表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷いの森、光る石の道しるべ  作者: 千雪はな
第6章 冬の訪れ
82/115

迫る危機

エメが王女様だったなんて………、そんなこと想像すらしたことがなかった。


僕はそれ以上のことは何も考えられず、立ち上がりはしたが、ただ呆然とエメにそっくりな前皇太子妃――クリスティーナ殿下を見ていた。


エメよりも少し落ち着いた雰囲気はあるが、本当によく似ている。これが他人の空似だったらいいのに…。


「リュウ…、大丈夫か?」


いつの間にか隣に立っていたエドウィンが声を掛けてきた。


「あ、ああ…、本当によく似てるな。エドが思わず声を上げたのも無理はないね………あっ!」


「何?どうした、リュウ」


「ダグラス殿に話したんだよね」


「…ああ、すまなかった」


「いや、いつまでも謝らなくていいいよ」


そうエドウィンに言ってから、僕はアレン殿下の方を向いた。


「ダグラスの居所を確認させたらいいか?」


「はい、お願いします。誰か現地に確認に向かわせると思うので」


僕がお願いしたいことを、殿下はすでに察していた。そしてすぐに側にいた側近の一人に指示を出し、確認に向かわせた。


「それで、ダグラスに会うとして、どう説明するつもりだ?」


「説明したり、誤魔化しても意味はないと思うので、彼の動きだけ把握して、エメに…、いえ、ソフィア殿下に」


僕が言い直したところで、アレン殿下がフッと笑った。


「君はソフィアのことは、エメと呼んだらいいよ。急に殿下などと呼ばれたら、きっと寂しく思う」


「……よろしいのですか?」


「ああ、これまでそう呼んできたんだろう。さて、話の腰を折ってすまなかった。それで?」


「はい、エメに危険が及ぶようであれば助けられるよう、フィレイナードヘ向かいます」


「それで、間に合うのか?」


「今日知られたのでしたら、準備が必要ですので、出発は早くて今頃、でもすぐ日が暮れるのでおそらく明日の朝でしょう。私が今から出れば先回りを………」


そこまで言って、嫌な予感がした。


―――いや、なぜ準備が必要だと、まだ出発していないと思うんだ。いつでも出られるように待機させていたとしたら?知った直後に出られるのでは?


「あ……、そんな……」


「リュウ、どうした?」


殿下が心配そうに僕に尋ねた。


「……今朝、近衛兵の一団が北門を出るのを見ました。おそらく三班だと思います。それがフィレイナードヘ向かったのかもしれません」


「間に合うのか?」


「いえ、どんなに急いでも一日半は掛かります。向こうは明日の夜までに着けますが、私は今すぐに発っても明後日の午前中になるでしょう……。最低限の馬の休憩は必要ですので」


「馬の休憩が必要なければ?」


「え…」


「伝令の馬を使う許可を出そう」


伝令の使者が乗り継いで休まず目的地まで走るために、国中の各地に馬が待機している。それを使う許可を頂けるというのか。


「それなら間に合うかもしれません」


「では、すぐに許可証を出すから、私の執務室まで来てくれ」


「かしこまりました」


肖像の間を出られる殿下を追って、僕も歩き出した。


「あの、恐れながら、アレン皇太子殿下。発言の許可を頂けますでしょうか」


一緒に歩き出したエドウィンが緊張した声で殿下に声を掛けた。


「君は?」


「自分は、フィレイナード騎士団所属のエドウィン・サドラーと申します」


「ああ、リュウが幼馴染と話していた者か。私には気を使わず話してくれ」


「ありがとうございます。私もリュウと共にフィレイナードヘ参りたいと存じます。伝令の馬を使う許可を頂けないでしょうか」


「そうだな。一人で向かうよりいいだろう。伝令の馬は常に複数用意している。貴殿にも許可を出そう」


「ありがとうございます」



「リュウ、俺も一緒に行こうか?」


ディーンが気遣わしげに聞いてきた。


―――ディーンも戦力になってくれたら更に心強い。でも、上手くエメを助けられたらいいが、宰相側がエメを捉えて彼らに有利なように事が運べば……


「いや、成り行き次第では、君の領地にも影響を及ぼしかねないから、気持ちだけ受け取っておくよ」


「そうか…。助けが必要な時は、必ず言うんだぞ」


「ありがとう、ディーン」


 ◇ ・ ◇ ・ ◇


アレン殿下は執務室の机で、用意させた伝令用の馬の使用許可証にサインをして、ふと僕の方へと顔を上げた。


執務室には、殿下の側近の他は僕とエドウィンだけだ。ディーンはこの件には関わらない方がいいと殿下も判断され、ここへは呼ばれなかった。



「リュウ、フィレイナードヘ行ってどうするつもりなんだ?」


「はい、殿下。エメを他所(よそ)へ逃すための手助けをするつもりです。我が領地へ逃れてきた時からそう約束していますので…」


殿下の顔が少し険しくなった。


「逃すとはどこへ?」


「彼らは教えてはくれませんが、行き先に当てはあるようです」


「なるほど。何かあった時にも、フィレイナードヘの影響があまりないように多くは伝えていないということか」


「はい、仰る通りです」


「だが、逃すというのは難しいだろう」


エメが王女と言う立場であれば、どこかへ逃すなど、できないことは理解できる。ただ…


「殿下、エメを逃がさないとして、保護したとしたら、彼女をどのように扱われるおつもりですか?」


現状ではアレン殿下が王位継承権第一位により皇太子の位にいらっしゃる。しかし、エメが本当に前皇太子殿下の子で、前皇太子殿下が亡くなった時に死んだことになっていなければ、彼女が第一位だったのだ。


―――アレン殿下は既に正式に皇太子の座についているので、すぐにそれが覆ることはないだろうが、誰かが……いや、誰かではないな…宰相らがエメを担いで正式な王位継承者であるとでも主張をすれば、王家はたちまち混乱するだろう。


まさかエメ達が逃げている相手が宰相だったなんて思ってもいなかった。というよりも、エメがそんな重要な立場であると思いたくなかっただけかもしれない。


以前のニコラが流行病の死亡者を洗い直していたのも、そうでなければいいと思ったが、やはり宰相らはエメを探していたのか…。彼らがどこでエメのことを知ったのか見当もつかないが、王位継承を覆す駒を必死で探していたのだけは容易に想像できた。



それに対して、アレン殿下はどのような行動に出られるおつもりなのだろうか……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