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ドワルガ王国とルーナ

ルーナの正体がようやく出ます。


まぁこれだけではないですが、その辺は小出しにしてます。


昔何をやったかは設定にでも書きますかね

ふわりと翼を翻し難なく着地したルーナと、ルーナにお姫様されている気絶したミグア。そしてそこには大勢のドワーフ達の姿があった。


「……ルーナ、でいいのか?」


ワグムが黒い衣服をしたルーナに問い掛ける。魔力こそ同じではあるが、余りにも変わり過ぎている外見は本人であるかどうかの判断を誤らせかねないと思うには十分過ぎた。


「久しぶりねワグム。それにシュディーアも」


ミグアを地面にそっと降ろし、ルーナは二人に声を掛ける。かつて二人と共にドワルガ王国にいたルーナには郷愁に駆られる感覚があった。


「やはりあなたでしたか。いえまぁ……予言がありましたから知ってはいましたけど」


シュディーアがワグムの横に立つ。ルーナに今問い掛けるのは二人だけしかいてはいけないと言うような立ち位置だ。


「予言?。……誰から?」


ルーナのその反応にワグムとシュディーアは目を見開き、眉をひそませた。そんな反応をすること自体が理解できないと言うようだ。

それも当然。予言とは神様からの言葉を意味するものであり、ドワーフの王たるワグムや王妃シュディーアが言葉にする以上、ドワーフの神様からの言葉である以外にあり得ない。


「何?。ルーナお前……いや、そうか。シュディーア、これは我々に干渉するなということで間違いないな」

「ええ、特に私たち二人が干渉してはいけませんね」


ワグムとシュディーアはお互いの顔を見合わせ、意見の共有をする。そこに食い違いはなく、長年のパートナーたる信頼感を見せていた。


「随分と含みがあるようね、構わないけど。こちらは身体が既に限界に近いわ……捕まえるかしら?」


首を横に振るワグムとシュディーア。二人は目を閉じており、態度がそんなことはないと断言していた。

ルーナは災害の研究の果てに、かつてドワーフ国に大災害を引き起こした大罪人だ。だが行っていたことはそれだけではない。


「まさか、冗談はよせ。お前は大罪人でもあるが、幾度となく災害からドワーフを救った英雄でもある。それも複数の災害から、だ。それにお前……ルーナだが、違うな?」


一度ルーナは視線を地面に逸らし、溜息を一つつく。そしてワグムと再び目線を合わせた。


「……ええ。ルミナ、そう呼んで頂戴。この子はミグア、マイマイであってマイマイではない存在よ。敵ではないしマイマイを増殖もしないから安心しなさい」


ほう、とワグムは思わず口に出す。名前を変えたということは以前のルーナではないということ。ドワーフの中でルーナという名前がどれだけ影響力を持っているのか知っていれば、理解できないこともない。だがこれまでの繋がりを捨てるということも意味している。だからこそワグムは隠していたが驚愕もしていた。


さらにミグアという存在。マイマイは幼生体という生態を持つ種族からすれば皆殺しにしなければならない対象だ。当然ドワーフも幼児という段階を経るのでマイマイは殺意の対象となる。それを殺すなと言う。言葉にしたのがルーナでなければ理解の外だと言ってすぐに殺していたことだろう。


ワグムとシュディーアはコクリと頷く。それが理解できたと示すために。


「ルミナならルーナとは別人だな。キグンマイマイを倒してくれた恩人の一人、いや二人か。それ以上でも以下でもない。ミグアもお前がそう言うなら問題ないということだろう」

「助かるわ、一度身体を休めたかったところだし。それに……ルミナに少し教えてあげて」


ワグムはお前に教えることなどないだろうと呆れるも、その言い方がおかしいと気づく。それはまるでルーナ自身が別物になったのだというような言い方だ。

まさかと、あのルーナがと、あり得ないと、そう思いながらもワグムは疑問を口に出す。


「……その身体」


ワグムの言葉を遮り首を横にふるルーナ。その顔は悲壮感が混じっており、言いたくないと目で訴えていた。


「私はいい。この子はまだ生まれたてもいいところ。それでもキグンマイマイの中核と互角程の強さまですぐに到達したわ。これならあと少しの技術、方針さえあれば災害と遭遇しても成長の糧にできるでしょう」

