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時空よ歪め 狼よ喰らえ  その3

3章が終わったら打ち切りがほぼ確定しました。打ち切り後に大量のネタバレして締めます


打ち切りにした理由は「他の小説書きたいから」です。公募予定の入れると4作品くらい後ろにスタンバってるんで

目を開く。ただそれだけの行為だというのに、恐怖の感情が溢れて止まらない。

目の前の光景、それは目の前にルーナの死体がある荒野だった。予想通り、死の螺旋からは逃れられなくなっているのが分かってしまう。

そしてもう一つ確定した事実があった。


(声が出せない。さっきので奪われた)


声が出ない。だがそれは声帯が動いてないわけではなく、口そのものがなかったためだった。

右手を口に触れる。痛みは……ないとは言えない程度だが、完治した傷口を上からつつくようなものだった。傷跡は牙で噛みつかれたような跡であり、時空を歪ませて全てを奪うことを裏付ける証拠にもなっていた。

当然左腕の感覚も存在していない。右手で触れようとしても左腕はなく、左肩に傷跡が残っているだけ。その傷をなぞるように右手で触れる。


感触を通じて現実という恐怖が心を浸してくる。これに抗ったということ自体があたしがここにいる証明そのものなのだが、その証明すらあやふやにすら感じそうになる。

あたしはあいつらからすれば餌なのだ。食えば食うほどに強くなれる餌なら、じわじわといたぶるのは最適な選択だと言える。

餌側からすればたまったものではない。


(……誰か……助けて)


ルミナはかつてと同じように助けを祈る。恐怖も何も感じていなければデジャヴが襲っていたであろう状況だが、今のルミナにはそんな余裕はありはしない。

身体はへたりと座り込む。ここがローヴルフのテリトリーで、逃げられないことは分かっている。だが死んだところで再び喰われ奪われる事実、抵抗する気力も削られるようだった。


涙が溢れ、誰かに助けを求め続ける。あたしが存在していること自体から、助けなんてものが叶わない願いだと分かっていても、今この時を変えられる何かに縋りたかった。



誰でもいい。あたしだけじゃどうしようもできない。ルーナ、ガイード、ミグア……■■(けいすけ)…誰でもいいから助けてよぉ。



泣き崩れ、涙を溢し続ける。たったそれだけの行動だけを怯えという感情が落ち着くまで続けた。時間にすれば数秒だったかもしれないし、数時間だったかもしれない。それほどに精神が負の感情に染まり切っていた。

泣き続けていたけれど、ローヴルフは襲ってこなかった。ローヴルフからすれば場所も分かっている上に襲いやすいのに来ない。


まさか、何かルール的なものがある?死の螺旋の起点となったのはどんな個体なのかは覚えていないが襲ってきたローヴルフのどれかだ。その後も最初に襲うのは一体だけであり、その後に群れで襲っていた。

そして最初に襲う一体もあたしが今いるここから何か行動を起こした時だった。なら間違いないのは最初に襲うのは一体だけということ。あとまだ不確定だけどローヴルフはあたしが動かない限り襲ってこないこと。……直感だけど、動かなくても襲ってきそうな気はする。


確か左腕を無くした時は目の前のルーナに近づいたはずだ。それがきっかけで襲ってきたんだろう。口を無くしたときは森に逃げた。

だったらここから動かなかったら?。おそらくこれも何か行動を起こしたという認定されるだろう。時空を歪ませているなら行動と認識される動きなんて分からない。

だがここから動かない選択肢を選べば餓死するしかないだろう。それほど貧弱な身体なのだから。


(運が良くて餓死か、それとも喰われるか。死に方を選べってこと?)


あんまりな二択に頭を抱えてしまう。どちらも死ぬことは確実。違いは苦しみ方くらいのものだ。

酷すぎる選択に空を見上げる。照りつける太陽……もう一つ死に方はあるみたい。


(太陽の熱で脱水症状なったら動けなくなるからそれで死ねる)


脱水症状。それに気づいてしまったがためにふらつき倒れ込む。貧弱な身体であれば当然のことだった。

そうして倒れ込んだ瞬間、右足に激痛が走った。それだけでルミナは何が起きたのか理解する。


(この程度の行動でダメ。……右足が奪われたともなれば動くこともできなくなる)


覗き込むように瑠美に顔を向けている狼が3頭。牙から流れ出る血のような液体は変わっておらず……あたしの顔に降りかかる。


(でも一つだけ分かった。最初に襲うのは一体であることは確定。その一体さえなんとかなれば抜け出せる)


ジュワッという音と共に顔が溶けていく。しかし意識はまだ消える気配はなかった。


(一体さえなんとか……足が奪われた状態で?)


思考だけになっている身体でルミナは考える。

ローヴルフは残忍な性格をしていると知っていたが、まさかそこまで考えて奪う順番を決めていたのか。一体が襲うことに成功さえすればいいのなら、やるべきはあたしから選択肢を奪うことだ。

まず腕を奪い道具を扱い戦うという選択を、次に口を奪い助けを呼ぶという選択を、そして足を奪い逃走という選択を奪った。そうすればあとは餌として喰らうだけだから。

実に効率的であり……あたしからすれば憎く賢しいことだ。憤怒とはこういう感情なのだろう。やつらを皆殺しにしたい、やつらからすべてを奪い尽くしてやりたい。


身体が貧弱であり恐怖に襲われていたとしても、憤怒に侵されたルミナにはローヴルフが単体で襲おうとしなかった。

憤怒という感情に浸された身体を食うなど、ローヴルフからすれば毒物を食うようなもの。ルミナの身体は数十頭程によって囲われていながら、数頭で同時に押さえつけるという行為が採られていた。それはローヴルフたちが駆られた恐怖という感情が故。

代わりに食い千切られていた右足には小さないざこざが起きる程に貪られていた。



顔が徐々に溶けていき、少しずつ身体の反射的反応も遅くなっていく。ルミナの意識も消え、身体だけが勝手に反応していた。

そして身体の反応がなくなる。それとほぼ同時に、彼女の頭は噛み砕かれた。

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