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災害に守られる町

あ゛あ゛あ゛ストックがぁぁぁ!!!!

コルドークの町は城壁がある都市ではなく、一番外側に畑といった農場が広がっている。

そしてそれに続いて民家があり、その先に商業施設が整うという都市構成になっていた。それは外からの攻撃を想定していない都市構想であり、災害が蔓延るこの世界からすれば余りにも不適合極まりないものだった。


「何でこんな町にしてるの?。災害獣が来たら壊滅することが目に見えているでしょうに」

「その理由は簡単なことですよ。ここには災害獣がいるからです」


ルミナの疑問にデルスが答える。

災害獣がいるから災害獣が現れない。それはルーナの知識にある災害獣は災害獣を呼ぶということに反している。

ルーナの知識は間違っていない。災害獣は災害獣を呼ぶ。故に災害獣に遭遇したら複数の災害に襲われるかもしれないが故に逃げなければならない。しかしこれには例外があったのだ。


それは災害獣ですら恐れる災害獣の存在。ドワルガ王国という災害獣に匹敵する人材が複数いる国のように、一体の災害獣が襲ったとしても何も得られずに消滅させられることだけは獣としての本能が避けるのだ。


それほどの存在がこの町にいるという事実。ルミナもゴクリと唾を呑む。


「敵対はしていないから大丈夫ですよ。ワグム王曰く、あいつは恋愛好きの出歯亀だから基本的には敵にならないということでした」

「何それ。よほど物好きな災害獣なのね」

「知性があるやつはだいたいそんなもの。町長もそうだった」


ミグアの言葉に確かにと納得してしまう。キグンマイマイは知性を持っていたけど、あたしの全てを取り込もうとするなんて成功するはずもないことをやってたし。

あたしですらガイードとルーナの完全支配なんて無理なのだ。他人にできるはずもない……ということが分からなかったのか。それなら無知故の行動だったとも言える。


「ガイードは元々知性あんまりなかったし参考にならな」

「聞こえてるぞ?」


あたしの声を遮るようにバングルから不機嫌な声が聞こえた。本人がいるのに失言もいいところだった。

でも声色は怒ってるけれど言うほどでもないみたいだ。尻尾を実体化してペシペシと叩くこともできるだろうに、その様子がない。


「はぁ……我に知性があまりなかったのは事実だ。巨体の制御だけで手一杯であり、思考に回すことなどできなかったのでな。だが身体が小さくなれば話は別だ」

「あたしと戦う前とは違うってこと?」

「うむ。それに……かつての我は知性などあっても意味が無いものだったが故に放棄していたに過ぎない。必要になったのであれば取得するだけのこと」


災害獣に知性があるものとないものがいる。その理由の一端がこんなところで知れるとは思わなかった。思わぬ収穫だ。

それはそれとしてガイードには魂経由で謝っておく。あたしの一人なのに貶すのは悪い。


(ごめんね、ガイード)

(構わん。それよりこの町にいる災害獣とやらを聞け)


ガイードの言うことも最もだ。話を続けるとしよう。魂経由の会話を終わらせて現実に目を向ける。


「デルス、もしかしてその恋愛好きな災害獣ってのが王様が言ってた赤い羽根のこと?」

「ええ、話せば分かる知性を持つ災害獣なのですが……暴れたら手が負えません」


デルスの背がぶるっと震えたのを見逃さない。身に覚えがあれば恐ろしいことがよく分かっているというところだろう。

つまりは、戦ったことがあるということだ。そんなのにあたしを会わせようとしていることも信じられないけど、ドワルガ王国が戦いたくないと判断したということも信じられない。


「戦ったことがあるの?」

「戦い……ですらありませんが、一度だけ。それも私が高位軍人成り立ての頃に。本気のワグム王とシュディーア王妃の二人と戦い、引き分けていました。私は余波で死にかけてましたね」


成り立ての高位軍人とはいえそこらの竜クラスよりか強いはず。ガイードが災害獣だった頃よりかはかなり弱いが、それでも一人で村一つくらいは余裕で護り切れるほどの戦力だ。

それが余波で死にかける?キグンマイマイと戦った時の魔法の余波でも全員軽傷になるかならないか程度だった彼らが?


信じられないモノを見る目をしているルミナに、更に信じられない情報がガイードから届いた。


「ルミナ、危険対処のために周囲の探知をしたのだが、災害獣クラスの力を持つ者が複数いる。途轍もないの……これが赤い羽根だな。それ以外にも災害獣が何体かいるぞ」


都市の中に、都市を破壊できる力を持つ者が複数いるという情報。それは想像以上に現実が絶望的な現状であると言っていた。


「ガイード殿。本当か?」

「嘘を言って何になる。一体一体がデルスと同等かそれ以上だな。だが我を纏ったルミナに勝てる者はいない。ルミナは安心していいぞ」

「ガイード、流石に無視する訳にはいかないわ。とはいえ、今も都市が壊れていないということは……敵対する気はないか、牽制し合っているといったところ?」

「ディーエ、詳細感知は?」


いつの間にか最後尾にいたディーエに視線を送るミグア。旅をしている中でディーエが周囲に危険がないか感知していたのだが、ミグアも気づいていたらしい。


「バレてたか」

「当然。私だけじゃなくてルミナも知ってる。早く答える」

「それじゃあ全員分かってたってことか。隠せるならと試してたんだが、ダメだったみたいだな。それで感知だが、確かにガイードさんの言う通りだ」

「それ以上は?」

「町の中には二体。外に三体か?どこまで感知を広げるかにもよるが……そんなところだ」


5体に赤い羽根を含めたとしてもそれ以外、4体は災害獣クラスの力の持ち主がいる。今から都市内に入るルミナ達からすれば、安全地帯だと思っていた場所が一転して危険地帯となっていた。


だからといって街に入らない訳にはいかない。如何せん情報が足りなさすぎるし、何よりそれだけの力の持ち主が敵対した時のカウンターにならないといけないのだから。


全員が楽観的な顔つきから引き締まったそれに変わる。今から行く場所の危険性を正しく理解したがために。


「さて、行きましょうか」


虎穴に入らずんば虎子を得ず。断片的なあたしの記憶にはそんな言葉がある。言葉があるのは分かったがそれ以上の記憶がなく理解するのはできなかった。けれどあたしの直感が、こんなときに使う言葉なのだと言っていた。

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