表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/126

分析と計画

ノリが、ふぉにっくゲインが足りない

「ラギトーサを突き止めた後、衛兵だけで治安が維持できると考えた私は一度街に異常がないか確かめたのです」

「問題はそこで?」

「はい。30~50歳子供の数が少なくなっていたのです」


ドワーフの年齢で30~50歳とは人間に直せば10~15歳程度の、ドワーフの成長期に該当する時期だ。

そして子供の数が少なくなる。それがどういうことなのかはいくつか考えられる。


一つは子供の一人がマイマイになったこと。マイマイは寄生し、宿主を乗っ取ったら宿主の同種を喰らい始める。この世界では最も一般的なことであり、まず最初に考えることだ。

だがそれはドワーフには起き得ない。幼児の頃にマイマイが寄生していれば取り除く魔術を行使するからだ。


次に考えるのは治安が悪いため人間に連れ去られたというもの。これは治安が悪ければの前提がつくため、コルドークについては考えられない。


そしてそれ以外ともなるとドワーフの禁忌魔術を行使するためとか、災害獣が連れ去ったとかが考えられるところだ。事例が多いためそのどれも可能性としては存在しており、絞ることができない。しかしそのどれもが大事件に発展する可能性を秘めている。


だからこそ子供の数が少なくなるというのは危険の兆候なのだ。それこそ、災害獣がいても優先しかねない程に。


「なるほど、確かにこれは行動が送れるのも納得できますね。その原因はまだ?」

「分かっていません。分かっているのは人間、ドワーフが攫ったのではないことくらいです」

「ねぇ、ちょっといい?」


手を上げて二人の会話に割り込む。少し思うことがあったからだ。

もしかしたらあたしたちが感知した災害獣が悪さしてるのだろうか?仮にそうであるならこちらで原因の特定はできてしまっている。

デルスが伝えるつもりだったのかもしれないが、何故だか伝える気配がないのであたしが代わりに伝えることにした。


「今カティナさんが知ってる、この町とかその周囲にいる災害獣ってどれくらい?」

「ラギトーサ、そして赤い羽根の二つです。それ以外は知りません。……いたのですか?」

「町中と外にいた。原因かもしれないね」


カティナの顔が驚愕に染まり……さらには青ざめる。災害獣という存在が町にいるのに気づかなかったということ、さらには町の人を危険にさらさせていたことが重くのしかかっていた。


「ルミナ殿、あまりカティナをいじめてあげないでください」

「え、情報渡しただけでしょ?これがいじめになるの?」

「これでもカティナとは同期なもので。彼女は責任を強く感じやすいのです。簡単な内容でもいじめているように見えてしまうのですよ」

「デルスとカティナ、同期?同じ?」

「同じタイミングで軍に所属したってことです、ミグアさん」


デルスとカティナが同期、それなら分かる。同期だからこれくらいがいじめになるように見えるということか。

ミグアには同期の概念が存在しないはずだから分からなくて当然。ディーエのフォローには感謝しないとね。


「同期ね……。引退した理由は、いえ、聞かないでおきましょう。それよりもあたし達が知ってる情報を伝えましょうか」

「お願いします、ルミナさん」


伝える内容は二つ。一つはあたし達がここに来る時に探知することで確認した災害獣の数。詳細として町の外に3体と町の中に2体いること。そしてもう一つはを知った上で町中に入ったが問題は起こらなかったこと。

