【短編版】カバンの勇者の異世界放浪旅~ハズレ勇者と王城から追放され、奈落に落とされた。でも実はカバンは何でも吸収できるし、異世界から何でも取り寄せられるチート武器だった。今更土下座されても戻る気はない
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僕の名前は【佐久平 啓介】。
15歳。来年から高校生になる予定……だった。
「成功だ! 勇者様が異世界から召喚されたぞ!」
僕がいるのは、なんか儀式場みたいなとこだった。
床には魔法陣が書いてあった。そして僕の他に、日本人が3人いた。
「なんだこりゃ……?」
「どうなってるんでしょうか……?」
「ぬほほ! これってよくある、異世界召喚ものじゃあないござるかぁ!?」
僕と同じ日本人の彼らは、困惑してるようだ(一人興奮してたけど)。
僕?
僕は……ちょっとワクワクしていた。
ついさっきまで、平凡な学生生活を送っていた。
私立のちょっといい高校に合格したけど、僕には人より優れたものなんてない。
勉強も、スポーツも並。顔もイケメンじゃない。
そんな僕は、きっとこれからも平々凡々とした将来を送るんだろうって、軽く絶望した。
そんなところに、異世界召喚!
しかも……勇者様!
ちょっと、いやかなりワクワクしていた。
姉が出版社に務めてる関係で、僕んちには、たくさんのラノベやマンガがあった。
そう……物語の主人公のように、僕も……華々しく活躍できる!
「勇者様……突然お呼びだてしてもうしわけないです」
そう言って僕らの前に現れたのは、綺麗な女の人だった。
うわ、胸ででかいっ。
髪の毛もなんか、ギャルみたいに盛り盛りになってるし。
あとなんか綺麗なドレスに身を包んでいる。
「あんた誰だ?」
日本人のひとりが、尋ねる。
「わたくしはここゲータ・ニィガ王国の女王、【ワルージョ=フォン=ゲータ・ニィガ】と申します」
女王!
ってことは……。
「勇者さま、どうか我が国を、お救いくださいまし」
ワルージョ女王が語ったところによると……。
・現在、魔王が世界を支配しようとしてる。
・対抗したが現地の人間では歯が立たない。
・そこで、異世界から勇者を召喚した。
・魔王を倒して欲しい……。
「ええ……マジダルいんですけど」
僕ら四人の中で、最もチャラそうな男が、そういった(20代かな)。
「つかバイトの時間なんでぇ、返してもらえませんかねぇ?」
チャラ男さんが尋ねると、ワルージョ女王が首を横に振る。
「残念ですが、異世界から呼び出す手段はあれど、送り返す方法はないのです。神代の魔法を知ってる、魔王ならばあるいは……」
なるほど。
魔王なら帰る手段を知ってるかも知れない……か。
これもテンプレだ!
わ、わ、すごい……これから僕の異世界での冒険が始まるんだ!
「ちっ、しゃーねえ、魔王倒すしかないか」
「……そうですね」
「でゅふふふ! 燃えますなぁ!」
と、他のお三方もやる気みたい。
ちなみに僕も、最後のオタクっぽいひととおなじ意見だ。
ワクワクしてるっ。
「では、勇者の皆さん。お名前を伺っても?」
ワルージョ女王に言われ、僕らが答える。
「おれは【山田チャラオ】!」
「……僕は【上田シズカ】」
「でゅふふ! 拙者は【飯田オタク】!」
山田さんに、上田さんに、飯田さん……か。
「えと、僕は【佐久平 啓介】です。よろしくお願いします」
「でゅふふ! よろしくでござる佐久平どのぉ!」
オタクさんが笑顔で手を差し伸べてきた。
わ、いい人……!
