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止まらない高笑い

英訳してみたやつの原文って見たいもんかね?


1章の英訳してるけど、序盤がかなーり展開変わってる。具体的には3話で10話までを省略した。

ルミナは倒れ、町長宅へと連れて行かれた。

日が暮れ、徐々に沈んでいく頃、町長宅の二階にルミナは囚われていた。宙に浮かぶ水球の中に水死体のようにぷかぷかと沈んでいる。たまに口からゴポゴポと空気の泡が流れ、まるで実験生物のような扱いだ。

町長はその水球の前に立ち、マイマイにしか見えない何かを見つめている。


「ふぅむ……やはり通常のドワーフではない。ドワーフの強い個体よりも遥かに頑強。何より……異常な魔力操作能力。腹の中にまでやってきて二日以上も自らを保っていたなど信じられん」

「ルミナは私と同等以上の強さだった。ある意味当然。それに二日どころかずっと居続けても大丈夫そうだった」


いつの間にかミグアが町長の後ろのソファに座っていた。ふらついていた身体は快復に至り、気配を消すのも町長相手にさえ問題なく行われていた。

気づいていなかった町長だが、驚きは表に出さず気づいていたように声を出す。


「ミグア。身体はもう無事なのか?」

「大丈夫。でも、戦うのは当分無理かも。毒を喰らって血肉に変えてる。この毒の対処は、私でないと無理」

「そうか……待て、毒だと?。あれはグレイオーガの肉だろう?。私には骨を投げつけてきた、そして接触しているが毒はなかったぞ」

「あれの中身が違うだけ。ルミナのバングルにはグレイオーガだけが入っていたわけじゃない」


ふむふむと頷く町長と、変わらない無表情ながらもどこか鋭い目つきをしているミグア。向けている態度を両者が分かっていて、なお変わらないという状況はマイマイであっても上下関係はないことを示していた。


「何の肉だったか分からない。けど、異様な魔力だった。あなたにはあげない」

「それもいいだろう。お前は成体に至った中でも自我を保っている…いずれマイマイの中でも長に届くやもしれぬ逸材。何でも経験しておくことが重要だ」

「ん……。……それで、ルミナをどうするの?」


ピクリと眉をひそませミグアの方へと向き直る町長。そこには何を言っているんだという呆れの表情が浮かんでいた。


「決まっているだろう。マイマイに変質させる。時間はかかるだろうが……これほどの器だ。寄せ集めの私よりも遥かにいい役割を担える。代わってもらっても問題ないだろう」

「ドワーフはハーフとして怪しい」

「む、……確かにそうだ。用心棒として置いておくのが妥当か」

「それがいい」


ミグアは変わらずルミナの方を見続けている。その瞳の奥には業火のような怒りの炎が燃え盛っているが、ミグア以外は誰も気づくことはない。なんならミグア本人すらその感情が分かっていなかった。


町長はミグアから目を逸らさない。何の肉を食べたのかが分からないなどマイマイにはそうそう言えない発言だからだ。


マイマイとはその他の生物の幼生体に憑りつき、幼生体の成長と共に大きくなる。そしてその種族を理解し、種族の数体を喰らうという生態をしている。その本体は水のような身体をしており、吸収する能力は非常に高い。

だからこそ何を食べたか分からないなど、簡単に言葉に出すことはないのだ。


当然、気になるがために調べようとするのは当然だった。


「止めて」


ミグアがまさぐられるような視線に手の平を視線を遮るようにかざして拒絶の意志を示す。魔力や仕草にさえその意志は込められており、同種のマイマイであるがゆえに町長はうろたえる。


ミグアから目を逸らし、再び町長はルミナの方へ身体を向ける。ルミナが浮かぶ水球へと手をかざし、水球内にある魔力を操作する。ルミナの細胞一つ一つを調べ上げるかのように。


「ふふふ……この身体と同等などそうそうない身体だ。二つも十分過ぎる身体が手に入るなど笑いが止まらんな」


町長の言葉に反応したのか、ドクンとミグアの鼓動が速くなる。それはルミナからもらった肉を喰らった時とは違う。あの時は魔力が暴れ回るように身体を駆けまわったが、今回は自分自身の魔力が沸騰するようにただ熱が高まっている。


「っ……。少し部屋に戻る」

「やはり無理していたようだな?。無理はダメだ。例え我々がマイマイの身体と言えど、万全でなければ突発的な戦いには対応できんからな」


肉を食べた時にふらふらになりながら歩いた経験から、並行感覚を強化して部屋へと戻るミグア。これ以上あの部屋に居たらミグア自身が何か別者にとってかわるような感覚さえした。それを町長は知らない、知ることはおそらくできないとミグアは思考する。


「あの時の契約?。……いや、合ってるけど違う。あたし…ううん、私に何が?」


ミグアが部屋を出て行ったと同時にルミナの身体の調査をさらに加速して進める町長。その顔は笑いに染められており、欲しかったものを手に入れた子供のようにさえ見えた。


「ふははははは……こいつはドワーフだけではない!。これはドワーフと魔物のキメラだ!。これほど、これほど我々が欲しかった存在はいない!」


顔を半分かたつむりに変えるほどに高笑いが止まらない。それもそのはずであり、マイマイの特徴とルミナの特徴は真逆のものだからだ。


マイマイは他者を幼生の頃から侵略し、いずれマイマイと変える。ルミナは既に作り上げられた個であり、幼生という概念は最早存在しない。故に真逆の存在とも言え、ルミナはその侵略対象足り得ない。

しかしマイマイの狙いはさらに細かく、幼生体というよりも魔力操作が未熟なものと言える。この点でルミナは範囲に収まっており、本来なら狙えない存在が狙えるという現象が起きたのだ。


そしてマイマイは一度その生態をマイマイへ変質できれば、次からはその生態が全てマイマイに変質可能となる特徴を持つ。


つまりは五大種族の全年齢が全てマイマイの侵略対象にできるようになるのだ。


故に町長は高笑いが止まらない。技術が欲しいなどというレベルではない。マイマイという種族そのものが生態系の一つどころか二つ上の存在になる。それが確定した未来となっている。そしてその一番上にいるのは自分自身なのだと分かってしまったから。


その高笑いは、一晩中続いた。


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