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それから僕は、とことん由香ちゃんの勉強に付き合った。
躓いてしまった時は一緒に考えてあげて、躓いてない時でもひたすら見守ってあげた。
どうやら由香ちゃんは勉強自体を嫌っているわけではないようで、一度やりだすと昼休みが始まるまでずっと勉強を続けていた。
その反動か、由香ちゃんは昼ご飯を食べ終わるとすぐにぐっすりと眠ってしまったのだった。
「そういえば呼び出されてたみたいだけど、何かあったの?」
今日も律儀に部室に来ていた秋川さんが、だいぶ完成してきたぬいぐるみを仕上げながら聞いてきた。
秋川さんともこの数週間でだいぶ距離が縮まり、それに比例するように僕の手芸の腕も上がっていた。
「由香ちゃんが夢子ちゃんのフィギュアが欲しくて僕を探し回ってたみたいでさ」
「ふぅん……西条くんもすっかりお父さんになったよね」
秋川さんが僕を茶化す。
「いやいやいや、ほんとのお父さんに申し訳ないから」
「……そうだね」
「とりあえず、僕は今のうちに理事長に聞いてくるよ」
「何を?」
「何をって、フィギュアのことだけど……」
「あー、そうだよね」
秋川さんはフィギュア以外に何を思い浮かべていたのだろうか?
いや、ぬいぐるみに集中していて何も考えていなかっただけだろう。
僕は、そんな秋川さんを残して理事長室へと足を進めたのだった。