「ちっ、ガキかよ。戦力になるんですかぁー?」
一方、チャラ男……もとい、チャラオさんは僕に否定的。
そりゃそうだ。まだ中学生だもんね、僕だけ。
チャラオさんたちは、みんな20代くらいにみえる。
「……で、これからぼくらはどうすればいいんですか?」
シズカさんが女王に尋ねる。
「まずは【神器召喚】を行います」
「はぁ? なんだよその、【じんぎ】ってよぉ?」
チャラオさん……相手女王さまなんだけど、そんな態度でいいのかなぁ。
「神器とは、勇者の皆様のみが扱える三種の神器のことです」
「さんしゅのじんぎ……?」
「アイテムボックス、鑑定スキル、そして……【聖武具】。以上3つが、勇者様に共通して与えられます」
・アイテムボックス→無機物なら何でも入れられる箱。
・鑑定スキル→モノの情報を読み取ることができるスキル。
ここまではわかる。
ネット小説でよく見るし。
「……聖武具とは、なんですか?」
シズカさんの問いに女王が答える。
「勇者様固有の武器でございます。弓や盾、剣などの形をしており、それぞれ強力な特殊能力を秘めております。ただ、勇者様は聖武具以外を装備できない縛りがあります」
なるほど……。
現地で買った武器や、他の人の聖武具は、装備できないんだ。
「でゅふ。はずれの聖武具を引いたら、大変ですな」
たしかに。たとえばスコップとか、フォークとか。
そういうのだったら、嫌だな。魔物と戦わないといけないわけだし。
「では、儀式を始めます」
そう言って女王は、隣に控えていた神官らしきにオジさんに目を配らせる。
オジさんはモニャモニャと呪文を唱えると……。
カッ……!
天上から4本の光が降り注いできた。
僕らの目の前で、光が形を作っていく。
「おお! おれは剣だ!」
チャラオさんの聖武具は、剣。
「……ぼくは、槍」
シズカさんは槍。
「でゅふ! 拙者は弓でござる! これは助かる。前で戦うのは苦手でござるからなぁ!」
オタクさんは弓か。
さて……僕は……。
「って、え?」
僕の聖武具は……とんでもない形をしていた。
「え? なにこれ……【カバン】……?」
なんと、来春から通う予定の、アルピコ学園の【通学カバン】じゃないか!
「え、うそ……カバン……これが、僕の聖武具なわけぇ?」
いや、いやいやいや!
カバンって!
「ぎゃははは! カバンって! うけるぅ!」
「……それでどうやって、魔王と戦うんですか……」
チャラオさんとシズカさんは、僕に侮蔑のまなざしを向けてきた。
「さ、佐久平殿……いや、ケースケ殿! 諦めるのは早いでござるよ!」
「オタクさん……」
「聖武具には特殊能力があるのでしょう? なれば! きっとカバンには拙者達の想像を超えた、凄い能力が付与されてるはずでござる!」
た、たしかに!
そうだよね、見た目ではずれだって思っちゃだめだ!
「勇者様たちには、聖武具を手に取ったことで、鑑定とアイテムボックスのスキルが付与されております。それで、聖武具の性能をお確かめください」
女王のいうとおり、僕は鑑定スキルを使う。
使い方は、頭の中に流れ込んできていた。
勇者の特権ってやつだろうか?
「【鑑定】!」
・勇者の鞄
固有スキル:■
「ぼ、■……?」
・■
→異空間に通じる箱
……。
…………。
………………えっと。
「ぎゃはっはははは! まじうけるぅ! 異空間に通じる箱って! それってアイテムボックスじゃねえか!」
た、たしかに……。
アイテムボックスのスキルは、異空間にモノを収納するスキル……。
「……ぼくらに共通して、アイテムボックススキルはありますね」
つまり、だ。
鞄の神器の持つ能力は、アイテムボックススキルと、だぶってっるって……こと?
「げ、元気をだすでござる! ケースケ殿! た、たしかに3つ中2つはだぶってる……けど! 鑑定とアイテムボックス、それだけで十分凄い力でござるよ!」
「オタクさん……」
オタクさんは慰めてくれたけど……。
「はずれ乙ぅ!」
「……鞄の神器とか。利用価値ゼロですね」
チャラオさんとシズカさんは、僕を馬鹿にしてきた。
そりゃそうだよね……鞄って……。とほほ。
「……ちっ。外れか。……4人中3人いれば、まあいいでしょう。一人は廃棄ということで」
ん?
