。』
「ばーか、ダチの考えてる事なんて嫌でも分かっちまうんだよ。」
『うん、そうだよな。』
「どうせランチに行くならリコちゃんを誘ってやれよ。」
『…さっき怒られた。
俺、あの子に嫌われてるんだと思う。』
「なぁテッド。」
『ん?』
「俺からオマエに依頼だ。」
『え?』
「少し気になってる子が居てな。
デートスポットを探してるんだ。
あそこのカフェ、どんな雰囲気か調べてくれよ。」
『いや、俺。
あんな華やかな店に行ったこと無いし。
大体、男1人で入るような店じゃないだろ。』
「リコちゃんと一緒に行け。
銀貨5枚もあれば茶代くらいにはなるだろう。」
俺が何かを言おうとした時には、ジェフは既に背を向けて歩き出していた。
言いたい事は山程あったが、依頼の遂行を優先した。
Lesson20 『カネは堂々と受け取れ。』
【名前】
テッド・ウォーカー
【職業】
冒険者
【資産】
銀貨21枚
【所持品】
折り畳み釣り竿
簡易テント
大型リュック
万能ナイフ
ポートフォリオ
騎士用手袋
【生産可能品目】
山椒粉
フカヒレ (未検証)
ラー油 (未検証)
【ポートフォリオ】
ホーンラビット
スライム
サンドシャーク
猪
山椒
【仲間】
リコ・クラーク (司書)
ジェフリー・フィッシャー (漁師)
キース・ポーター (運送業)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(あとがき)
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