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迷いの森、光る石の道しるべ  作者: 千雪はな
第1章 エメとルゥ
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格好悪い再会

エメと感動の…とはいかなくても普通に再会を果たしたかったのに、これは僕が知る限り間違いなく一番格好悪い再会だ。


包帯ぐるぐる巻きで寝台の上にいるなんて―――ん、待てよ?僕はここへどうやって運ばれてきたんだろう……


「エメ、あの…」


「ん?どうしたの、ルゥ」


「あの、僕はどうやってここまで運んでもらったんだろうか…?」


「担いできたけど」


「誰が?」


「私が」


「えっ、エメが?僕を一人でっ、()ったーーー!」


華奢なエメが僕を一人で担いできたかと思ったら驚いて思わず力が入ってしまった。


「ルゥ、昨日、街のお医者様に診てもらって大丈夫と言ってもらったけど、しばらくは安静にしていないとだめなのよ」


「ごめん、ちょっと驚いたんだ。だって、エメが僕を担いで運んだなんて…。重たかっただろう?」


「んーーー、重いのよりもルゥの背が高くて大変だったわ。引きずってきたから、ブーツをだめにしてしまったの。ごめんなさい」


エメの申し訳なさそうな視線の先を辿ると、部屋の隅に爪先が傷だらけになった僕のブーツが置いてあった。


「泥を落としたら大丈夫かと思って、一応洗ってみたんだけど、傷だらけだし、片方は靴底が剥がれかかってしまっているの…」


「ブーツの傷なんて気にしないよ。靴底は直したらまた履けるし」


「直してまた履いてくれるの?よかった…」


僕は傷ついたブーツは履かないような贅沢者ではない、と訂正しようかと思ったが、エメにとってはどちらでもいいことか。エメがほっとしたのを見て、僕も安堵した。


「この怪我で森の中で倒れたままなら、助からなかったと思う。エメは僕の命の恩人だ。本当にありがとう」


エメは照れたように微笑んだ。



「そういえば、昨日、お医者様に診てもらったって言ってたけど、僕はどれくらい眠っていたんだろうか?」


「二日よ。一昨日のお昼頃にルゥが崖から落ちて、昨日お医者様に診てもらって、今はもうすぐお昼になるわ。


スープならあるけど、飲む?」


そう聞かれた途端、僕のお腹は盛大になった。やめてくれ…恥ずかしすぎる。


真っ赤になっているであろう僕を見て、エメはクスッと笑った。


「わかった。すぐ用意するね」


そう言ってエメは部屋を出ていった。


 ◇ ・ ◇ ・ ◇


僕はぼんやりと天井を眺めていた。


―――二日か…、家族は心配してるだろうな。帰ったら、父上にすごく叱られるんだろうな…。


考え事をしているうちに、エメがスープの入ったお皿をトレーに乗せて戻ってきた。


エメは僕の背中にクッションを入れて少し体を起こしながら、僕の顔をじっと見た。


「ルゥ、どうしたの?」


「えっ?どうしたって………?」


質問の意図が分からず、返事が出てこなかった。


「だって、ルゥが何か心配そうな顔をしているから…」


―――考えていたことが顔に出ていただろうか?


「ああ、僕の行方がわからなくなって、家族が心配しているだろうな、って考えてたんだ」


「それなら大丈夫だと思うわ。だって、あなたのお家の執事のラリーさんがここへ様子を見にこられたから」


「えっ、ラリーがここに⁉︎」


「ええ、一昨日、森の入り口であなたのお家の皆さんがあなたのことを探していたから、お一人ならとラリーさんをここへお連れしたの。怪我がひどいから、動かさない方がいいって私が言ったのを聞いてくださったわ。昨日、街のお医者様を連れてきてくださったのもラリーさんよ」


「そうだったのか。エメがラリーをここまで案内してくれたの?」


「そうよ。今日も午後に来られる予定なの。ルゥが目覚めたから、きっと喜ばれるわね。


さあ、冷めないうちにスープをどうぞ」


僕の心配が解消したのを感じたのか、エメの声が明るくなった。



エメは、僕の寝台の横の椅子に座り、トレーを彼女の膝に乗せた。そしてスープをひと匙すくって僕の口元へと運んだ。


当たり前のようにそうするエメに、僕は慌てた。


「えっ、自分で……」


―――食べられないんだった。


右手は包帯ぐるぐる巻きで、左手は痛くて動かせない。小さな子供みたいで恥ずかしいが、仕方なく口を開けた。


「ふふふ」とエメが笑って、そっとスープを僕の口に入れた。僕がそれを飲み込むと、エメはもうひと匙すくって、ゆっくりと僕の口へと運んだ。


一口ずつ飲み込むたびにエメが嬉しそうな顔をする。


「よかった」


スープ皿が空っぽになった時、エメがそう呟いた。


「おいしかった。ごちそうさまでした。もっと食べたいくらいだけど…」


「一度に食べると、お腹がびっくりするから、また後でね」


エメは微笑んで、皿を片付けるために再び部屋を出ていった。



僕は一人になり、改めて包帯で巻かれた両手を見て、全身の痛みを感じると、今更ながら恐怖心が襲ってきた。崖から落ちた時にエメがいなかったら、本当に助からなかっただろう。エメには感謝してもしきれない。怪我が治ったら、きちんとお礼をしよう。


それにしても……、会いたかった子の前で崖から落ちて担いで運んでもらうし、お腹は鳴るし、さらにスープを飲ませてもらうなんて。


恥ずかしさと情けなさに、「はぁぁぁ…」と長いため息が出た。

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