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思いがけぬ一助

PCが壊れて書けなかったけどようやく書ける環境に戻りつつある

場所は変わり、ローズの宿のロビーに全員が座っていた。宿の表には貸し切りの文字が掲げられており、隔離用の魔術すら展開されて誰も入ることは出来なくなっていた。

宿の習慣が染みついていたのか、シアから水の入ったコップが出される。あたしは軽く水に口をつけた後、話を始めた。


「シアにローズ、あなたたちは何でこの町に?」

「んー…赤い羽根の関係者なら言ってもいいか。まず私、ローズが赤い羽根の直属の部下みたいなものね」


その言葉に全員が驚きの表情に染まる。

赤い羽根と言えばあたしたちの目的そのものだ。その力がとんでもないのは知っていたのだから、部下も当然相応の力を持っていると考えるべきだった。

ただ赤い羽根に部下がいるなんて情報を聞いてないので無理もないこととも言える。


……こんなすれ違いで町が滅ぶかもしれなかったなんて全っ然笑えないけどね。


「直属の部下…ドワーフの王と近衛みたいなものですか」

「違うけれど、今はその認識で問題ないわ。そしてこっちのシアは私の恋人」

「え、女でしょ?」


思わず口が出てしまう。男と女の性別がある生命体であれば恋人となるのは男女であることがほとんどだからだ。

確かにドワーフやエルフといった五大種族であれば魔力運用で子供を作るなんて簡単だ。魔力量や制御能力が問題なく作れるレベルにあるのだから。それなら恋人になってもおかしくない。

だが逆を言うと五大種族以外の者たちは難しいのだ。五大種族と同等まで成長した者同士なら問題ないが、そこまで成長できるものは千から万に一人程度だろう。


と言っても目の前にいるのは赤い羽根の部下になった程の者。そんなレベルではないのは明白なのだが……何故か違和感を覚えてしまった。欠けている記憶が影響しているのだろうか?それとも昨日見たシアにダブった姿だろうか?


「それのどこが問題?子供がほしければ魔力をうまく重ねればできるし、性別なんて身体の構造以外に何か違いがあるのかしら?」

「そうね、ごめんなさい」


素直に謝る。怒られても仕方ないことを言ったのだから謝るのは当然だ。

ローズはそれほど怒っていなかったのか、特に言及することもなくそこで話を終わらせた。シアが少し嬉しそうにしているのが気にかかったが、聞き出すことでもない。


「話を戻して」


ミグアが機嫌悪くなっているのを分かりやすく声色に出して会話に入ってきた。いい加減話を進めろと言いたげな様子。


「ローズの恋人の私だけど、ローズに似た力をちょっとした事情で手にしたの。それで力の制御訓練を続けてて」

「へぇ?」


シアから事情が口に出され、あたしとミグア以外の全員が不満な表情をした。

理由は予想なんてしなくても分かる。そんなことを街中でするなってことだろう。災害レベルの力が暴走するかもしれないのに、人が大勢いるところで扱うなというのは治める側からすれば当然のことだ。

あたしとミグアがへぇと好奇心しか見せないのは単純にその辺りがどうでもいいからだ。あたしの根本的な目的は治めることじゃないし、ミグアもあたしについてくることだから。


「街中でやる理由は?」


カティナから当然の質問が飛ぶ。治める者からすればたまったものじゃない。せめて一言話しておけば変わっただろうに。そういうことを面倒くさがるのは災害らしいとも言えるが。


「私たち、元々は人間だよ?社会に属したいと思うのは我が儘だけど、通しても悪くないでしょう」


何故か分からないが、驚愕という感情があたしを襲った。

人やドワーフが力を付けた結果、災害のような強さをもった存在になることは高位軍人レベルにもなれば知っている知識だ。ルーナの知識を持っているあたしももちろん知っていた。

ミグアは元がマイマイである以上、座学でやる必要はないからとスルーされていた。が、突き付けられたら突き付けられたで衝撃的な内容なのだ。


その感情が魂喰らいとなった、元の魂である留美という人間の感性から来ているとはルミナは知らない。この世界では人も災害になり得るということが、何を意味するのか無意識下で認識してしまったのだ。


「危険はないみたいですね。はぁ……ということは子供たちがいなくなっているのとは別の話ですか」


溜息をつくカティナ。問題の一つに当たったとはいえ本来の問題とは外れだったのだ。残念に思うのは当然のことだった。

だがカティナには同時に嬉しくもあった。街中で敵対しなくてもいいということは、町に被害が起きるかもしれないということを考えなくていいのだ。


暴力的手段で解決できるし被害を考えなくていい。ともなれば後は災害がいる場所の確定さえすればデルス達に任せられる。

そこまで考えていたカティナに、思わぬ一助が目の前から投下された。


「子供?ときどきディアインに向かっている子供たちのことかしら?」


ディアイン、それはコルドークの外れにある山の名前である。山脈と言える程の高さはないが、丘というには高すぎる。災害獣が眠っているとも言われるが、その程度ならガイカルドよりも遥かに小さな存在だ。

内部に洞窟がいくつかあり、熊のような獣なら住んでいる。それゆえに子供が行っていいような場所ではない。


「ディアインに子供が?」

「ええ。少なくとも十数人以上は行っているはずよ。これでも私の感知範囲は広いの。町一つくらい息を吸うのと対して変わらないくらいには」


ローズが赤い羽根の部下というのが分かりやすく示された。デルス達3人が使った魔術を息を吸うように扱える。それだけで実力差がどれくらいあるのか理解できてしまう。


もっとも、3人で使ったのは移動距離的な問題の方が大きい。ディーエは分からないが、デルスとカティナなら一人でも広域詳細探知魔術は使える。使った後の対応が問題だったのだ。

とはいえ息を吸うように、というのはデルスであっても少しだけ難しいことだった。そしてそれはそのままデルスとローズの実力差になる。


「それに真向で戦わないタイプの災害獣は私からすれば一番倒しやすい相手でね。見つけるのなんて簡単もいいところ」


ローズの自信満々な表情にシアが微笑む。話している内容は物騒極まりないが、二人の関係性が分かったからか、どこか微笑ましくも感じる。

そんな実力者なら災害を倒しに行ってくれとも言いたいが、災害のような力を持つものは基本的に自由人だ。頼む方が間違っている。


「ディーエ、町の外にいる災害獣というのはどっちの方向ですか?」

「南南西の方角ですね。ディアインという山はどちらに?」


デルスとディーエが場所の確定を行う。既に町の外の探知は行っているのだ、方向の特定など終わっていると言っていい。あとはディアインがどっちの方角にあるか、それだけ知れれば原因は特定できる。


全員の視線がカティナへと集中する。この周囲の地形や場所の名前を最も詳しく知っているのはカティナであるからこそ。


「南南西、同じですよ。……これは確定ですね」


カティナは猟奇的な微笑みを浮かべる。それは元高位軍人としての顔であり、敵対者を撃滅すると決意したものの笑みだった。

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