千日手と活路
リングフィットアドベンチャー買ってやってたら更新忘れてた
(ゼルの中にお前がいるだと?)
「ええ。この魔望槌ゼルは私自身が創り、そして魂すら捧げたモノ。であればそこに私自身の魂の繋がりを載せていたとしてもおかしくはないでしょう?」
(そう……なのか?)
「まぁあなたは知らないでしょうけど、そうなの。で、これと同じことをあなたにもできるわ」
(ほう?)
「だから、協力してくれないかしら?」
トカゲとの会話は一瞬もいいところだった。
マイマイたちが認識を加速させ会話できるのと同様に、ルーナとトカゲのテレパシーでの会話もまた認識を加速させて話すことができる。
マイマイたちはそれを分かってしまうが故に、お前にできることは私にもできると挑発されたと受け取る他なかった。
「独り言はそれくらいにするべきだな」
空に浮かんでいた町長が分裂してゆく。粘液生物のように千切れるのではなく、まるで分身していくように。そして代わりに周りにいたマイマイたちが全て空へ溶けていく。
その光景はまるで町に住んでいた人たちは全て町長になっていくようだ。ルミナ一人でも対抗できなかったマイマイが無数に増え、先ほどルーナに落とされた槍を構えている。
まさしく災害。ドワーフの高位軍人と同格程度には戦闘可能の戦力が、無数に存在する空間に落とされるなど、遭遇した者からすれば生きる希望は無きに等しくなる。
「邪魔」
だがルーナはそんなことどうでもいい、うっとおしいという顔だ。追い払うように手を払い、こっちにくるなと身体で示す。
ルーナが瞬きを一つした瞬間、転移でもしたかのように四方八方から町長が槍を振るう。尻尾に触れないように位置取りしており、それがどれだけ危険なものなのか理解しているようだった。
(甘い)
ルーナに巻きつくように尻尾が伸びる。空へマイマイを追尾攻撃していたため転移による襲撃に間に合わないが、その速度はその一瞬の襲撃さえ乗り越えれば十分に間に合うほどだ。
そしてルーナとトカゲなら一瞬程度、問題にすらならない。
「鉄塊化。さっきの一撃から学ばないのかしら?」
「……っ!?」
ルーナは動く素振りすら見せなかった。そして振るわれた無数の槍は、その悉くが弾かれた。鋼鉄にも等しい鉄塊に木を削った程度の槍をぶつけたようなものであり、ルーナの皮膚どころか皮膚から放出されている極微小の魔力に弾かれたのだった。
だがそれは本来ルーナだったらあり得ない選択肢の魔術。膨大な魔力にものをいわせて魔術を発動し、自らの身体強度を高めて全ての攻撃を受けきる。さながらあの災害と同じ対応である。
さらにルーナはたったそれだけの魔術に、高めるのは身体強度だけでなく皮膚から放出されている極微少の魔力も含めるように魔術の範囲を変更させた。
それは文字通りルーナが災害―ガイカルドの力を操っているようだった。
弾かれ、ほんの少し体勢を崩した町長たち。そこへ空から戻ってきた尻尾の球体が直撃する。弐撃目のために襲った町長の後ろにいた町長たちは尻尾が戻ってきているのを察知していたからか、すぐさま空へ浮かんで逃げていた。
「くっ」
「無様ね。災害足る攻撃が全て通用しないなんて災害獣の面汚しもいいところ。違わないかしら?」
ルーナはさっきから変わらず挑発する。マイマイから手を出しても攻撃はほぼ完全に無効化されている現状、無力感を味わわせるために挑発しておくのは大事なことだった。
「きさまぁぁっ!!」
「マイマイの集合体たる町長たち、あんただけに言ってるわけじゃない。分かっているでしょう?、キグンマイマイさん?」
町長たちが武器を構えて転移しようとしたがルーナの発言に足が止まる。いや、止められたのかもしれない。そんなことをしても無駄だと、直後に空から聞こえた声がそう言ったようだった。
「……なぜ分かった」
やまびこのように町に轟く音。町……いや、マイマイの腹の中全域に響く声ということは当然、その腹の持ち主の声である他ない。すなわち、キグンマイマイそのものの声だ。
「私の知識を甘く見ないことね。それに……私は別のキグンマイマイの討伐を見たことがある。それだけでは不満かしら?」
「……通りで」
「ええ、あんたから受けている攻撃がほぼ通用していないことが分かっているようね。これは私だけの手柄じゃないけれど」
