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迷いの森、光る石の道しるべ  作者: 千雪はな
第4章 騎士学校
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うわの空

試験が終わって二日後、結果が廊下に張り出された。クラスごとに上位五人の名前が書かれる。


クラスは成績順に上からAからEまであり、その成績は、今回のような筆記試験と剣術や馬術などのそれぞれの成績を総合して決まる。ニコラ、ウィリアム、そして僕はクラスA、ディーンとジョージはクラスBだ。


結果表が張られた掲示板を、次の授業のテキストを手にした生徒達が見上げ、僕もその輪の中にいた。



僕の名前はクラスAの結果表の一番上に書かれていた。あの怪我で屋敷に戻ってからの安静期間を勉強に充ててたから、今回は余裕を持って試験に臨むことができたんだけど。まあ、一位は素直に嬉しい。


「リュウ、流石だな。一位おめでとう」


「ありがとう。ニコも三位で、いつもよりいいじゃないか」


「今回、アレン殿下がいらっしゃらないから、一つ順位を上げたくらいだけどね」


そう言って、普段は五、六位のことが多いニコラが笑った。


「おー、二人ともすごいじゃん」


ウィリアムが僕らの頭の上から声を掛けてきた。


「ありがとう、ウィル」


「おっかしいなぁ、俺、ディーン達に付き合うのパスして勉強したんだけどな」


「普段から少しずつ勉強した方がいいってことだよ。今度、ウィルもリュウと勉強する時に参加する?」


「んー……、パス。多分、俺、お前達の邪魔になると思う」


カラッと笑って軽く手を振りながら、ウィリアムは次に授業へと歩いて行った。


「ニコラ、僕達も行こうか」


「そうだね」



廊下を歩きながら、僕はニコラとの話を続けた。


「アレン殿下は、相当お忙しいようだね…」


「ああ、今回の休暇中、父上はほとんど家に帰ってこなかったからね…」


ニコラの父、フランシス侯爵は近衛兵団長だから、皇太子殿下の護衛が必要な予定が多ければ、王城にずっと詰めていることになる。


殿下は、休暇前も殿下が学校へ来られることが少なかったが、休暇中も変わらずお忙しかったようだ。


「殿下ご自身は、剣術大会には出られるように調整したいとは仰ってるって父上は言ってたけど」


「そうだね、殿下も出ていただけるといいな」


「殿下もリュウとの対戦を楽しみにしておられそうだしね」


アレン殿下とは昨年決勝で戦い、殿下が優勝された。今年は僕が勝たせていただきます、と宣言していた。


「剣の練習もしないとな…。ニコ、相手してくれる?」


「嫌だよ。リュウの相手なんて僕はできないよ」


「そうかな、ニコも結構強いと思うけど」


「それは、ありがとう。でも、結構強かったとしても、上級生も敵わないくらい強い奴の相手はしたくないよ。ディーンかウィルに頼みなよ」


「わかったよ…」


体格がいいディーンやウィリアムの力に任せた剣よりも、ニコラのようなしなやかな動きの相手との練習をしたかったんだけど……、嫌と言われたら仕方がない。あとでディーンに練習を頼んでみよう。


 ◇ ・ ◇ ・ ◇


放課後、宿舎の談話室で本を読んでいたら、ディーンが帰ってきたのが見えた。僕は談話室の入り口まで駆け寄り、廊下を通りがかったディーンに声を掛けた。


「ディーン、剣の相手をしてほしいんだけど」


「おお、いいよ。お前と話したいこともあるし」


「何、話って。先に聞くけど」


「いや、後でいい。着替えたら鍛錬場な」


「ああ。ありがとう、ディーン」


ディーンは片手を挙げ、自室へと向かって行った。僕も部屋へ戻り着替えると、練習用の木剣を持って鍛錬場へと向かった。


鍛錬場は学校だけではなく、宿舎の敷地内にもあり、寄宿生なら簡単な申請で自由に使える。


僕は先に着き、ディーンを待っていた。休暇中、屋敷の護衛相手に少しは練習したが、主人の子だとどうしても遠慮される。ディーンは手加減なしだから気を引き締めて練習しなければ。


ディーンを待つ間、僕は一人で木剣を振った。最後まで痛みがあった左肩と左足首は、もう痛くない。足首の方は、本格的に動かすようになったのが最近だからか、多少動きが鈍いか――体の動きを把握し、だいぶほぐれてきた頃、ディーンがこちらに歩いてきた。


「お待たせ、リュウ」


「ディーン、ありがとう。帰ってきて早々、悪いな」


「俺も剣の練習したかったし、構わないよ。さあ、始めようか」


「準備は?」


「さっきまで騎乗戦闘の授業で動いてたから大丈夫だ」


「じゃあ、軽めの手合わせからお願いします」


僕らは間合いをとって向き合い、一礼すると剣を構えた。最初は型を確認するようにゆっくりと。徐々にスピードが増してきたところでディーンが話し始めた。


「なあ、リュウ。悩みでも、あるんじゃ、ないの?」


「話って、今、するの?」


「宿舎じゃ、お前、話さないかと、思ってさ」


「そうか、なっ?」


「最近、話題を、逸らす、だろ」


カン、カンと木剣がぶつかる乾いた音に合わせてディーンの言葉が飛び、僕が答える。


「リュウ、悩みが、あればっ、言って、くれよ」


ディーンの剣が段々と重くなってくる。


「言うほど、の、ことは、ない、よっ!」


確かに、ディーンの婚約の話をされた時なんかは、話を続けなかった自覚はある。エメのことを話せるわけないし、話したところで解決する問題でもない。これまでディーンに話したくない話題なんてなかったから、僕もどうしたらいいかわからないというのが正直なところだ……


なんて考え事をしながらディーンの剣を受けていたのが悪かったんだろう。


左足の踏ん張りが効かず、リズムを崩した。


ディーンの剣を受け流そうと出した自分の木剣の位置が明らかにおかしい。しまった、と思ったと同時にディーンが声を上げた。


「うわっ!!」


ディーンの剣に(はじ)かれた自分の剣が目の前に見えた後―――

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