独白
きたりてわれをときはなて
組織に身を置く人間が自らを恃みとするは、須らく、義務であるからに他ならない。
上に立つ者が迷いを見せれば下の者は尚惑い、預かる信を穢しもする。
……なぞ《《ごたく》》を並べるもつまり、あたし自身が一番縁遠いからに決まっている、組織、け。
過労で幾度か倒れるなぞ正に社会人欠格だ、そして配される部下は居付かない。
能力あるは意思に乏しく意思あるは才が伴わない、その希少な例外をおおむね一週で使い潰してしまう、宥めても透かしても。
自分自身にもいろいろ試してみた、上司の、指揮官の心得、古今東西の類書を読み漁ったがとんと効果がない、イメトレ、対人スキル話し方講座、やはり無効。
自分には人遣いの才も人材育成のセンスもない、良く判った、結論。
と、居直られても困るだろうな。
別にポストにしがみついているのでもない、適任後継が来ればいつでも喜んで。
うん、ムリだろう。
であればとっくに異動しているはず。
だから櫻井との再会はまったく予想外、研修に送り出したな確かに、あたしはとうに忘れていたよ、正直。
事案最初期連勤でそうとうに荒んでた時期だ、思い出した、異常事態に自我崩壊してるやつ、ようやく探りあて保護した時点で遅いと逆ギレするやつ、もちろん脱魂され打ち棄てられた多数の遺骸、その一事例が櫻井秀一。
覚えてないぞ。
恩人ってお前、業務だぞ、だったら各種レスキューと消防と警察はどうなる。
あれから未だ今日まで居る。
良くやっていると思うが本人希望でスパルタだ、マゾか、だから今も鉄拳制裁を見舞ってやった。
上司だって足りないときがある、そうしたとき、詰めの甘さが関係者の身命に及ぶこれはそうした危険職。
だからこそなんだが、出来ればそろそろ、お前をフォローできる人間がその下に欲しいな、細かく気が回る……無理だな、業務適性の時点で。