ルーナの目が優しいものに変わる。ルミナがミグアに向けた視線にも似たそれであり、誰に向けたものなのか一目瞭然だった。
町長は訝しむようにルーナの様子を見ている。明らかに隙だらけであり、先ほどの防御魔術さえなければ生命を停止させるには十分過ぎる一撃を加えるのは可能だ。
「よせ」
防御魔術を突破するため、魔力を集中させていた町長の首がガクンと落ち、動かなくなる。たった一言でキグンマイマイの支配に落ちていた。いや、初めから落ちていたのだ。操っていた人形を動かさなくなったと言った方が正しい。
「……ルミナ、とやらだな。忌々しいほどの魔力操作の上達速度。まさか我の魔力吸収速度を上回るとは」
この町に来るまでルミナが鍛えていた魔力操作の技術、それこそがマイマイの腹の中にいてもルミナが平気でいられた理由だ。
災害獣キグンマイマイは自らの体内を風景に隠し、体内に入ってきた者の魔力を奪い、自らの魔力に置換する。では魔力を奪うというのはどの程度なのか?。
それは当人の魔力操作技能と直結している。魔力操作能力が高ければ魔力を奪う量は少なくなり、逆に低ければすぐさまマイマイになる。
ルミナはキグンマイマイを知っていたが、ここでそうであることは知らなかった。だが無意識なのか、はたまた直感的になのか、まるでここがマイマイの中であると分かっているように対策していたのだ。
すなわち、魔力操作技能が余りに低いためにすぐさま上達させ、自らの魔力回復速度さえも上昇させマイマイ化を遅らせていた。一日魔力収奪を耐えれば二日以上は問題なく過ごせるほどの速度で。
なぜ一日目にルミナがミグアに勝てなかったと判断したのか。そして二日目にミグアよりも格上の町長に互角程度に戦えたのか。戦力差が小さいものに負け、大きいものに互角となっていたことの原因。これこそがその全てだった。
「ええ、私も誇らしいわ。そして……今あんたが吸収できている私の魔力量は果たしてどれくらいかしらね?」
ルーナが問い掛けた瞬間、動かなかったはずの町長たちがルーナの目の前に現れ、各々の武器を振るった。
「キグンマイマイ様に逆らうこと自体死に値する」
「そうくるしかないわよね」
だがルーナは尻尾が巻き付いている上に鉄塊化がかかっている。町長たちの猛攻は魔力を集中させ威力を高めた一撃に全力を賭したようなものだった。が、先ほどと変わらず町長たちの攻撃は全て弾かれる。
そして巻き付いていた尻尾が横一線に振るわれ、町長たちの上半身と下半身が分かれていく。しかし町長たちの身体は液体であり、致命傷とはならない。
「ふん。無駄だ」
「でしょうね」
ルーナはそうなるのは当然だと分かっている、だからこそ災害の腹の中にいるにもかかわらず焦りは全くない。
現状を一つ一つ確かめるように口にだすルーナ。そこには笑みが浮かんでいた。
「キグンマイマイ本体の攻撃は敵対者の魔力を吸収・置換することだけれど、その力は当人の魔力操作能力に依存する。そして魔力操作能力はルミナが育て、私がさらに上乗せされている今、ほぼ意味が無いと言ってもいい」
キグンマイマイからの声はない。それが正しいのだと沈黙しているのか、それとも別の何かを待っているのか分からない。
「だから物理的に攻撃するしかないけれど、それはルミナとなった災害が許さない」
(当然だな)
トカゲからの声もルーナに届く。尻尾が空にあったときいなくなっていたが、巻き付いてからはルーナの肩に乗っていた。球体がある場所にいるように動いており、その本体がどこにあるのかを示しているようだ。
「あなたたちからすれば詰みもいいところだけれど、私たちからも手が出せない。ええ、間違いではないわ」
ルーナは目を閉じ深呼吸を一つする。そしてゆっくりと目を開き、覚悟の決めた顔になる。
これから行うことこそが未来のルミナに繋ぐために今できる最大限のことだ。何一つ間違えるわけにはいかない。
けれどゼルを作った時とは違う。代償として自らが消えるのではないし、何より一人ではない。
あの子のために、私は宣言する。
「だから創りましょう。災害と共に在るあたしの力を」
握るゼルに、紅い魔力が流れた。
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