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迷いの森、光る石の道しるべ  作者: 千雪はな
第6章 冬の訪れ
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キャンドルの灯りに

十二月も終わりに近づき、王都ではウィンター・キャンドル・セレブレーションと呼ばれる祭りが行われていた。


一年を無事に過ごせたことを感謝し、次の年に思いを馳せる祭りで、三日間執り行われる。その最終日の朝を迎えていた。



祭りの期間中、夕方から街中にキャンドルランタンが灯され、優しい光に包まれる。子供達がランタンを手に歌いながらパレードしたり、野外劇場で演劇や合唱隊のコンサートなどが行われる。また、街のあちこちにスープやホットワインなど温かいものを出す屋台が並ぶ。寒い季節に関わらず、多くの人々が思い思いの場所で楽しい時間を過ごしていた。


僕は、寒いので、これまで祭りに参加したことがなかった。まあ、一緒に行く人がいないというのが本当の理由かもしれない…。


昨年、いずれ警備の任務があるから見ておけと言われて、初めてキャンドルの灯りに照らされる街の風景を見たが、寒いのに人々が集まるのに納得した。この綺麗な景色を、いつかエメにも見せてあげたいと思った。


キャンドルの暖かい光の中に佇むエメを想像して、思わず頬が緩んでしまった。



会場の警備は、王城騎士団が主に行うが、祭りの雰囲気に合わせたいとの実行委員会の要望とかで、近衛兵も正装、騎乗して会場内を巡回する。


近衛兵は、それほど人数はいらないので、毎年持ち回りで一つの班が担当し、今年は、僕が所属する第五班が交代で警備に当たる。今日の僕の担当は、昼からキャンドル点灯前までだ。


昨日は夜の一番遅い時間帯の警備担当だったので、今朝はゆっくり起きた。兵舎の食堂は、いつでも食事ができるように料理が用意されているのでありがたい。僕は、遅めの朝食を取ろうと、食堂へ向かう廊下を歩いていた。


夜の警備の担当ではないのは初めてだから、任務を終えてから歩いて夜の祭りを見て回るのも悪くないかもしれないなどと考えていると、ふと廊下の窓から、王城の北門を近衛兵の一団が出ていくのが見えた。


―――あれは…、三班か。祭りの最中に訓練の予定はないはずだし、何か突発的な任務だろうか?


三班は国王派のため、個別の任務について皇太子派の班には情報共有されないことはよくある。今回もそういった類の任務だろう。


―――まあ、僕が気にしても仕方ないか。


美味しそうな焼き立てのパンの香りが漂う食堂に着くと、他所(よそ)の班のことはすぐに忘れて、ビュッフェ形式で用意された料理を次々にプレートに乗せていった。


 ◇ ・ ◇ ・ ◇


昼間の警備は、酔っ払いが少ないので喧嘩など揉め事はあまりない。その代わり、小さな子供の迷子が多く、僕も何人か馬に乗せて子供の親を探した。


「お兄ちゃん、ありがとう!」


小さな女の子が、僕に向かって笑顔で手を振った。一人で屋台の裏で大泣きしていた名残で、頬には涙の跡が残っているが、馬に乗せた時から機嫌は直っていた。人混みの中でオロオロと彼女を探す両親を、少女自身が見つけると、馬の上で飛び上がりそうでヒヤヒヤした。


馬を降りて少女を引き渡した僕に、両親は何度も礼を言い、少女は父親に抱きかかえられて、笑顔でその場を立ち去っていった。


明るい青い瞳に、薄い金色の癖っ毛が可愛らしい子だった。エメの小さい頃の方が、もっと可愛かったけど。



平和に今回の祭りの任務を終えることができ、ほっとしながら馬を厩舎に返し、寒いので、城内を抜けて兵舎へと戻る。兵士用の入り口から城へ入った。


城の一、二階は隣国の招待客らをもてなすために使われているので、僕は三階の廊下を歩いていた。窓からは、街のあちこちでランタンの点灯作業をしているのが見えた。だんだんと灯りが広がる様子を見ていると、後ろから聞き慣れた声で呼び止められた。


「リュウ!」


振り返ると、そこにはエドウィンがいた。


「えっ、エド⁈来る予定あったっけ?」


「いや、本当は上官が来る予定だったんだけど、腰を痛めてしまったから、急遽代理でね。今朝の会議のために、昨日の夜遅くに着いたんだ」


「そうだったんだ。いつまでいるの?」


「明日の朝に発つ予定だよ」


「大変だね。じゃあ、この後、一緒に夕食でも。祭りの屋台に行かないか?」


「お、いいねぇ。リュウの(おご)りか?」


「何かエドに奢るようなことってあったかなぁ?」


僕が大袈裟に考え込んでみせると、エドウィンはニヤリと笑った。


「エメちゃんの話を聞かせるけど?」


「!!奢ります!」


エドウィンは弾けるように大笑いした。周りから、何事かと注目を浴びて少し恥ずかしかった。


「そういえば…」とエドウィンが声をひそめて話し始めた。


「エメちゃんてさ、前皇太子妃殿下にそっくりなんだな」


「………えっ、なんて?」


僕も声をひそめてエドウィンに聞き返したその言葉に被るように、左右から聞き慣れた声が聞こえてきた。


「リュウ、楽しそうだね」

「おお、リュウ。警備は終わったのか?」


さっきのエドウィンの大笑いで僕に気づいたアレン殿下とディーンがそれぞれ廊下の右と左から歩いてきていた。

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