ワルージョ女王が、なにかつぶやいたぞ……?
しかし鞄の聖武具って……。
大丈夫かな、僕の異世界生活……?
★
「う、うう……え!? こ、ここ……どこ……!?」
気づけば、僕は知らない場所に居た。 どうやら僕は、洞窟の中にいるようだった。
真っ暗なはずだけど、不思議と視界は明瞭だ。
多分、壁とかがうっすら、青白く光っているからだろう。
「え、ええっと……ここは……? たしか昨晩は……」
僕は、寝る前のことを思い出す。
現代日本から異世界に召喚された僕たち。
今日はゆっくり休んでくださいと、勇者それぞれに、部屋があてがわれた。
チャラオさん、シズカさんは疲れたと言ってさっさと眠ってしまった。
オタクさんだけは、『大丈夫、いざとなれば拙者が守りますゆえな!』と励ましてくれた。
そんな彼も疲れたらしく、部屋に戻っていった。
自分も辛いはずなのに、僕を励ましてくれる。オタクさん……いい人……。
その後僕は自分の部屋に行こうとしたところ、ワルージョ女王から呼び出しを食らった。
特別に話したいことがあるって言うからついて行ったんだけど……。
魔法陣が敷いてある部屋についた。
そこで……。
『【麻痺】』
『がっ!』
突如、ワルージョ女王が僕に何かをかけてきたのだ。
いきなり体がしびれて動けなくなった。
『カバンなんていう外れ聖武具を引いてしまった、あなたは不要です』
『ふ、不要!?』
『ええ。ですので、あなたは廃棄。七獄に送ります』
『は、廃棄!? せ、七獄……?』
ようするに、使えない聖武具を引いてしまった僕を、処分しようっていうのか!
でも、直接殺すんじゃなくて、どうして廃棄……?
『王家のものが勇者を直接手を下したとなれば、王家の威信にかかわります。なので、魔物うろつくダンジョンに廃棄します』
『そ、そんなぁ~……』
……ということらしかった。
「ちくしょう……ワルージョめえ。覚えてろよぉ」
僕はひとりつぶやく。
しかし……ううん、どうしよう。
ここは魔物うろつくダンジョンらしい。
ダンジョン……かぁ。
さっきまでワクワクしていた僕だけど、今は結構落ち込んでいる。
いや、勝手に呼び出しといて、勝手に捨てるとかさ。
理不尽すぎるだろ!
はぁ……。
「オタクさん……助けに来てくれないかな……」
あの優しいオタクさんなら、来てくれるかもだけど。
でもワルージョが嘘をつくかも(僕が魔王退治にビビって逃げたとか言って)。
そのほかに、僕を助けてくれそうな人は……。
「チャラオさんもシズカさんも、僕のこと足手まといみたいな感じに思ってたし……。来ないだろうなぁ助けになんて……はぁ……」
結局、自力でここを脱出する必要があるってことだ。
自力で?
無理無理!
「だって僕……鑑定スキルとアイテムボックスしか、ないんだよ……?」
あと、勇者のカバンか。
これでどうしろってんだよ……。
「つーかなんだよ、■って。異空間に通じる箱って……。これでどうやって戦えば……」
と、そのときだった。
「SHAAAAAAAAAAAA!」
「え……? わぁ! へ、蛇し!?」
目の前に、でっかい蛇が現れたのだ! 明らかに普通の蛇じゃない!
これは……モンスター!?
「か、鑑定!」
僕はとっさに鑑定スキルを使っていた。
いやよく動けるな。まあたしかに、オタクな僕は、異世界に行ったときに、僕ならこうするって想定していたことあるけど……。
・毒大蛇(S)
→巨大な蛇型モンスター。生物を一瞬でドロドロに溶かす、溶解毒を使用する。
え、Sランクモンスター!?
……って、どれくらい強いんだろう……。
いやわからないけど、ネット小説とかだと、Sって最高に強い敵じゃない!?
えええ!?
僕やばくない!?
