ミッション 18
定例ふだん使い部屋はそれこそ昭和の残滓、清掃しようが換気しようが天井、壁、窓サッシ、空間全体にがっつり染み付いたヤニがなにをどうしてもほのかに香る、野郎同士で不景気な顔を突き合わせるならとかく一般国民でもクラス上位の女子高生が如き賓客を招き入れるにははばかりあったので、よかったセーフ。
ふかふかのソファに二人仲良くちょこんと沈み込むその対面に座して遂にようやく、さてさて。
あの、と天森嬢、おずおずと。
「それで、いまさらなんですけど、その、ご用件とは」
その通り、正に実に。
外堀も内堀も、どころから未だお互い名乗りすら挙げていないのが、事実。
ああ正に、さてもさても。
この瞬間までカラダを動かし続けるコトで肝心かなめの本題を棚上げしてきたが。
つばを呑み唇を湿らせ自然、前のめりになっていた。
逆に二人は退き背もたれに。
アイズオンリ、ヒアリングオンリ、他言無用持ち出し厳禁、見聞き総て全部、出たら、忘れる、今ここだけこの場限定の知識であり情報だ、ふたりとも、理解出来るね約束出来るね。
自覚的な、くどいほどの同語反復、なるべく穏やかな表情と声言葉をよそおいながら、詰め寄る。
2対の真剣なまなざしが、応える。
深く、頷いて。
「では天森 創さん、貴方が遭遇した例の事件について、私の職掌のゆるす範疇に限って、今から開示します」
静かに、その手が掲げられた。
待ってください。
小さいが、凛とした声音で彼女は発する。
そのまま天井に上向き、暫し瞑目。
言葉を紡ぐ、いままで、当局に対して本邦国民としての責務の放棄、非協力な態度、言動、大変失礼致しましたと。
覚悟を終え、決意を固め、そして今、彼女は自らを断ずる。
正面に向き直り軽く吐息を漏らした。
「私から、お話します」




