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神託

これで圭介編は終わりです


瑠美の記憶がない圭介など主人公足り得ないので当分いなくなってもらいます


次回、ルミナの一章エピローグにて一章は終わりです

「作ったものへの付与って話だったか。飾りではないんだな」

「飾るほどの余裕があればそうしよう。だが作る物の方向も神託が下りるのだ。戦いの役に立つものを、という風にな」

「なるほどな。神様は随分と饒舌らしいな」


地球の神様のイメージは人には関与してこないのが基本だ。神話的に言えば近づいてきて碌なことにならないというのがお約束だが……そちらの方がイメージ的には近いのかもしれない。

3日に一度神託が下りるってのも明らかに多過ぎるしな。人間社会の支配とか考えているラスボスって言われた方が納得だ。


「否定はせんよ。っと、とりあえずそこのベンチに降ろすぞ」


ハークスは圭介をベンチに降ろす。担いだ時の乱暴さはどこに消えたのか、まるで割れ物を扱うかのように優しく降ろしてくれた。


「神託が下りるのは夕暮れだったか?」

「ああ。だが神使が多くいると時間関係なしに降臨されることもあるからか、神託が下りる時間に大きくブレが生じることもある」

「ラネルコ神曰く、強い力のある神使が多く存在することは降臨するには悪くない場所と認識するには十分とのこと」

「気まぐれなのか人の目を気にしてるのか分からん神様だな」


だが聞けた事実からしても予想できることはある。

どう考えても神話とかで碌なことにならない方の神様だろう。こちらの世界に連れてきたのが神様の指示だってこともある。やってたゲームならラスボスなんてこともよくある話だった。

そんなことを考えていると頭がフラッとして身体が動かなくなってきた。

これはいったい?


「時間が早いが……神託が下りるぞ」


ハークスがその答えを教えてくれた。彼らはさっきと変わらない様子だ。身体に何ともないのは神使だからだろうか?。


(そこに……異世界より呼び寄せた者が……いますね……)


それは女性の声のようだった。成人した女性のような、だがどことなく子供を思わせような掴みどころのない声。姿はなく、ただ声だけが聞こえるのは、スピーカーのように全体に聞こえるのではなく、全員がイヤホンをしているような形のようだ。


「こちらに。……して何のために?」


ハークスがラネルコ神の言葉に応える。いや、応えたように見せているだけかもしれない。神様にこちらの声が聞こえているとは到底思えない。


(対抗するため。かつて人が滅びかけた戦いが迫っています)


戦いと聞いて戦争と考えてしまうのは俺が現代日本から来たからだろう。この世界はファンタジー世界のようだ。戦いとなれば現代の戦争とはまた別のものだろう。


「もしやそれは……伝承にある五大種族との戦い」


(エルフとの戦争……。彼らは災害すら操る……。力が必要です……)


ハークスとデルーゼはゴクリと喉が鳴らした。

日本にいた圭介は災害と言えば地震や火山の噴火を考えていた。だがそれだとしても操れると言われると国の滅ぶことさえ十分に予想できる。


だが圭介の知りたいことはそんなことではない。肺から全ての空気を溢すように言葉を吐き出す。


「る……み…」

「圭介さん!?」


圭介の様子がおかしいことにようやく気付いたのかデルーゼが近寄る。身体の調子が戻っていないこともあるため、心配になるのは当然ではあった。

圭介の言葉を理解したかのようにラネルコ神の神託は続く。


(一人……呼び寄せられなかった者……。……他の神に邪魔をされました)


周囲の神使たちが驚愕に身をひそめる。彼らの信仰する神でさえ自由にならないことがあることが信じられなかった。そんなことがあり得ていいのかと理解することを脳が阻んだ。


(エルフに……ドワーフ……。私の力では足りなかった……)


その神託によって集まっていた神使たちは硬直が元に戻る者と変わらず硬直しているものに二分される。

五大種族にはそれぞれ神様がいる。その力は対等とも上下があるとも分からないとされており、そのうち二柱から邪魔を受ければ不可能なこともあるだろうというのが当然の考え方だ。

だが盲信的な者ならそれさえあり得ないと考える、その違いだった。


(覚えていても辛いでしょう……。……今消してさし上げます)


「っ!?」


聞きたいことがようやく聞けたと思ったらラネルコ神の神託は余計なお世話まで招いてしまった。知っている人間が数人しかいないなら知る者がいなければいいという話なのだろう。くそ、やっぱり碌な神様ではなかったか。


少しずつ神使たちの身体が輝き出す。彼らはその輝きを見ても動揺する様子はない。まるでそれが当然かのように受け入れていた。

白い光が少しずつ強くなり教会を満たしていく。圭介の意識はそこで途絶えた。








気が付けばいつかの白い部屋にいた。


(よくやったな。これで問題はなくなった)


前の時のように頭に響く声。意識にぶつけるような気味の悪さは全く変わっていない。


「お前は!」


圭介の目に留まったのは浮かんでいる腕輪。いつの間にか圭介の腕から離れていた。

腕輪からの声に圭介は怒りに震えた。何もかも台無しにされて褒められるなど馬鹿にされている他ないからだ。


「よくやっただと!?。あの様子なら俺が瑠美を覚えていたこと自体無駄だっただろう!」


(それは違う。お前が覚えていたという事実が必要だった。それは魂に残っている。魂すら変えられた彼女とは別だ。お前は忘れただけ、消えたわけではない。実際、まだ覚えているだろう?)


「……それは」


間違いではない。瑠美のことは覚えているし、身体に異常が出ているわけでもない。


(この場所にいれば忘れない。だが現世に戻れば忘れる。これはラネルコ神の力だ、避けられない。だがラネルコ神の目から逃れることができれば思い出すことも容易だろう)

「それはつまり、人間の国から逃げろと?。現世に戻れば瑠美のことを忘れるのに?。瑠美の記憶がない俺だとどんな行動になるのか分からないぞ?」


少なくとも今記憶のある俺が記憶のない俺と同じ行動をするとは到底思えない。ましてやその記憶が俺の行動の根源たる瑠美の記憶だ。全く違う行動をしてもおかしくないだろう。


(力をつけろ。まずは災害とも渡り合える程には強くなれ。そこまでなら記憶があろうがなかろうがお前の行動は変わらん。そしてそこまで強くなれば、ラネルコ神の目から逃げるのも難しくはない上、この空間に自由に行き来できるようになっているはずだ)

「災害と渡り合う…神様も災害って言ってたな。地震とか火山の噴火とか…エネルギーの塊の概念みたいなもんだろあれ。渡り合うってどうやって」


圭介はまだ災害獣を知らない。だからこそ災害と渡り合うというイメージが全くできていなかった。

だが腕輪はその疑問に答えることはなかった。

腕輪がブレて見えるようになる。まるで少しずつノイズが混じっていくような視覚になっていく。これは……?


(今のお前の魔力量ではこれが限界か……。魔力を鍛えればいずれまた会える。その時にまた会おう、羽間圭介)


「ま、待て!他にも聞きたいことが―」


瑠美の記憶を持っていた圭介が叫んだと同時に暗転していく。



そしてしばらくの間、瑠美という存在はこの世界には存在しないモノになった。


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