俺は別にランクが上がりたいわけでは無く平和が欲しいだけなんだ〜
王都から少し外れたアルダン地区。
特にこれといった特徴もなく、経済はそれほど発達してないが人情が厚い街として有名で観光客が多い。
冒険者ランクとしてはE〜Cランクのものが多く滞在し、付近の草原やダンジョンには手ごろで倒しやすいモンスターが生息している。
そして丁度狩りを終えたのだろうか、腰に短剣を装備し鼻歌混じりで居酒屋へと颯爽と向かう男がいた。
男の名はタクト。この物語の主人公である。
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この街でもそこそこ繁盛していると言っていいだろう、居酒屋ダント。
扉を開けると他の冒険者で既に賑わっており熱気が伝わってくる。いつもの飲み仲間もドンチャン騒ぎをしていた。
「おう、アンちゃん。今日は少し遅かったな。」
「いや〜狩りが少し長引いちまってな。いつものセット頼むぜ。」
そういって、ポケットから小銭を取り出して丸々と太った巨漢の店主に投げつける。
やっぱし仕事の終わりにはここの酒とツマミに限る。
全身がリフレッシュされ仕事の疲れが一気に消しとばされる。
「なぁタクト。お前のパーティーも早くCランクにあがってこいよな〜俺様が戦い方を教えてやろうか〜。」
そうライデンは背中をバンバンと叩きながら上から目線で話かけてくる。既に酒は入っておりベロベロだ。
少し上から目線なのはたまに傷だが、紺青の男というCランクパーティーの長をしており、リーダー気質でいいやつではある。
ついでにカウンター席でライデンの隣で飲んでいるのが紺青の男の副リーダーのジャックである。
細マッチョでイケメンで女にモテる憎いやつだ。
そこからは世間話しに花を咲かせた。
最近のホットな狩り場から品安な武器屋、風俗はここの女がいいなどのゲスな話など様々である。
「なぁお前ら、冒険者ランクキング見たか。ついに百花の紅が三位まであがり詰めたぞ!」
興奮気味にライデンが叫んだいる。
百花の紅というのは女性だけのパーティーで王都でも有名でここ最近、急成長している。
Aランクの頃からかなり有名で何度も雑誌で特集されている。
何せパーティー全員が若くて美人ということで雑誌が飛ぶように売れるという。
熱狂的なファンも多く、みんなのあこがれのアイドル的な存在となっている。
「特に俺の推しは神城レイナちゃんだぜ。可愛いさだけじゃなく実力もピカイチ。特に剣技なんかは〜」
「おお〜レイナ元気にやってるのか。久しぶりに見たな。」
「アン、タクト。レイナちゃんと知り合いって口か。うそはいっちゃいけね〜ぜ。」
ライデンが酔っ払いながらテ〜ブルをバンッと叩き、俺につっかかってくる。
「はぁ〜、マジだし。一万ボットかけてもいいぞ。」
今日の飲み屋の代金が八百ボットだから中々の大金でもある。
なら俺は二万ボットかけるぜ、とライデンが叫ぶとそっからは何故かジャックまで巻き込んで散々だった。
そして1週間後、タクトがこの居酒屋にレイナを呼びつけるとは誰も夢にも思ってなかっただろう。