剣術大会・それぞれの戦い
決勝トーナメントの会場を、僕はアレン殿下、ジョージと共に見て回っていた。昨年の上位十人はシード権があるため、しばらくは試合がないのだ。
予選を勝ち上がったウィリアム、ニコラ、ディーンも、ポイントを多く獲得していたので、お互いに早々には当たらず、順当に勝ち上がってくるはずだ。
まずは、ウィリアムの対戦を見ていた。決勝も、相手の剣を落とすか、膝をつかせるか、もしくはポイントの多い方か…、勝敗の決まり方は予選と基本的には同じだ。
ウィリアムは危なげなくポイントを取っている。さっきの予選の時も思ったけど…
「ウィルの剣筋、変わった…?」
僕が呟くと、ジョージが「そうか?」と目を細めた。
「よくわかったね、リュウ。ウィルは今年に入って、剣術の師を変えたんだ」
アレン殿下が教えてくださった。
「そうなんですね。今年はいいところまで行きそうですね」
「へっ、俺が叩きのめしてやる」
「ジョージ……、頼むから仲良くしてくれよ」
普段仲良くて、人を揶揄う時なんか息ぴったりなのに、剣術や馬術になるとライバル意識が強くて驚く。勝手にやってくれたらいいが、大概、僕を巻き込むのでやめてほしい。
観客から歓声が上がり、ウィリアムの勝利で試合が終わった。
「じゃあ、ディーンの応援に行ってくるよ」
僕は殿下とジョージにそう言って立ち上がった。二人はこの試合場で次に行われるニコラの試合を観るのだ。
歩き始めてすぐに、汗を拭きながら歩くウィリアムに会った。
「一勝おめでとう、ウィル」
「おお、ありがとう」
「ウィルの剣筋変わったって話してたんだ。すごく手強そうだった」
「さすが、リュウ。変わったのわかったか。ジョージのやつを打ちのめしてお前と対戦する予定だから、覚悟しておきな」
「はははは…、だからそういうのやめて仲良くしてよ…」
僕は力無く言った。ウィリアムの耳には入っていないようだ。
「ウィル、今からディーンの試合見に行くけど、一緒に行く?」
「いや、パス。喉乾いた」
「そうだな。お疲れ」
僕はウィリアムに手を挙げて、ディーンの試合場へと向かった。
◇ ・ ◇ ・ ◇
ニコラは決勝一回戦で負けてしまったが、ディーンは順調に勝ち進み、シードの僕らの試合も迫っていた。まずは、本人達が楽しみにしていたウィリアムとジョージの対戦から。
去年までは、ジョージが明らかに優勢だった。しかし、試合が始まると、その打ち合いに会場が静まり返るほどだった。ウィリアムの剣筋がしなやかで早くなっている。
ジョージが徐々に押されてるのがわかる。
「あっ…」
一瞬の隙をついて、ウィリアムが間合いを詰め、剣を低い位置から振り上げると、ジョージの剣が宙を舞った。
剣が会場の隅へ飛んでいき、大きな音を響かせて地面に落ちた。
「勝者、ウィリアム・ウォルシュ!」
ウィリアムが僕らの方へ拳をあげて、喜びを表した。そして、僕に向かって挑発的に指を差した。それに観客もどよめき、僕まで注目を浴びた。
いやいやいや、『次はお前だ!』というのだろうが、対戦するとすれば、お互いもう一試合勝てたらの話だ。
「恥ずかしいやつだな…」
横でディーンも呆れている。
「ほんと、やめてほしい……」
「私から注意しておこうか?」
アレン殿下も同情の目で僕を見ている。
「注意したって直ると思えないですが」
ニコラの落ち着いた口調が余計に虚しく感じさせる。
観客が別の試合を見に行き、周りが静かになった頃、ウィリアムとジョージが仲良く戻ってきた。
「さあ、次はリュウの試合だな。負けるなよ!」
ウィリアムにバシィッと背中を叩かれ、僕はよろめいた。試合前から疲れそうだ。皆、そんな僕の様子を見て呆れたように笑っている。僕も諦めて笑った。
そして、ふぅっと大きく息を吐いて気持ちを切り替え、試合に向かうことにした。
「じゃあ、行ってくる!」
「おお、頑張れ!」
僕の一戦目の相手は、大柄で力任せに剣を振った。その剣をまともに受ければ、かなり重くて剣を落としそうだが、動きは大雑把で、受け流すのは難しくなかった。ディーンの方が動きに隙がなくて手強いな、と考えながら、この間の額に剣が跳ね返ってきた怪我を思い出し、気を引き締めた。
いい緊張と集中ができていると思う。相手を観察する余裕を持ちながら、勝てるタイミングを待った。
相手は、僕が剣を受け流すことに苛ついてきたようだ。無駄に大きく剣を振り上げるのを見て、僕はそれに合わせた。力強く振り下ろされる剣の勢いも利用して、剣を地面に叩きつけて弾き飛ばした。
ガシャーンと大きな音を立てて剣が地面に転がった。一拍おいて歓声が聞こえ、僕はほっとした。
「勝者、リュウ・シュライトン!」
対戦相手と握手を交わし、僕は皆が待つ観客席へと戻った。




