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Lesson15 『持て余した利権は積極的に仲間に分けろ。』

相変わらずカネがない。

結構稼いだつもりだったが、所持金は銀貨200枚を切っている。

なのでミゲル村でキャンプを張らせて貰う事にした。



「いや、家に泊まっていけって村長からの伝言だ。」



『え?

村長の家に?

それは流石に悪いっすよ。』



「悪くねーよ。

ウォーカー君は活躍してくれてるもん。

瓢箪池なんかで野営させておくのは申し訳も勿体もないわ。

ほら、行って来い。」



『なんか恐縮です。』



「別に恐縮する必要はねーよ。

俺達にだって魂胆はある。」



『魂胆ですか?』



「ウォーカー君は有望株だからな。

村としても味方に引き入れておきたい。

ウチの村は貧乏だから、宿を貸す程度しか出来ないけど。」



『いやあ、俺なんか…』



「オマエの自己評価は知らんが、俺達は将来性◎と踏んでる。

それだけの話だ。」



処世術として恐縮しているフリをしているが、この事態は予想していた。

寧ろ、そう言って貰えるように努力はしていた。

大体、【冒険者】と言えば聞こえはいいが、要するに根無し草の浮浪者だ。

本来は泊めたくない存在。

そんな事は当事者である俺が痛いほど自覚しているし、ミゲル村の皆も内心ではそう思っているだろう。

だからこそ、浮浪者と差別化出来るように頑張って来たのだ。


では【頑張る】とは何か?

俺の定義はシンプルだ。

冒険者にとっての努力とは冒険先で好かれたり信用されるように振舞うこと。

もうこれしか無いと思ってる。

だって俺みたいな流れ者は嫌われたり疑われたりするのが自然だもの。

職を転々として来た俺は知っている。

嫌われたら終わりだ。

故郷のある奴には理解出来ないかも知れないけどな。

繰り返す、嫌われたら終わりなのだ。

だからこそ、冒険者という定職に就かない事を前提とした生き方を選ぶに当たって。

俺は好かれること、それが難しいならせめて信用される事を至上命題にして動いて来た。

今回、ミゲル村が【余所者の俺を村長宅に俺を泊める】という強い好意を示してくれた事は、俺のこれまでの方針が的外れでは無かった事の証左である。

恐らく俺のアプローチは正しいし、他の村落でも再現性はあるとみた。



『ミゲル村長!』



「おお、ウォーカー君。」



『さっきハンスさんから話を聞いたのですが。

何と御礼を申し上げて良いのやら。』



「いやいや、遠慮せんでいい。

野宿ばっかりしていたら身体を壊すだろう。」



『村長。

宿代いう程の事でもないのですが、土産話でも披露させて頂けませんか?』



「おお、いいねえ!!

是非聞かせてくれ!

さあ、おいで。

丁度昼飯時だ、一緒に食べよう。」



本当にありがたい。

ただ、彼らの好意は今の所俺が役に立っているからこそ向けられているだけであって、恒久的なものでも無条件のものでもない。


【現時点では有用である】


ただそれだけの評価であるだけと肝に銘じなくてはならない。

ミゲル村長が殊更打算的なのではない。

村の代表ともなれば共同体の利害を考えるのは当然だし、村の状況は極めて悪い。

理由はシンプル。

重税で苦しんでいた最中にホーンラビットが大量発生し畑を荒らされてしまったからだ。

(先日ホーンラビットの駆除方法を確立したとは言え、今まで荒らされていた田畑がすぐに回復する訳ではない。)

村民全員が村の現状に危機感を持っている中、たまたま【冒険者】を名乗る俺が現れた。

そりゃあ使い道を考えるさ。

ジリ貧状態なんだもの。



『村長、奥さん。

旨い握り飯でした。

こっちの大根漬けもシャクシャクしてて最高でした。』



「いやいや、こんな物で喜んでくれるなら幸いだ。」



『では早速、土産話を。』



「おお、是非聞かせてくれ。」



俺は人面キノコとスライムの駆除方法が確立した件を報告し、ポートフォリオから資料を取り出して見せる。

村長は興奮しながら読み耽っている。



「さ、流石だ!

ワシも長年農家をしているが、殆どが初耳の情報だ!

