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コルドークの夜

外伝(迷宮美少女使徒への変貌 ~ダンジョンの毒牙にかかった冒険者と恋する女騎士~)を書かないといけなかった理由はこいつらのせい。まぁ赤い羽根もだけど

(一応聞くけど、何であの二人だと?)

(違和感がなかったか?特にシアという方だ。ローズという方は違和感などなかったが、シアには何かがあったはずだ)


思い出すのは一息ついた時のこと。女なのに男の姿だと錯覚したという異常が目についていた。それが何なのかは分からないし、分かる必要もない。

しかしそれだけの情報から危険だ、というのは中々に横暴な意見だ。判断するには情報が少なすぎる。


(あったけど、それだけで判断するには早過ぎるんじゃない?)

(うむ、早過ぎる。だが何かあるのは確かだ。それが仮にこちらの起きていることと同じなら?同じでないならこちらの杞憂というだけのこと)


男に見えた問題が災害獣クラスの力の持ち主を探すという問題と一致するとは思えない。大方精神に別のものがあるとかそういうものだろう。

それが問題であるというのなら……多少の警戒はしておこう。幸い、明日配置して対処する予定の場所はまだ決まっていない。町を円状に見た時の、対角上にミグアと私が配置されるのは分かっているが、角度は決まっていないのだ。

そこは闇雲に配置されるはずだが、懸念が何かしらあるなら伝えておくのは悪くないことではある。


(まぁ……闇雲に警戒するよりかは遥かにマシだけど)

(どうせ明日以降も滞在することになるのならこの宿を使うことになるのだ。ならば守ってやっても悪くは無かろう)

(明日、明後日まではまだこの町にいると思う。こっちの都合になっちゃうけど……いいのかな?)

(カティナに聞くといい。ルミナとミグアはドワルガ王国の所属ではないのだ。そこまで深く考える必要はない)


その言葉に思わずむっとしてしまう。

ガイードの発言は間違っていない。間違っていないが、それはあくまで理屈での話だ。

情という点では全く鑑みていない。チームで動くときに責任など無いから好きにしろと言われても困る者もいる。ルミナはその典型だった。


(ガイード、あたしはドワルガ王国のお世話になってる身。少しは返す義理ってものがあるんだよ)

(気にする必要はない。…だがそれほど強く想うのならルミナの好きに動けばいい。我はそれを助けるだけだ)


ガイードはそこで魂経由の話を切ろうとした。けれど魂という場所ではあたしの方が立場は上。切ろうとしたガイードにもっと小言を言ったが……無視されていた。


これ以上言っても仕方ないと魂経由の対話を切る。反省してなさそうだったからガイードのバングルについている顔にデコピンしてあげる。


「そろそろ灯りを切りますよ。朝から随分と遅くまで動いてましたから、明日は正午まで自由です」


デルスが明日の予定を告げる。正午まで自由と言えば聞こえはいいが、もう深夜に近い時間ということからして言いたいことは簡単だ。


「正午までに起きてこいってことでしょ。今日は朝から訓練してたようなものだし」

「ルミナさん、厳しい訓練した次の日ってそんな感じですよ」

「私、平気だよ?」


マイマイの身体してるミグアはともかく、あたしとディーエは移動疲れがそれなりにある。正午とまでは言わないが、朝まで寝ないとマトモに回復しない。


「言いたいことは分かってるようで何よりです。では寝ましょう」


デルスが灯りを付けている魔道具のスイッチを切る。そうして部屋は眠りやすい暗闇へと落ちていく。


あたしも疲れているのは否定できなかった。熟睡するのに一分も要らない程には。







寝静まった夜の闇の中、とある寝室に裸で寝る二人の男女の姿があった。一人は小柄な男性であり、その頭には雄ヤギの角が生えていた。もう一人は長身な女性であり、その燃えるような赤い髪は文字通り燃えていた。しかしベッドは燃えておらず、彼女自身はその熱量を完全に操作していた。


「ねぇ、ジルク。あの4人……いや5人かな。凄い手練れだね。私も戦いたくないくらい」

「ローザリッサが言うほどなのか。俺も戦うつもりはないさ。何より力の制御はまだまだできていないんだ。ローザリッサとは違ってね」

「焦らなくても大丈夫だよ。私が守るから。万を超える年月、あなただけを守ることだけを想ってた。だからジルクは焦らないで。ずっと私が横にいる」

「知ってる。でも俺は男なんだ。いい所見せたいと思うのは当然だろう?」

「うん、カッコいいジルクも知ってる。その背中を見てたいって……お姫様みたいなことだけど」

「ローザリッサは俺にとってはお姫様だ。ま、とんでもなく我が強いお姫様だけどな」

「シアにはお姫様なんて言ったらやだよ?」

「あいつは俺だ、言うはずがないだろう。それに……あいつにとってもお前がお姫様だよ」


ジルクと呼ばれた男はローザリッサと呼ばれた女の唇に自らの唇を重ねる。それはごく自然な行為だとローザリッサも受け取っており、唇どころか息の重なりすら一致する合い方だった。


「俺が守る。誰にもお前を傷つけることは許さん」

「私も守る。あなたを奪う者は全て消し去ってやる」


ジルクの背中に蝙蝠のような黒い翼が生え、ローザリッサの背中には蝶のような赤い羽根が生える。まるでそれこそがあるべき形であるかのように。


彼らの影は一つのまま、ベッドの中に消えていった。

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