第5話 ログ 1-5
【聞こえますか……天森 創さん、こちらは日本政府魔法警察生活安全課です、今、あなたの心に、直接呼び掛けています……】
反応は激甚だった。
え、だれ、なに、やだ?! ナニコレ?! 。
そういう一般的な動揺を軽くブレイク。
彼女はいきなり、天に向かって咆哮を発した。
ある意味予想通りというか、やっぱり歩く仕掛け罠に彼女はなっていた。
身分証《IDPASS》を掲げながらやおら姿を現す。
背後から近づき、肩を叩きながら声を掛ける。
どちらも穏当ながら下策だったのがこれで判るだろ? 。
まだまだ浅い業務経験ながらこれくらいの読みはしないとね。
先の通りの精神感応、その副次効果として、おそらく誘導トリガとしても彼女の潜在原初恐怖で煽って突き動かしてるんだ。
歪みバグッた認知で、恐怖の幻獣と私とを重ね合わせてしまうのが現状の彼女にこのままで接触したら、全力疾走で逃げ散るかそれとも捨て身の逆激に転じるか、何にせよ危険がアブナイことこの上ない。
つまりこの時点で対処方針は決した。
先の反応の余波で前進を停止し、徘徊動作に移った天森嬢の脇をかすめ前に踏み出し、姿を晒す。
突如視界に出現した正体不明者である私。
一瞬だけ硬直させたその身を、懐から抜き撃ちの要領でこれも官給の呪符で袈裟懸けに祓った。
式使役の鍛錬も祝詞奏上の法力も要しない、霊力に思念を載せれば起式発動する使い捨て万能呪符、世の中進んでるよな。
デバフ退散、効いた? 。
効いたね。
天森 創ちゃんはきょときょと周りを見渡し私を見、ついで足元に気づき、きゃ、とその場で小さく跳ねた。
ツルペタピンクの可愛い花柄突っかけ、うん、それ誰が見ても部屋履きだよね。