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迷いの森、光る石の道しるべ  作者: 千雪はな
第4章 騎士学校
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図書室ではお静かに

休暇が明けて数日たったある日、放課後にニコラと二人で校舎内にある図書室に来ていた。明日からの試験のための勉強に付き合えと、ディーンとジョージに言われたからだ。毎回思うけど、前日に慌てて頑張ったって遅い気がするのだが…。


二人のクラスの授業が長引いているらしく、ニコラと二人、自習スペースの机を確保して、それぞれに本を読んでいた。


因みに、僕やニコラと同じクラスのウィリアムにも一応声を掛けてみたが、「俺、パス」と言って先に宿舎に帰った。



「おー、遅くなって悪いな」


ジョージの大きな声で本から顔を上げると、こちらに手を挙げてディーンと歩いてきていた。僕は慌てて口の前に人差し指を立てて、静かにしろと合図する。


カウンターの向こうから、細いメガネを掛けた司書さんが咳払いをして睨んでいる。僕は小さく頭を下げた。なんで僕が謝ってるんだろう…。


いつもは宿舎の談話室でやっているところ、混んでるから図書室で勉強しようとジョージが言い出したが、失敗だったかもしれない。


「ごめん、ごめん」


ジョージが(ささや)き声で謝った。図書室の自習スペースは小声なら話しても怒られない。


「じゃあ、始めようか。何からやる?」


僕が聞くと、ディーンがジョージを見た。ジョージも肩をすくめた。まあ予想してたけど。


僕は鞄から自分のテキストを取り出して、例題に丸をつけていく。


「とりあえず、この問題やってみて」


コツを掴めば点になりそうな問題を選んでみた。僕はディーンの、ニコラはジョージの手が止まればヒントを出し、間違えたらどこが悪かったかを指摘した。


 ◇ ・ ◇ ・ ◇


多少は点数アップが見込めるかな程度に勉強が進み、ディーンとジョージはクタクタな様子で「ちょっと休ませてくれ」と椅子の背もたれにもたれていた。


「だから普段からわからないところは解消しておくべきだって」


ニコラが小声でぼやく。僕もニコラの言葉に頷いた。教える方も疲れる。僕は両手で頬杖をついてため息を吐いた。


天井を眺めながら、ディーンが「あー、そうだ…」と何かを思い出したようだった。


「みんなには話したけど…」


ディーンは僕に向かって話し始めた。僕にだけまだ言ってない話らしい。机に頬杖をついたまま、彼の言葉を待った。


「俺、婚約することになったから」


「えっ、ディーンも⁈」


僕は思わず頬杖をついていた両手で机を叩き、立ち上がっていた。ハッと我に返れば、図書室中の注目を集めていた。司書さんの視線も痛い。


ディーン達も揃って「シーッ」と人差し指を口の前に立てていた。


僕は「すみません」と頭を下げて椅子に座った。


「なんで今言うんだよっ!」


机に伏せるように身を縮めて、小声でディーンに文句を言った。


「ごめんごめん。今、思い出したんだ」


ディーンも小声で謝ったが、恥をかいた僕を見て笑いをこらえている。


「それはおめでとう、ディーン」


恥ずかしさがおさまらない僕は、祝いの言葉がぶっきらぼうになってしまった。


「で、リュウ、『ディーンも』って他に誰か婚約したのか?」


ジョージがもっともな疑問を口にした。


「ああ、休暇中、幼馴染に『婚約することになった』って、今みたいに本人から急に言われたもんだから」


「まあ、続いたら驚くかもね」


ニコラは僕の驚きに共感してくれた。「でも、」とディーンがニコラから僕に視線を移した。


「リュウもそろそろ、そんな話があるんじゃないか?」


……僕のそんな話はあまりする気にならない。


「ディーンとジョージの集中も切れたみたいだし、宿舎に帰らないか?ディーンの婚約の話は、試験が終わったらゆっくり聞かせてくれよ」


ディーンは話が続かず不服そうだが、ジョージが「そうだな、帰ろうか。腹減ったしな」と言うと、皆、机の上を片付け始めた。


 ◇ ・ ◇ ・ ◇


夕飯を食べ終え、部屋でテキストを見返していた。暗記ものだけは見直しておこうかと思って。


一通り目を通して、そろそろ寝ようかと思った時、同室のニコラがテキストを手に部屋に帰ってきた。彼も談話室かどこかで、最後の見直しをしていたようだ。


「そろそろ寝るとこ?」


ニコラがテキストをカバンに入れながら僕に聞いた。


「ああ、見直しも終わったしね」


ニコラとは勉強のペースが似ていて、彼と同室でよかったと思う。ディーンと話は合うが、課題も試験勉強も一夜漬け派で夜通し明かりを灯して勉強するだろうから、同室は遠慮したい。特に試験前は早めに寝るに限る。


僕は2段ベッドの下に潜り込むと自分のランプを消した。


「ニコラ、おやすみ」


「ああ、おやすみ、リュウ」


ニコラがベッドの梯子を上り、間もなくすると彼のランプも消されて部屋は暗闇に包まれた。

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