一年

「寒いなァ」

寒いなァ…

「昨日今日と、急に寒なったんちゃうか？」

なんでも第一級の寒波が来てるそうや…

「どうりで寒いはずや」

ほんまやなァ…

「ところでお前さんは正月どこか行ったんかいな」

いや、寝正月や…

「あかんで、たまに外出な」

めんどくさいわ。金もかかるし…

「一人でぼーっとしてる方がしんどそうや」

外出て風邪ひいたら余計しんどい…

「ほら外見てみ、雪がちらついてきたわ」

ほんまに雪や…

「ここで雪降るぐらいやから、山の方は積もっとるな」

完璧に積もっとるな…

「スキーでもしたな」

こうシャ、シャ、シャって…

「なんやスキーできるんかいな」

やったことない…

「急にやったらケガするで」

やりたいもんはやりたい…

「そらスキー場でも雪山でも行ったらええけど、温くなったら雪崩おきるで」

そうか、今シーズンスキーでけへんかったな…

「もう無理やろ」

金もないしな…

「金の話ばっかりやな。温くなったからコートもいらへんな」

脱がな暑いぐらいや…

「と言いながらまだ着とるがな」

寒の戻りっていう奴や…

「あちこち花が咲くっていうのに」

桜が咲いたら花見したいな…

「気ィ早い奴は、つぼみの下で花見してるで」

ほんま浮かれているなァ…

「あっちでは気ィ早い桜の下で盛り上がってるわ」

満開かな…

「例年通りの開花や言うてるで」

そんな時分かいな…

「これが終わったらいい季節になって、ゴールデンウィークも始まるで」

連休やな…

「たまの連休や、どこか行くんか？」

予定立たんわ…

「ええところは人もいっぱいやし」

マイナーな方がいいわ…

「そうかいな。ほら、あそこの家、もうこいのぼり上げてるわ」

あそこの家の子、ええ子に育ってや…

「親のしつけ次第やろ」

俺らには関係ないけど…

「特にお前はな。でも人が多いな」

人、仰山出てきてるわ…

「ラッシュ並みやな」

休みが惜しいんやな…

「連休終わったらまた仕事やで」

また忙しなるな…

「外はええ天気やのに、会社でばたばたせな」

五月病になるわ…

「でも湿気も増えてきたわ」

外も、じめっとしてきたな…

「梅雨やな。じめじめするわ」

しとしと降ってきたで

「でも作物にとっては恵みの雨や」

梅雨のおかげで野菜も米も食えるからな…

「感謝せなあかんで」

ああ梅雨にも、農家さんにも…

「言ってる間に、もうすぐ梅雨明けやで」

すると、もう夏か…

「真夏のお天道さんが出てきたわ」

暑なるなァ

「厚いわな」

夏バテしそう…

「なんやお前、夏バテか？」

毎年するねん…

「どうせ土用の丑の日や。うなぎ食うか」

おごってや…

「これや。夏休みはどこ行くねん」

海で身体焼こう思て…

「お前、意外と色白やからな」

毎年行かな思ってるねんけど…

「わしは山に行こ思てんねん。身体鍛えられるし、体も焼けるし」

山でも焼けるか…

「もう真っ黒やで。紫外線多いし」

うちは最初から海やな…

「なんでや？」

山は登らなあかんけど、海は寝そべってるだけで良いから…

「横着やな。でももうシーズンも終わりやで」

今年も行かれへんかったわ…

「日焼けサロンにでも行きや。でも今年も暑かったな」

もう暑さもおさらばやな…

「秋雨も降ったし、お彼岸も過ぎたわ」

涼しくなってきたわ…

「もう衣替えの季節やで」

アカン！　タンスの中引っ掻き回さな…

「へそくりでも出てくるんかいな」

忘れとったわ…

「おいおい。ほら、山は紅葉し始めてるで」

色づいてもうたわ…

「そろそろ冬支度やで。今年は寒なるって」

木枯らしも吹くな…

「暖房も出さなあかんで」

霜も降りるな…

「一雨一雨、冬に向かってるからな」

コートも出さな…

「今日は寒さに堪えたわ。明日はコート着よ」

年賀状書かな…

「なんや。わしはもう出したで」

早いなァ…

「もうクリスマスや、師走やから時が経つのは早いんやぞ」

プレゼント用意しな…

「なんやかんやでもうすぐ正月や」

今年もいろいろあったわ…

「来年もいろいろあるやろ」

そやろか…

「ほら初日の出や。早よ拝も」

今年もあっという間の一年やろなァ…