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迷いの森、光る石の道しるべ  作者: 千雪はな
第3章 前に進む
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街歩きと従者

僕は雑貨店での買い物を終え、石畳の道をレオン、マークと歩いていた。


「リュウが、ああいうのを買うようになったなんてな」


レオンが、揶揄(からか)うように僕が手にした紙袋を見ながら言った。マークも頷いている。


伯爵家次期当主の僕の従者として人前に出る時は、レオンもマークも僕に敬意を表す態度を取るが、他の人の目がなければ、昔からの従兄弟同士の会話になる。


「こういうことは、ほっといてくれないか?別行動が許されるなら、一人で買いたかったよ…」


僕がため息を吐くと、二人とも笑った。マークも遠慮なく僕を揶揄うつもりのようだ。


「リュウが女の子のために、家の用事をすっぽかしたって聞いた時は驚いたけどな。今から行く店も、その子への土産を買うんだろ?」


僕は二人を睨んだ。


「走って逃げようかな」


店への地図は、僕の手の中にある。


「俺らから逃げられると思ってるんだ」


レオンの勝ち誇った様子に、僕はもう一つため息を吐いた。彼らは足が速い上に、連携もいいから逃げられる気がしない。


二人は揃って笑い、レオンは僕の頭をポンポンと叩いた。


「まあ、頑張れ。応援してるから」


「応援って、本当かなぁ…」


彼らに面白がられているだけな気もするが、相手が森に住む少女だと知っていて、それでも普通に応援すると言ってくれることは嬉しかった。


 ◇ ・ ◇ ・ ◇


「あ、ここだね」


Mills’(ミルズ) Tea House(紅茶店)』と書かれたティーポットの形をした看板の店を見つけて、その扉を開けた。


カランカラン


ドアベルが揺れて鳴り、マークと二人で店に入ると、店主と思われる女性が接客をしながら「いらっしゃいませ」と迎えてくれた。紅茶のいい香りがする店内には先客がいて、ブレンドについて質問しながら選んでいるところだった。


僕は店内に並ぶ大きなガラス瓶を一つずつ見た。瓶のラベルには、さっきのリストで見た『甘いケーキと共に』などの商品名と簡単な説明が書いてある。


どれにしようか悩んでいると、再びドアベルが鳴り、先の客が出ていった。


「お待たせしました」


僕の横に立った女性がにこやかに「お決まりですか?」と聞いた。


「土産として少しずつ何種類か買いたいのですが」


「それなら、ちょうどいい物がありますよ。少しお待ちくださいね」


そう言って一度店の奥へ行き、籠を抱えて戻ってきた。籠には小さめの紅茶缶がたくさん入っている。


「これくらいのサイズでいかがですか?いくつか並べると可愛いんですよ」


その視線の先の壁の棚の上には、その紅茶缶が綺麗に並んでいた。それが可愛いという感覚は僕にはよくわからないが、小さな缶が並んでると可愛いのだろうか。姉上が大事にしていたドールハウスのような感覚で…。


まあ、可愛いかはさておき、持ち帰るのにちょうどいい大きさなのでその缶に入れてもらうことにした。


勧められるままに数種類の茶葉を選び、ガラスのポットも買って店を出た。



「お、欲しい物は買えたか?そろそろ書類の写しもできただろうし、ミラー商会へ戻ろうか」


店の外で待っていたレオンが懐中時計を手にそう言った。マークもそれに頷いて答えた。


「そうだな。書類を受け取ったら、一度荷物を宿に置いて、それから昼メシだな。で、午後はトリド(ここ)の市長に面会の予定か」


「あ、…ああ、そうだな」


「ん?どうした、リュウ。何か気になる事でもあるのか?」


マークが心配そうに僕を見た。


「いや、ごめん。僕、紅茶を買った後も、マーク達に冷やかされると思ってたんだ。だから、少し身構えてたというか……」


僕がボソボソとそう言うと、マークは笑った。


「そんな、いつまでも揶揄わないよ。リュウはその子のこと、大事に思ってるんだろ?」


「そうだけど…」


「まあ、色々あって思うようにはいかないんだろうけど、俺達は応援するって。たまには惚気(のろけ)てもいいぞ」


「その時は冷やかしてやるから」


マークの言葉にレオンも続け、二人揃って僕の背中をバシッと叩いて笑いながら歩いていった。


「前見て歩けよ、リュウ」


マークにそう言われて、僕は(うつむ)いていたことに気付いて顔を上げた。二人は談笑しながら少し先を歩いている。


二人の過度には干渉しないが、ちゃんと僕の事を見て心配してくれているのを感じて嬉しくなった。


僕は追いかけて彼らに並ぶと「ありがとう」とお礼を言った。二人は満足そうに笑って僕を見下ろし、レオンはまた僕の背中をバシバシ叩いた。


「痛いよ、馬鹿力!」


僕がを睨むと、レオンは「ごめん、ごめん」と全く反省していない様子で笑った。僕も一緒に笑った。

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