「はぁ……自己犠牲は悪い癖だぞ」


溜息をつくワグムに何言ってるのかと呆れた顔をルーナは見せた。ルーナはワグムやシュディーアの出自を知っている。二人の存在がドワーフの種族にとっての自己犠牲みたいなものだと分かっているのだ。


「あら、悪いかしら?。というかあなたが言うの?。ドワーフの黒い歴史と輝かしい歴史の掛け算みたいなあなたが?」

「そこまでにしてもらえませんか?」


責められてうろたえかけていたワグムにシュディーアが助け舟を出した。話していたワグム同様にシュディーアも対等な言い方だ。


「シュディーア、あなたも変わらないわね」

「ええ。かく言うあなたも。私の尊敬する英雄ルーナ様の姿から変わってません。大罪人ルーナの姿からも、ですが」


ジッと見つめるシュディーアにルーナは困ったような顔をする。ルーナはルミナとして性格も身体も変わっており、姿も魔物を背中に携えているようなものになっており以前とは別物だ。変わっていないと言われても反応に困るのは当然だ。


「……身体は変わってるわよ?」

「本質は全く変わっていないでしょう?。知識、未知を欲し本能的に動く。その先に災害が見えたら道の邪魔だと蹴飛ばす。……変わりましたか?」


ジトっとした目をしたシュディーアに、サッと目を逸らすルーナ。素は変わっていないと言われ納得してしまったからの行為だった。


「とはいえ今のあなたは神様の予言で福音と呼ばれています。……あるのですよね?、ゼル」

「当然あるけど?」


指輪になっていたゼルを展開し、大槌形態にして肩に担ぐ。おおっという声がドワーフの軍人たちから上がった。それらは憧れの姿を目にした者たちの声だった。


「それを担いでる姿を見せれば十分です。それだけで民は誰が来たのか分かる」

「……こんな感じ?。記録に誰か撮ったかしら」


キリっとした顔をしたルーナをシュディーアがニコリとした顔をして見、その後くるりと後ろを見て後方でドワーフの一部隊が手を上げたのを視認する。


「はい、ありがとうございます」

「シュディーアもホントに変わらな……そろそろ限界。ああ、ガイードが起きるわね、後は任せたわ」


既に限界を迎えていたルーナはガクリと膝を折る。目を閉じて気絶したかのように見えたが、足に力が入っていない訳ではなかった。


そしてワグムたちドワーフはガイードという名前は初耳だった。真っ先にそれを疑問に出したのはワグムだった。


「ガイード?」

「我の名を呼んだか?」


ルーナの方から声が届くと同時に戦闘部隊が臨戦態勢に入る。だがワグムが軽く手を上げ、その必要はないと示す。

さらにはシュディーアの瞳が声の出所を察知していた。目を閉じたまま立ち上がるルミナの、左腕についているバングルへとその視線は向けられていた。


「止めろ」

「纏っている衣服、それに翼や尻尾ですね?。そして本体は……そこのバングル」

「如何にも。我は災竜黒鎧ガイード、ルミナと共に在るモノよ。身体を動かす程度の魔力しかないが、ルミナをどうするつもりだ?」


ガイードの自己紹介にシュディーアがゴクリと唾をのむ。

シュディーアはワグムより身体能力が低いが、魔力探知や索敵、大規模魔術といった方向はワグムより上だ。だからこそガイードの恐ろしいまでの魔力が理解できてしまう。


冷や汗を流すシュディーアを見ずに、どんな表情をしているのか察するワグムがガイードの疑問に回答する。


「何もしない」

「……そうか、話していたのはルーナだな?。ならば身体を休めるところまで案内を頼みたい」


ガイードの言葉からルーナとガイードは信頼関係が十分にある者同士だと認識するドワーフ。ワグムは対等の関係であると推測した。

だがその関係性よりも今視ている魔力が示している事実の方が彼らには重要だった。


「当然だ。ガイードとやら、あなたがキグンマイマイの討伐に最も貢献した者だろう?」

「ルーナのよるキグンマイマイの体内を削る魔法に、我らがやつを消滅させた攻撃を耐え切った。傷跡がそう言っていますね。ゼル並み……いえ、意志があることを考えるとそれ以上の性能と言ってもいいかもしれませんね」


