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迷いの森、光る石の道しるべ  作者: 千雪はな
第4章 騎士学校
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剣の師

一戦目を終え、観客席へ戻ってくると、そこにはニコラの父、フランシス侯爵もいた。


「リュウ殿、久しぶりだな。少し話せるかな」


「はい、大丈夫です」


そこに立っているだけで威厳を感じ、僕は背筋が伸びた。


「では父上、僕はウィリアムの試合を観に行ってきます」


「ああ、また後で」


ニコラは「お疲れ。いい試合だったね」と僕の肩を叩いて、アレン殿下と隣の会場へと立ち去っていった。



剣術大会は家族も観戦することができるが、近衛兵の制服姿のフランシス候は、観戦ではなく、殿下の護衛としていらっしゃるのだろうか?


「初めて君の剣術を見せてもらった。なかなかいい剣筋だった」


「ありがとうございます。先程の相手は、それほど手強くなかったので」


「そうだな。ただ、君のように無駄な力を使わず勝つのは、簡単そうで、なかなかできないものだ」


「光栄です」


フランシス侯爵に褒めてもらえるなんて、まだ一勝しただけなのに浮かれそうなくらい嬉しくなった。


「………君の剣の師は、元近衛兵だったりするのか?」


顎に手を当て、考え込むような仕草を見せた後、フランシス侯爵はそう聞いた。


「……?いえ、地元に住む父の知り合いです。昔は北の辺境騎士団に所属していたと聞いています」


「そうか。昔、近衛兵団で一緒だった友人に剣筋が似てたものだから」


「その方は、今はどちらに?」


「そいつは先の流行病で亡くなった。でも、近衛兵団で剣術の指導を熱心にしてたから、その頃は、皆あいつのような剣筋になってたんだ。そのうちの誰かが、君の師だったりするのかと思ってね」


フランシス侯爵は、その頃を思い出して懐かしそうに話した。


「そうだったのですか……その方にお会いできないのは残念です。私の師は、王都へ行ったことがほとんどないと言っていたので、近衛兵だったことはないと思いますが、同じ流派などかもしれないですね」


「そうかもしれないな」


フランシス侯爵は、納得したように頷いた。と、その時、隣の試合会場から歓声が上がった。ウィリアムが戦っていたはずだ。勝者が決まったらしい。


「ああ、すっかり話し込んでしまった。ウィリアム殿の応援をするはずだったんだろう」


「いえ、僕の応援なんて必要ないと思います。それに、彼の剣筋はその前の試合で見ていますので。昨年とは別人のようで驚きました」


「そうか。私には、彼の剣筋の変化はわずかに見えるが。わかる者の方が少ないんじゃないか。別人のようだとは、君は、相手の剣筋の見極めが素晴らしいな」


「あ、ありがとうございます」


そんなに褒められると思っていなかったので、思わず赤面してしまった。


「はははは、次は準決勝だな。楽しみにしている」


「はい、ありがとうございます」


笑顔で立ち去るフランシス侯爵に、僕は一礼した。


試合後のウィリアムに声を掛けに行こうかなとも思ったが、喉が渇いた。さっきの試合後から何も飲んでいないし、フランシス侯爵と話して緊張していたようだ。


一人、休憩所へと向かった。


 ◇ ・ ◇ ・ ◇


休憩所で水を飲んだらウィリアムに試合前に声を掛けるつもりだったが、そこにいた友人と話しているうちに、次の自分の試合の時間になっていた。


さあ、ウィリアムとの対戦だ。一戦目の相手のように簡単には勝たせてくれないだろう。どう戦おうか…、思いを巡らせながら試合会場に入った。地面に向かってふぅっと息を吐き、集中をして顔を上げた。



「えっ………?」


ウィリアム……じゃない⁈


慌てて観客席をぐるっと見回すと、その一角にウィリアムが座っていた。バツが悪そうに笑って手を振っている。


―――え?ウィル、負けたのか?


ジョージとの試合後に、あんな自信満々に僕に挑発してたのに……。


てっきりウィリアムが勝ち上がってくるものと思ってたから、さっきの試合を見てなくても問題ないと思ったのに、その対戦相手が勝ち上がっていた。これまで僕は手合わせもしたことのない相手だ。


とはいえ、そのウィリアムに勝ってここに立っているのだ。気を引き締めないと。


改めて大きく息を吐いて、集中を高めた。

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