7
なぜか机の上に用意されていた洋菓子を食べながら、紅茶を飲み進める。
しかし由香ちゃんがいると場も和むというもので、先程までの緊張感のある空気とは打って変わって穏やかな空気が流れ始めていた。
いや、僕にだけは警戒の視線が投げられていたが。器用な人だ。
「なんでさいじょーがいるのー?」
「僕?理事長に頼まれちゃってね」
「りじちょー?」
「うん。由香ちゃんのお母さんだよ」
「ままー」
わかっているのかわかっていないのか、由香ちゃんは元気にそう言うとソファーを飛び降りて積み木で遊びだしてしまった。
「由香ちゃん、お菓子はもういいの?」
「おなかいっぱーい」
「そっかー」
由香ちゃんは自由気ままだなあ。
そんなことを思っていると、秋川さんも由香ちゃんの空気にほだされたのか、ごく自然に話しかけてきた。
「ほんと、なんであんなやつに懐いてるのかしら」
あるいは、それは独り言だったのかもしれない。
「えっと、あの件は誤解っていうか……」
僕は弁明にもなっていない何かをすると、秋川さんはこちらを確認してからため息をついた。
……やはりさっきのは独り言だったらしい。
「あなたがどんな目で私を見てたかくらいわかってるから」
「それは、仕方がなかったというか……」
「キモ」
酷い。でも、その通りで何も言い返せない。
「で?それは認めるくせに何が誤解だって言いたいわけ?」
秋川さんの口調が強くなる。
「それは……結果的には秋川さんを失礼な目で見ちゃったけど、目的はそうじゃなかったって言うか……」
「なにそれ」
それ以降、僕と秋川さんが会話をすることはなかった。