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その後は特に何事もなく……本当に、クラスメイトから話しかけられるといったことすらなく、昼休みになった。
もちろん、僕は昼休みも献上して由香ちゃんの面倒を見なければならない。
今となっては教室にいるのもいたたまれないので、構わないと思いつつもあるのだが。
「由香ちゃーん。お昼だよー」
部室に入ると、待ってましたとばかりに由香ちゃんが駆け寄ってきた。
「さいじょー!ごはんー!」
「はいはい。今開けるからね」
一応由香ちゃんの手が届かないところに置いていた弁当箱を開ける。
そこには朝見たものとまったく変わらない中身だった。
「はい。よく我慢できたね」
「がんばりましたー!」
元気な返事をする由香ちゃん。
その笑顔につられるように、僕たちは笑いに包まれた。
僕も自分の弁当を用意して、席に着く。
すると、由香ちゃんに不思議そうな目で見られてしまった。
「さいじょー。おてあらいはー?」
「ああ、お手洗いしなきゃね」
僕は慌てて手を洗う。
由香ちゃんの純粋な視線が刺さり、心が痛かった。
由香ちゃんの前では、いろいろ言動に気を付けなければ……
改めて席に着き、今度はしっかりいただきますを言ってから食事にありつく。
「おいしー!」
「ハンバーグ好きなの?」
「うん!だいすき!」
わかりきった会話をする。
幼女の前では、誰でも馬鹿になる説がここに提唱されたのだった。