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Lesson11 『自分が居なくても回る仕組みを作れ。』

グリーンタウンに戻った俺が最初にした事は行きつけの店にジェフを紹介することだった。

宿屋、食堂、雑貨屋、酒場、質屋。



「オマエも律儀だよなー。

何も知ってる店を全部紹介してくれなくてもいいのに。」



『ジェフ。』



「ん?」



『俺が途中で死んだら、後の事を全部任せたい。

そのつもりで紹介した。』



「…縁起でもないこと言うな。」



『大事なことなんだよ。』



「なあ、俺達会って数ヶ月だろ?」



『他に頼める奴が居ないんだ。』



これは本当の話。

冒険者を名乗ってから、何度か死を意識する事態に陥っている。

いつ死んでもおかしくない生活なのだ。



「…引き受けた。

でも、死ぬなよ。」



『善処するよ。』



ジェフには申し訳ないが、これでやっと冒険者稼業に本気で取り組める。

今までは長期的視野の案件は全部断っていたからな。

後始末を引き受けてくれた事で心置きなく本命に紹介出来るというものだ。



「で?

ここが銀貨100枚の図書館か。

御立派な建物だな。」



『建物も悪くないんだが、金貨1万枚の価値のある本命がここに居る。』



「ほう!?

金貨1万枚とは大きく出たな!

どんな奴だ!?

学者か? それとも魔法使いか?」



そんな話をしていると閉館時間となり、職員たちが続々と退勤し始める。

最後尾に彼女を見つけたので話し掛けようと思ったが、向こうも遠目で俺を発見したらしい。



「ウォーカーさん!?」



『ご無沙汰しております。』



「あの後、連絡が付かないから困ってたんですよ。

宿を変えるなら仰って下さい。

今もこの街にお泊りなんですか?」



『ああ、失礼。

しばらく旅に出ておりました。

昨日帰って参りましたが、常宿は定めない方針です。』



敢えて常宿を決めないと決めた。

なるべく多くの宿屋に泊まる事で、コネや知見を少しでも広げる戦略だ。

また、出オチ的な商いをしている以上、なるべく行動パターンは読まれたくないという計算もある。



『司書さんに迷惑を掛けてしまったのならお詫びします。

申し訳ありませんでした。』



「リコです。」



『?』



「私にはリコ・クラークという名前がります。」



『あ!

大変失礼しましたクラークさん。

世俗に疎いもので…

以後も宜しくお願いします。』



「…はい、宜しくして下さるのは嬉しいです。

あの、この後お時間があれば…」



『クラークさん。

今日は私の大切な友人を紹介したくてお邪魔したんですよ。』



「え…

大切な…  ですか…」



『おーい、ジェフ。』



「あ、男の人なんですね。

良かった…」



『?


こちらのジェフ・フィッシャー君は私の最も信頼する友人でして。

冒険者業の相棒としては彼以外考えられない存在なんです!』



「…そうですか。

他には考えられないですか…」



『クラークさん。

お時間があれば3人でディナーなど如何でしょうか?』



「…申し訳ありませんが。

失礼します。 (スタスタスタ)」



クラーク女史は何故か怒ったような表情で足早に立ち去ってしまった。



『あ、あれ?

おかしいな、前に話した時はもっと打ち解けてくれた気がするんだが…』



「…あのさあ。」



『ん? 何?』



「オマエへの恩返しで教えとくな。」



『あ、うん。』



「ディナーはリコちゃん1人を誘ってやれ。」



『???』



「大丈夫。

オマエと彼女は上手く行くよ、長期的に見ればな。」



『???』



分からないなりに、ジェフ程の男が言うなら安心である。

その日は酒場が併設された宿に泊まってみた。

随分五月蝿かったが結局は熟睡出来た。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



次の日の夕方も図書館に向かう。

ジェフは用事があるそうで、どこかへ行ってしまった。


クラーク女史は最初不機嫌だったが、新たにポートフォリオに新資料を加えたい旨を伝えると真摯に耳を傾けてくれた。


俺が知りたい情報は【スライム】【猪】【サンドシャーク】【山椒】について。

前回のホーンラビット同様に詳しい情報が欲しいのだ。



「山椒ですか?」


『ええ。

次にクラークさんに逢った時に、差し上げようと思って持ち歩いておりました。』


「わ、私にですか?」



漁師町の網元から余っている小瓶(焼き塩の営業サンプル用)を1つ貰ったので詰めておいたのだ。



『山椒の緑がキラキラ光って綺麗だったのでクラークさんを思い出しました。』



「///。」



『クラークさん?』



返事が無いので不安になって声を掛けると走り去ってしまった。



『参ったな。

まだ依頼料を支払ってないのに。』



宿に帰って顛末を報告すると、ジェフは何も言わずに笑って酒を注いでくれた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



翌日はミゲル村にジェフを紹介する。

土産に干し烏賊を渡したせいか、ジェフは【烏賊の人】として親しまれる事となった。


瓢箪池も見せておきたかったので、2人で森の奥に分け入り石臼の側にキャンプを張る。



「いいのか?

オマエの人脈、全部紹介してくれただろ?」



『うん、ほぼ全員かな。』



「もう少し警戒しろよ。

俺が悪い奴なら、オマエの仕事を全部横取りするかも知れないんだぜ?

何せオマエときたら、ご丁寧に取引価格まで教えてくれるんだからさ。

聞かされてる俺が焦ったよ。」



『仕事がジェフにも流れるって事はさ…』



「ん?」



『皆の悩みが解決する確率が増えるってことだろ。

それは喜ぶべき事だ。』



「…。」



それからジェフは何を話し掛けても上の空で、ずっと何かを考え続けていた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



翌朝は山椒集め。

落ちている場所を教えて、どんな風に挽くのかを石臼を回させながら説明。



『な?

そんなに難しくないだろ?』



「ひょっとしてポートフォリオに山椒が加わったら、それも皆に教えるのか?」



『うーん、ミゲル村長達だけには話すかな。

この森は元々彼らの森だからね。』



「ああ、成る程。

そこら辺の線引きはしてくれるんだな。」



『俺が死んだらさ。

山椒粉作ってくれていいけど、村に2割上納な。』



「頼むから不吉な話をしないでくれ。」



『でも、仲間には話を通しておきたいんだよ。

迷惑を掛けたくないし。』



「そうだな。

分かった。

ちゃんと2割上納する。」



不思議と、この話をした事で心残りのような物が全て消えてしまった。

うん、後事を信頼出来る相手に託してさえおけば、いつでも伸び伸び死ねるよな。

それこそ、冒険に踏み切れるのだ。



『じゃあさ。

俺が死んだらクラーク女史も…』



「それは駄目だ。」



『え?』



ジェフは呆れたように溜息を吐く。

曰く、世の中には託してはならない事柄もあるとのこと。



Lesson11 『自分が居なくても回る仕組みを作れ。』

【名前】


テッド・ウォーカー



【職業】


冒険者



【資産】


銀貨251枚


(うち200枚は支払い用に別保管。)




【所持品】


折り畳み釣り竿

簡易テント

大型リュック

万能ナイフ

ポートフォリオ



【生産可能品目】


山椒粉



【ポートフォリオ】


ホーンラビット



【仲間】


ジェフリー・フィッシャー  (漁師)





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



(あとがき)


最後までお読みいただきありがとうございました。

このLesson(教訓)が有意義であったと感じていただけましたら、冒険の道標としてページ下部の【☆☆☆☆☆】やブックマークで評価して下さると幸いです。


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