二人の言葉にガイードはふんっと鼻を鳴らす。褒められたのは機嫌は悪くなかったが、自身と比較されているものが比較するに相応しくないモノだった。審美眼が間違えている、というのは見られる側からは侮辱に近しいのだ。


「ゼルと一緒にするな。あれは魔法は魔法でも別物だ。我の方が上でこそあるものの、本来の作り方を経ていたらその性能はひっくり返るであろう」


その言葉にコクリと頷くシュディーア。さっき見たゼルと、これまで見たことのあるゼルが見た目だけが同じだったのが気になっていたのだ。内包する魔力が桁違いであり、せいぜい災害を3体程度を相手取るくらいだと見抜いていた。


シュディーアの目算では、本来のゼルは10体は相手取れる性能を持っていた。


「本来のゼル。ドワルガ王国に封印されているモノですね。昔ルーナが使っているのを見たことありますが、先ほど見たゼルとは輝きがまるで違った。なるほど、それが原因ですか……」


目を閉じて納得するシュディーア。それを見てワグムはもしやとガイードへ疑問をぶつける。あり得ないことだと分かっていても、聞かずにはいられない。ドワーフの(さが)だった。


「ガイードとやら、本来の作り方を知っているのか?」

「知らん。だがあれを作った時、我はルーナの目の前にいた。だから……その時既にルーナはルミナに近かったことは知っておる」


ガイードはどうでも良さそうに知っていることを話した。ガイードはルミナが無事でいることだけが信念と成っている。ゼルの作り方など知られたとしても、ルミナが危険に晒されるようなことはないという判断だった。

もしそれがルミナを危険に晒すなら話は変わるが、ゼルはそんな簡単に造れるような代物ではないということもガイードは知っている。だから話しても価値はないと踏んだのだ。


「純粋なルーナなら、ということか」

「さてな。……ところで案内はまだか?、走るのは不可能程度には消耗しておる。早く休ませてやりたいのだが」

「おおっと、すまなんだ。ジナガオ!、デルス!」

「「はっ」」


ワグムの後ろに控えていた二人が声を上げてワグムたちの前へと出る。ルミナの脇を支えるように持ち上げる。意識のないルミナを無断で移動させるならばガイードやゼルの超重量がかかるが、ルミナである誰かの意志さえあれば問題にはならない。

今回で言えばガイードがいるため問題にはならなかった。


「支えて連れて行ってやれ。場所は王城裏手にある小屋だ」

「……いいのですか?」


驚く二人にワグムはそれが当然だと態度で示す。


「元々ルーナの私室だ。魔力も満ち足りてるから回復も早かろうよ。全軍も帰還させよ。我とシュディーアは少しだけ話すことがある」

「「はっ」」


ドワーフの高位軍人が都市へと帰還していく。元々そう遠くはない距離だ、傷だらけで疲弊している彼らであっても十数分もあれば戻っていることだろう。

移動し始めた彼らを余所に、ワグムとシュディーアは動かずに佇む。まるで戦いの跡を見届けるかのように。


だが彼らの想いはそこにはなかった。


「神様と最も縁のあるドワーフが神様を忘れると思うか?」

「いいえ。つまりはこれも神様の思し召しというやつでしょう。我々が言うところでの、計画通りというものです」


神様と謁見したことさえある大英雄ルーナ。その存在が神を忘れるなどという事実をドワーフの頂点に君臨する二人は疑問に思ったのだった。


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