「SHAAAAAAAAAA!」
わわわ! 毒大蛇が体をのけぞらした。
そして、口から……
ブシャアアアアアアアア!
毒々しい色の液体を噴射した。
あ……おわた。
勇者のカバンを持った状態で、僕は腰を抜かしていた。
終わりだ……あれは、溶解毒。
アレを浴びたら、僕はドロドロに溶けて……死んじゃうんだ……。
ああ、父さん母さん、姉さん……ごめんなさい……。
啓介は異世界で死にます……。
『【溶解毒】を、収納しますか?』
え?
『【溶解毒】を、収納しますか?』
突如として僕の脳内に、女の人の声がした。
え、えっとわからないけど……。
毒?
収納?
「し、します!」
このまま毒をかぶりたくない一心で、僕は叫ぶ。
すると……。
しゅるぅううううううううううん!
「えええ!? ど、毒が……カバンに吸い込まれた!?」
なんということだ。
どうなってんだ……これ……?
『【溶解毒】を、収納しました』
『条件を達成しました』
『聖武具のレベルが上がりました』
よ、よくわからない、けど……助かったみたい……。
「SHAAAAAAAAAA!」
ひ!
今度は毒大蛇が、突っ込んできたぞ!
ど、どうしよう……!
『【毒大蛇】を、収納しますか?』
は、はい?
今なんて……?
『【毒大蛇】を、収納しますか?』
え?
え? なに……毒大蛇を……モンスターを収納!?
そんなことできるの!?
できるんだったら……。
「い、YES!」
その瞬間……。
しゅごぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
突如として、僕の持ってるカバンから風が吹き出した!
いや違う……吹き出したんじゃない!
吸い込んでる!
掃除機みたいに!
「SHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA…………」
毒大蛇はカバンの中に吸い込まれていった。
「え、ええ……なにこれ……? カバンのなかに……モンスター入っちゃったんですけど……?」
『【毒大蛇】を、収納しました』
『条件を達成しました』
『聖武具のレベルが上がりました。スキル【取り寄せカバン】を習得しました』
……え、てかレベル?
レベルが上がった……?
聖武具ってレベルあがるの?
あと、新しいスキル覚えたって……。
「なにが、何やら……だ。けど……助かった……みたい」
毒を吸い込み、モンスターを吸い込み……って。
カバンってもしかして……結構チート?
「勇者のカバンって、アイテムボックスとイコールなんでしょ? アイテムボックスって……ネット小説とかだと、ただアイテムを入れることしかできなかったはずなのに……」
疑問を覚えても、答えてくれる人は居ない。
でもどうやら、勇者のカバンは、アイテムボックスとは、また別の力を持ってるのかも……。
「力……そうだ。新しいスキル。たしか、【取り寄せカバン】って……」
・取り寄せカバン
→どこにあるモノでも取り寄せられる。取り寄せたいモノを声にしながらカバンに手を入れると、それがある場所に空間が繋がる。
…………。
………………?
ど、ドラえ●ん……?
なんかそういう秘密道具あったよね……?
「えっと……【ミネラルウォーター】」
とりあえず試してみようと思って、カバンに手を突っ込む。
すると、はしっ、と僕はたしかに何かを掴んだ。
引っ張って取り出すと……。
「ほ、ホントにミネラルウォーターじゃん!」
ペットボトル入りのミネラルウォーターをゲットしていた!
「え、じゃ、じゃあ……菓子パン……たくさん!」
僕はそう言いながら、スキル取り寄せカバンを発動。
カバンをひっくり返すと……。
どさどさどさどさっ!
「や、山盛りの菓子パンだ……! これで食事に困ることはない! ……って、ん?」
あれ……?
カバンって……もしかして、もしかしなくても……。
「結構、チートじゃね……?」
だって、敵の攻撃はカバンが吸収できる。
モンスターだって吸収できる。
スキルで、現実世界から食べ物も飲み物も取り寄せ放題……。
あれ?
「結構、余裕……かも?」
こうして、どん底からスタートした僕の異世界生活に、一筋の光明が見えたのだった。
【★作者から大切なお願い★】
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