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祭りの裏側1


 夢か現か揺らぐ意識の中で、たっぷりと光を含んだ金髪の男の子が眩しい笑顔で私を呼んでいる。

 男の子に誘われて海の中に入ると温かく心地好い。

 透明度が高く、膝まで水に使っても足元に寄る小魚の模様さえハッキリと見えた。


「きょうは、どこにいくの?」


 男の子が空色の瞳が真っ直ぐに見つめ私の返事を待っていたが、答える前に後ろから声がした。


「おーい! オレもつれてけよ」


 肩まで伸びた黒髪に、金の瞳を持つ男の子が私たちの所に向かってくる。

 その姿を確認するや否や、金髪の男の子は私の手を引き急いで海の中へと入っていく。


「はやく! きょうはふたりでいくってやくそくしたろ?」


 胸元まで水に浸かるが怖さは全くなく、私たちは互いに目配せをすると一気に海の中へ入った。


「ちくしょー! いつもずるいぞー!」


 嘆く声が遠くで聞こえたが、私たちは構わず海の奥へと泳いでいく。

 水の中でも苦しくはない、だって私は人魚だから。




―――――




 目を開けると幾何学模様が描かれた見知らぬ天井があり、1度ゆっくり目を瞑る。

 呼吸を整え、寝ぼけた頭でゆっくり考えればここがコルタリア城の客室だと答えにたどり着いた。


「夢か……」


 夢の半分は忘れてしまったが、まだ朧気な意識の中であの海はアルベルト様に連れていってもらった所だったと思い出す。

 コルタリアに来てから何度か同じような夢を見ていたが、今日はいつもよりハッキリ覚えている。


 私を呼んでいた海。


 海に入り、自分を人魚と言っていた。

 この世界に来て何度か人魚と言われたことがある、水を操れるからかと思っていたがもしかしたら本当に私は人魚?


「まさか」


 人魚であれば水の中で息が出来るが、アルベルト様を追って入ったフォルトナの湖で私は溺れてしまった。

 それでも、もし私が人魚だったら……。


 足が魚になってしまうのだろうか?

 元の世界に帰れるのだろうか?


「アルベルト様、驚くかな」


 きっと優しいアルベルト様は、変わらず紳士に接してくれるだろう。

 けれど私の知る人魚の物語は悲恋だ。



「はぁ~~」


 考えてもどうにもならず、私は頭まで布団を被り2度寝を決めた。

 この夢を見ると、どうも頭がハッキリしない。

 


トントン


 

 部屋のドアをノックする音が聞こえるが、無視を決め込み私は更に布団の中で身体を丸める。



トントン



 この軽やかなノックはきっとコルテだろう、昨日の話も聞きたい所だが今日の予定はないはず。

 祭の3日目は恋人たちのイベントらしく、恋人たちメインの催し物が多い。

 

 

 

「私は寝る」


「ダメだ、起きろ」


「ひぇっ!?」


 まさか自分のすぐ側から返事があると思わず驚いていると、布団の外にいる人物が豪快に笑った。


 そういえば、昨日は慌てて帰り部屋の鍵をかけた記憶がない。



「おい、姫が無用心だぞ。」


「エミル様こそ、そんな姫の部屋に無断で入るなんて失礼ですよ?」


「俺はノックをしたぞ、それに約束したろ?」


 私の言葉をするりと躱し、ベットから引っ張り出されるとエミル様の後ろにコルテが罰の悪そうな顔で控えていた。


「こいつを俺の隣を歩けるよう、着飾ってくれよ」


「何で……」


「おいおい、忘れたとは言わせねーぞ。 今日は俺とのデートだろ」


 祭が始まる前にそんなこと言っていた気がする。

 いつもの気まぐれかと思っていたが、本気だったらしい。

 約束と言っていいものだったか怪しいが、服も用意してもらい私の予定もないことから断わる理由が見付からなかった。


「分かりましたよ、行きましょうか」


 適当に町を歩くくらいの気持ちで私は返事をし、居座るつもりのエミル様を追い出してコルテと準備に取りかかることにした。





「な、な、なにこの服ー!」


「お、いーじゃん。 よく似合ってるじゃんか」


 エミル様から頂いた服に袖を通せば、胸元と腹部ががっつり開いたコルタリアの民族衣装だった。

 私の叫びにエミル様がひょっこり現れる。

 薄水色をベースに淡い色の宝石やパールのおかげか、いやらしさはないがこんなに素肌を出した服を着たことがなく抵抗を感じる。激しく。


「ムリムリムリ! 肌を人様に晒すなんて……」


「大丈夫だ、むしろその装いの方じゃないと今日は逆に目立つぞ」


「うぅ……」


「ほら、これでも羽織れば良いだろ?」


 そう言ってエミル様は滑らかな生地のグレーがかった薄手の羽織を肩にかけてくれる。

 薄すぎて透けていたが、ないよりは俄然ましだ。


 私の態度に気を良くしたのか、エミル様は膝を折り手を差し出してきた。



「さぁ、行きましょうか姫様」


 この国の王子にそんな態度を取られてしまっては、私が断れるはずがない。

 渋々エミル様の手を取ると、彼はしてやったりと言いたげな憎らしい表情で私をそのまま外に連れ出した。


挿絵(By みてみん)

[マリのコルタリア民族衣装]

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