表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷いの森、光る石の道しるべ  作者: 千雪はな
第4章 騎士学校
48/115

剣術大会・それぞれの戦い

決勝トーナメントの会場を、僕はアレン殿下、ジョージと共に見て回っていた。昨年の上位十人はシード権があるため、しばらくは試合がないのだ。


予選を勝ち上がったウィリアム、ニコラ、ディーンも、ポイントを多く獲得していたので、お互いに早々には当たらず、順当に勝ち上がってくるはずだ。


まずは、ウィリアムの対戦を見ていた。決勝も、相手の剣を落とすか、膝をつかせるか、もしくはポイントの多い方か…、勝敗の決まり方は予選と基本的には同じだ。


ウィリアムは危なげなくポイントを取っている。さっきの予選の時も思ったけど…


「ウィルの剣筋、変わった…?」


僕が呟くと、ジョージが「そうか?」と目を細めた。


「よくわかったね、リュウ。ウィルは今年に入って、剣術の師を変えたんだ」


アレン殿下が教えてくださった。


「そうなんですね。今年はいいところまで行きそうですね」


「へっ、俺が叩きのめしてやる」


「ジョージ……、頼むから仲良くしてくれよ」


普段仲良くて、人を揶揄(からか)う時なんか息ぴったりなのに、剣術や馬術になるとライバル意識が強くて驚く。勝手にやってくれたらいいが、大概、僕を巻き込むのでやめてほしい。


観客から歓声が上がり、ウィリアムの勝利で試合が終わった。



「じゃあ、ディーンの応援に行ってくるよ」


僕は殿下とジョージにそう言って立ち上がった。二人はこの試合場で次に行われるニコラの試合を観るのだ。


歩き始めてすぐに、汗を拭きながら歩くウィリアムに会った。


「一勝おめでとう、ウィル」


「おお、ありがとう」


「ウィルの剣筋変わったって話してたんだ。すごく手強そうだった」


「さすが、リュウ。変わったのわかったか。ジョージのやつを打ちのめしてお前と対戦する予定だから、覚悟しておきな」


「はははは…、だからそういうのやめて仲良くしてよ…」


僕は力無く言った。ウィリアムの耳には入っていないようだ。


「ウィル、今からディーンの試合見に行くけど、一緒に行く?」


「いや、パス。喉乾いた」


「そうだな。お疲れ」


僕はウィリアムに手を挙げて、ディーンの試合場へと向かった。


 ◇ ・ ◇ ・ ◇


ニコラは決勝一回戦で負けてしまったが、ディーンは順調に勝ち進み、シードの僕らの試合も迫っていた。まずは、本人達が楽しみにしていたウィリアムとジョージの対戦から。


去年までは、ジョージが明らかに優勢だった。しかし、試合が始まると、その打ち合いに会場が静まり返るほどだった。ウィリアムの剣筋がしなやかで早くなっている。


ジョージが徐々に押されてるのがわかる。


「あっ…」


一瞬の隙をついて、ウィリアムが間合いを詰め、剣を低い位置から振り上げると、ジョージの剣が宙を舞った。


剣が会場の隅へ飛んでいき、大きな音を響かせて地面に落ちた。


「勝者、ウィリアム・ウォルシュ!」


ウィリアムが僕らの方へ(こぶし)をあげて、喜びを表した。そして、僕に向かって挑発的に指を差した。それに観客もどよめき、僕まで注目を浴びた。


いやいやいや、『次はお前だ!』というのだろうが、対戦するとすれば、お互いもう一試合勝てたらの話だ。


「恥ずかしいやつだな…」


横でディーンも呆れている。


「ほんと、やめてほしい……」


「私から注意しておこうか?」


アレン殿下も同情の目で僕を見ている。


「注意したって直ると思えないですが」


ニコラの落ち着いた口調が余計に虚しく感じさせる。


観客が別の試合を見に行き、周りが静かになった頃、ウィリアムとジョージが仲良く戻ってきた。


「さあ、次はリュウの試合だな。負けるなよ!」


ウィリアムにバシィッと背中を叩かれ、僕はよろめいた。試合前から疲れそうだ。皆、そんな僕の様子を見て呆れたように笑っている。僕も諦めて笑った。


そして、ふぅっと大きく息を吐いて気持ちを切り替え、試合に向かうことにした。


「じゃあ、行ってくる!」


「おお、頑張れ!」



僕の一戦目の相手は、大柄で力任せに剣を振った。その剣をまともに受ければ、かなり重くて剣を落としそうだが、動きは大雑把で、受け流すのは難しくなかった。ディーンの方が動きに隙がなくて手強いな、と考えながら、この間の額に剣が跳ね返ってきた怪我を思い出し、気を引き締めた。


いい緊張と集中ができていると思う。相手を観察する余裕を持ちながら、勝てるタイミングを待った。


相手は、僕が剣を受け流すことに(いら)ついてきたようだ。無駄に大きく剣を振り上げるのを見て、僕はそれに合わせた。力強く振り下ろされる剣の勢いも利用して、剣を地面に叩きつけて弾き飛ばした。


ガシャーンと大きな音を立てて剣が地面に転がった。一拍おいて歓声が聞こえ、僕はほっとした。


「勝者、リュウ・シュライトン!」


対戦相手と握手を交わし、僕は皆が待つ観客席へと戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