あたしの話を聞いたカティナは呆れ半分怒り半分といった表情だ。だが仮にあたしが同じ立場だったら……同じ感情を抱いたのは間違いないから何も言えない。


「よくもまぁその行動をとろうと判断しましたね。デルス近衛がいるとはいえコルドークが吹き飛ばされてたとしても文句言えませんよ?」

「一番危険な赤い羽根は外だから問題ないと判断しました。二体なら私とルミナ殿がいれば時間稼ぎくらいはできるので」

「あれ?あたし戦力として扱われてたの?一言も聞いてないんだけど」


チラリとデルスの方へと視線を向けるとぷいっと顔を逸らした姿が見えた。緊急事態になれば戦わざるを得ないけれど、緊急事態を誘発するような真似は止めてほしいところだ。


「デルスは変わらないですね。勝手に自分の行動に保険をかけて勝手に判断する。近衛程の立場と戦力でなければ厄介者扱いされると言っていたでしょう」

「私と同じ近衛クラスならそれも汲み取ってくれる。汲み取れない方が悪いのですよ」

「はぁ……まぁいいでしょう。あなたと取っ組み合いしても敵いませんし、時間の無駄です。これからの方針を決めましょうか」


カティナが全員に目を配らせる。ここにいる者たちがこの町の最高戦力だ。誰をどこに配置するかによって町が滅ぶかどうかが決まる。

全員が町の中にいれば町は守りきれるが、問題解決に至るかは話は別だ。


「まず問題はどの災害獣が子供を攫っているのか。赤い羽根とラギトーサは別と見ていいでしょう。つまりは残る町の中の二体か、外の一体。これを交渉もしくは討伐する必要があります」

「戦力は私、ディーエ、カティナ、ルミナ殿、ミグア殿の5人。討伐の場合は場所を変えなければ町が滅びますよ?」

「ええ、ですから外の災害獣は討伐しても交渉してもどちらでも構いません。問題は町の中にいる方ですね。こちらは交渉ないしは外へ押し出す戦力が必要になります」

「となると私かルミナ殿か。しかしそうなると……」


カティナはコホンと一つ息をつきデルスの言葉を遮る。お前に聞きたい訳じゃないと言ってるのが二人の会話の外にいる三人からも見え見えだった。


「なので町中にいる方を優先します。全員で探知し、即時対応による強襲のような形です。デルス近衛、私、ディーエにより三方向から町全体へ広域探知魔術を使います。目的の者を見つけたと同時にミグア、ルミナのどちらかを即対応させ、私たち三名が行くまで時間を稼いでもらいます」


戦力分析が早く、すぐさま対抗する計画が立てられる。こういったところが高位軍人らしいところだ。ただ戦力分析が正しく、計画が立てられても問題となる部分は存在する。

それは戦力差による被害。未知の敵と戦う場合はどうしても周囲に被害が出てしまうのだ。口を出そうとしたが、全く同じことがディーエの口から既に出ていた。


「それだと町に被害が出る可能性がありません?」

「ディーエさん、それは二人を舐めて見てると言っているようなものです。私はデルス近衛が連れてきた、戦力としては十分な人材を疑いはしませんよ」


これは褒められている、でいいのだろうか?デルスを信頼しているともとれる。

しかし災害獣が被害を出す前に抑えろとは難しいことを言ってくれる。できるだろと言われても0に抑えるのは無理だ。


「被害0は無理かな」

「流石にそこまでは求めません。初動が広範囲無差別攻撃なら止められませんし。求めるのは注意を引いてくれる囮、そして可能なら被害抑制の二つです」


それだけでも十分困難な仕事だ。ディーエでは不可能なレベルの難易度だろう。

しかしカティナが大丈夫と言い、デルスやガイードも何も口を出さない。敵に理性があるからだろう。理性があるなら言葉が通じ、時間稼ぎくらいなら可能だ。

だからあたしも無理とは言わない。戦ったら被害が出て作戦失敗とすら言えるのだから。


「それならいけるかな。責任押し付けられても困るけどね」

「今回の作戦は全て私とデルス近衛の責任です」

「……私も?」

「当然でしょう。この中で一番地位が高いんですから」


とばっちりで責任を押し付けられるデルス。仕方ないとぼやくも、嫌という風には見えない。そこは流石に高位軍人の中でもさらに近衛と呼ばれる者なだけはある。


「それでは決行は明日の正午。ドワーフに化けているなら何かしら行動している時間帯です。なれば最も油断するということ、そこを突きます」


カティナの凛とした顔つきに、全員が首を縦に振った。


「あ、そういえば寝床はあります?」

「は?領主館にそんなもの置くはずないでしょ。金は渡すから外で宿とりなさい」


話すことはこれで終わりなのに最後が何で締まらないのか、思わず溜め息の一つも出てしまう。あとデルスの同期頼りは当てにならないことがよく分かった。


ブックマーク、感想、評価あると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