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あたしは獣じゃない

時系列バックしまーす。ルミナ旅立ちすぐでーす。


二章ストックがまだまだ足りてないから投稿ペースはこのまま。まだ10話分くらいしかないんで。


これ以外に書きたい小説が多過ぎて困ってます

ドワルガ王国に激震が走る100日前、ルミナはバウル平野を歩いていた。テアマ盆地へと道なき道を行く。

足に魔力を込め、強化した状態で一歩歩く…というより、跳ぶ。それだけで20m近くは移動しているが、それだけの魔力操作でさえ意識しなければ使えていない。


「…誰かさんは息を吸うようにやってたけど、これすごいムズい」


ルミナの習得が遅い訳ではない。強化魔術をかけて一歩歩く。それだけでも足先までの足全体に魔力を込める必要がある。足全体というのが困難であり、ふくらはぎ等一部だけができていないことなどがよくある魔術なのだ。

それをきちんと魔力を使おうと考え、歩き始めて数時間足らずで意識すればできるほどになっている。天才的な速度と言っても過言ではなかった。


だがルミナがよく分かっている比較対象が魔力操作が非常に得意としたルーナしかいないため、習得が伸び悩んでいると錯覚していた。


「それにこの草。1mは余裕であるんだけど」


バウル平野は一面草原であるが、その草の高さはルミナの肩程はある。歩き初めは掻き分けながら進んでいたが、今は跳びながら進んでいるのもこれが原因だった。

加えて地面には極小の虫が多く存在しているらしい。跳んだ先に百足がいたときは流石に驚いた。


「あの時みたいに空中蹴れれば速いんだけどなー…」


ガイカルドとの戦闘時、あたしではないあたしが空中を駆けていた。魔力燃費はその時のあたしでも分かるくらいに悪かったが、保有している魔力量がとんでもないからそこまでの問題ではないと思っていた。

だが自分で魔力を操作してみると分かる。あれ物凄い高度な魔力操作だ。


「手から魔力を少し放出してみるだけでも…ぬぬ、駄目か」


手の平を上に向けて球状の魔力を放出しようとしてみる。だがこれが非常に難しい。空中に自分自身が存在すると誤認してその自分自身の魔力の形状を変化させる、という流れのようだ。

大きいボールに乗りながら真上に鉄球を投げてキャッチしろ、というようなものだ。これより難しいことを軽々とやっていたのだから驚き過ぎて呆れにもなる。


「とりあえず足の強化だけに絞って進もう。こっちがスムーズになってからでも遅くない」


ルミナは自分で自分を納得させる。

魔力強化から魔力操作を習得していく、それは間違いではない。魔力操作の習得はドワーフの教育では必須事項であり、その教育は魔力強化から始まる。

違いは腕や手からやっていくのが基本だが、ルミナは足から始めているところだろうか。


「よっ…と。ほっ…」


一歩一歩跳び続ける。魔力効率的には無駄が多いためそれなりの消費をしているが、今のルミナはルーナにも迫る程の魔力総量を持っている。いくらルーナの一歩がルミナの十歩以上の消費量とはいえ、無意識的に回復する魔力量とは十分拮抗がとれている。どれだけ歩いても問題はなかった。

数十分が経過した頃には―


「とっ、とっ、たっ」


―そこには少しずつリズムをとるように跳びだすルミナがいた。それは魔力強化がスムーズになっていることの証拠であり、魔力の消費量も最初の半分以下まで減っていた。


「はははっ!。じゃあ次は跳ぶ足だけにしてみよっか!」


ルミナは笑い声を含みながらテンションを高めていく。ルミナは知らないことだったが、ルーナはテンションが高まれば高まる程魔力操作が精密になっていく性格だった。それがルミナにも反映されているのは魔力操作が先ほどとは比べ物にならない速度で精密になっていくことからも明らかだった。

跳ぶ片足だけ強化し、30m近く跳び、着地は跳んだ足とは逆の足を強化して着地し、そのまま跳ぶ。それを繰り返す。


「ルーラビットみたいっ!楽しっ!」


ルーラビットとはグリンラビットが足の力が強くなった個体である。数mを飛び跳ねて逃げる兎であり、風魔術による加速の比較対象としてよく使われている。その特徴はぴょんぴょんと何かのリズムでも取っているかのような動きだ。

似たようにぴょんぴょんと跳ねるルミナ。スムーズな魔力操作になってからは速度もどんどん速くなっている。テンションが上がっているルミナはその加速がスケボーのような加速をしていることには気づきもしない。さらに無意識的に足以外の肉体強度を強化していることにも気づかなかった。


「こうやって、こうして、こう!」


前へ飛び跳ねるように移動していたのは変わらないが、横向きになり側転のように跳んだり、バック転のように跳ぶ。

単純な魔力強化ならこんな真似はできない。魔力強化を着地の際に衝撃が掛かる方へより強くする必要がある。魔力操作という意味では数年の教育が終わったドワーフの子供程だろうか。

そこまで操作能力を上達するのが数時間というのは驚異的だった。


テンションが高まっていたルミナだったが、自分自身の笑い声が大きくなっていたことに気づき我に返った。


「…誰も見てないよね?」


ルミナは赤面しながら周りをキョロキョロと見渡す。幸いにも周囲に視線は感じられなかった。

よかった。ドワーフや人間に見られたら悶えていたところだ。魔力操作の練習で笑って飛び跳ねるなんてドワーフの赤子でもやらない。

興奮した魔物や動物が踊っていたと言われても文句は言えない行為だった。


「ううう…でも魔力操作は上達してるし……。結果は悪くないけど……」


動物のようにはしゃいでいたのは事実だが、結果として前より飛躍的に魔力操作は上達した。だがルミナは羞恥にまみれてまで力を求めている訳ではない。

動物の真似をすればより強い力を得られると言われて行うのか?、という話である。もちろんルミナはやりたくなかった。


「一旦落ち着こう。…腕はともかく足の魔力強化と、肉体強度の強化もできてる?」


試しに魔力を込めて肉体強度を高める。その状態で一歩跳ねるも、魔力の残滓が現れはしなかった。


「できてる……、あの時とは大違い。これなら魔力放出の方も簡単にできるでしょ!」



そう言って調子に乗ったルミナが「できない……!」と唸るのは数分後のことだった。

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