パーティー離脱
三章プロットがうまく回らん…どうすっべ
「それじゃあ俺たちは明後日からの準備に行く。ルミナはどうするんだ?」
「ん~、いろいろ知りたいことがあるからまずは食糧売ってるところからかな」
バイラジを除く4人とルミナは宿を出て道を歩く。行く先は町の中心、そこまでがダイダク達とルミナが一緒にいる時間だ。
市場があればそこに行く予定なのは朝食で食べていたパンが気になったから。材料が安定的に供給されてないとまず出てこないはずであり、そうなると安定的に材料が手に入るのか?というところが問題になる。五大種族でもない者たちが安定的に食糧を手に入れられるなんて……興味もなかったから知らないことだった。
そしてパンの材料は市場があればそこにあるはず。もし無かったとしてもパンはあるだろう。そこから眼に魔力を集中させて追跡でもやってみれば材料がどこにあるのか追いかけられる。
あれが本当にあたしの知っているパンであれば、の話だが。
「そういえばバイラジは?」
「さぁ?。朝早くに俺たちが面倒屋処に行った時、一緒に宿を出たがそれっきりだ」
「ふーん…。商人だっけ?、それなら行った先にいるかもね」
「いや、多分町長のところだろうな。貴重な魔石が手に入ったとか宣伝するつもりだろう」
「それってあたしがやったやつ?。ってことはもしかしてあたしに人が寄ってくる?」
それは避けたい。人に追っかけられて行動するのなんて厄介極まりない。ドワーフの国から出る時は軍人共が追っかけてくるからとんでもなくひどかった。それと比べるのは流石にあんまりだが、追手という意味では同じことだ。
あれ、あたしはドワーフの国行ったことないはず。何でこんな……いや、行ったことある。あそこで色んな研究をしてたんだから当然だ。
「逆に護衛とかされるかもしれないわ。貴重な人材なんだから」
頭を抱えるルミナを見たファイネが助けを出した。そこにあるのは宿では縋りつくエシータに向けられていた侮蔑の態度とは逆のそれだった。
「それならそれで面倒……町を出るの早めようかな?」
それも一つの手だ。居心地の悪い場所にいつまでもいるなんて馬鹿か愚か者のやることだ。それならさっさと諦めつけて次のところに行く方がまだマシだろう。
「好きにすればいい。そこからは俺たちが口出す領域の話じゃない」
「むしろ厄介事になったりしたら嫌だから、そういう意味だとルミナからは離れたいかなー」
「エシータは正直ねっ!」
「あだっ!?」
分かりやすく嫌だというエシータには頭に拳骨を喰らわせてあげた。すぐ別れるからそんなに怒る必要もないとは思ったが、何故か反射的にそうしてしまった。そんなことをするような相手がいた記憶がないけれど……雰囲気に呑まれたのだろうか?
「痛い……。そんなに怒ること?」
「えーと、いや、身体が勝手に」
「ははは。まぁエシータが素直過ぎるからだ。本心を隠した言い方ってのを考えろよ」
「そんなの私らしくないし」
そんなことを話していたらいつの間にか町の中心まで到着していた。南の方からやってきたが、既に西の方角で目に見える範囲に市場があり、目的地が分かりやすくて助かる。
「それじゃあ俺たちはこっちの方なんでな。また会える時があったらまた手を貸そう」
「ええ、助かったわ。ダイダク達がいないと町に入れなかっただろうし。あたしもその時には協力しましょう。それではまた」
「ああ。またな」
4人が東の方へと歩いていく。あたしが選び、意図的に助けられたパーティーだが中々悪くない面子だった。一度くらいなら武器を作ってもいいくらいには気に入ったが、それはずっと一緒にいられればの話だ。
「亜人だから定住は無理。……所詮は一時的なものだからここもいずれは無くなるのでしょう。彼らも同じこと、それならこれ以上慣れ合う意味はないか」
彼らとはここまでだと区切りをつける。これ以上付き合うことはないのだから頭の中から存在ごと取り除く。
それだけの扱いをするのはこの世界の残酷さを知っているからだ。たった一瞬の躊躇は自らの命を危険に晒す。どんな原因だろうと排除しておかなければならない。
「さーてと、それじゃあまずは……あ」
ルミナは市場の方へ向かおうとしたが、ある現実に気づく。それはダイダク達がいる間に知っておかないといけなかったことだった。
「通貨とかどうなってるの……?」
と口に出したところでその疑問の答えに視界に広がる光景がフォローを入れた。それはパンのような作られたあとの食料が見える範囲の市場にはあったが、粉のようなものはないという光景である。
「はぁ……よかった。見た感じまでは市場には材料は回ってないみたいだし問題ないか」
それならお金を使うような交渉事は行う必要がないと判断する。だが市場に興味がないと言えば嘘になる。
「時間は十分にあるし、市場を見て回ってからでも製造場探しは遅くないか」
まずは市場に行くと決めるルミナ。何食わぬ顔をしながら魔力で五感を強化し、周囲からの視線があるか様子を見る。そして何もないことを確認して歩き出した。
ダイダク達が言っていたバイラジのことが気になるから念のための警戒だ。だがそれも今の段階で無いということはあたしの行動に阻害はないと見ていい。
ふんふんと上機嫌にルミナは西の方へと歩き出す。警戒も何もない好奇心旺盛な少女のような雰囲気が漂っていた。
そしてルミナの背後十数mのところに、気配を消してルミナの姿を見続けるミグアの姿があった。
「分か、れた、のは、好都合」
常に変わらない無表情で。そう告げた。
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