ありがとうウォーカー君。

君が居てくれて本当に心強い!!」



ミゲル村長がノートに書き写す事の許可を求めて来たので快諾。

村長夫妻の表情からして庵を提供したことは十分ペイ出来たようだ。

そりゃあね、モンスターを駆除出来るか否かなんて、村落にとっては誇張抜きで死活問題だからね。



『そして村長。

こちらが本題なのですが。』



俺は無言でもう1枚の資料を差し出す。



「ふむ、これは…

山椒か!?」



『ええ、今の俺は瓢箪池の畔の石臼で細々と素人製造してるじゃないですか。

ちゃんとした製法を知っておきたかったんです。』



「うーん、この資料。

ほぼ山椒製粉の奥義らしきノウハウが載ってるんだけど、こんなのワシに見せちゃっていいの?」



『どのみち俺は字が読めませんし。』



「あ、じゃあ。

今、読み上げようか?」



『お言葉に甘えます。』



クラーク女史とはモンスター情報は読み合わせをしたのだが、時間の関係で山椒読み合わせは後回しにしたからな。

この場で教えてくれるのならありがたい。



『へー。

山椒って、そんなに人手が掛かるものなんですね。』



「ああ、逆に言えば人海戦術で量さえ確保出来れば高単価商品たり得ると書いてあるな。

今は廃れてるけど、古代の帝国は【ラー油】って珍味に加工してたみたいだぞ。

あ、レシピも書いてる。」



『へー。』



うーん。

話を聞く限り期待外れだな。

俺は1人で完結するレシピを知りたかったのだが…

量の確保がそんなに大変なのか…



「見せて貰ったワシが言うのも何だが、こんなものを軽々しく見せてはイカンぞ?

商売のコツは如何にノウハウを独占するかだ。

そして自分のブランドを確立することなんだ。

勿論、ワシはキミの得た知見を盗用する気はないが…」



『いや、いいっすよ?』



「え?」



『纏まったカネにする為には人手がいるんですよね?

じゃあ、山椒の情報を差し上げます。

えっと、【ラー油】でしたっけ?

手が空いてたらチャレンジしてみて下さい。』



「いやいやいや。

そんなの悪いよ。

だって古代帝国のレシピなんて、それこそ宮廷料理人達が奥義として弟子にも教えないような代物なんだから。」



『まあ、そういうのはいいじゃないっすか。

どのみち俺は手一杯ですし、村のみんなには得をして貰いたいです。』



「そ、そうかね…

じゃ、じゃあ、村も蓄え苦しいし、お言葉に甘えさせてくれ。」



『ええ、喜んで。』



「あ!

皮算用なんだけどさ。」



『はい?』



「今からラー油の販路をそれとなく探しておいてくれない?」



『え?

古代料理でしょ?

作るんですか?』



「だってレシピを知っちゃったんだもの。

石臼も瓢箪池にあるんでしょ?」



『ええ、メンテして藁屋根の下に設置してあります。

後でハンスさんに場所を教えときます。

山歩きが得意な人が居たら、その人も同行させて下さい。』



「いやー、あの道はワシらじゃ無理だよ。

だって山道を岩が塞いでるし。」



『頑張ったらよじ登れますよ。』



「若い頃、一度だけ頑張って行った事があるけど…

もうこの歳じゃ無理。」



『あ、そうだったんですね。』



「普通の人は物理的に瓢箪池に辿り着けないんだよ。

廃村手続も、その道を徴税吏にチェックして貰ってから認可されたんだから。」



俺は気軽に行っていたのだが、冷静に考えれば文明の外側だよな。

公的地図にも【廃】と記されているらしいし。



「じゃ、販路のこと考えておいてね。

勿論、秘密厳守で!

期待してるよー!」



そんな遣り取りがあって、ミゲル村がラー油の製造に成功した場合は俺が売り捌く取り決めになった。

まあ、俺にとっても悪い話じゃない。

これだけ取引先が広がった以上、森の奥に籠って1人山椒を加工するのはあまりにコスパが悪いからな。


村長たちも喜んでいるので、きっとこれは良い提案だったのだろう。




Lesson15 『持て余した利権は積極的に仲間に分けろ。』

【名前】


テッド・ウォーカー



【職業】


冒険者



【資産】


銀貨261枚



【所持品】


折り畳み釣り竿

簡易テント

大型リュック

万能ナイフ

ポートフォリオ



【生産可能品目】


山椒粉

フカヒレ (未検証)

ラー油  (未検証)



【ポートフォリオ】


ホーンラビット

スライム

サンドシャーク

山椒



【仲間】


ジェフリー・フィッシャー  (漁師)

キース・ポーター      (運送業)




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




(あとがき)


最後までお読みいただきありがとうございました。

このLesson(教訓)が有意義であったと感じていただけましたら、冒険の道標としてページ下部の【☆☆☆☆☆】やブックマークで評価して下さると幸いです。

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