番外編 第1話 初めての遊び①
「ねー、弦くん、美宇、たまには将棋以外で遊ばない?」
そういったのは美宇の母だ。今日は俺のお母さんが買い物に行っているので美宇の家のリビングで遊んでいる。PCは無いが将棋道具は持ち込みだ。
美宇の母の手にはトランプが握られていた。
「どうするー?」
「たまにはいいんじゃないか?」
今日も数時間は将棋やってたんだし。
「弦くんがいうならー」
「?」
美宇はトランプ嫌いなのかな?
俺も別に特別好きということはないけど。
「美宇、裏面は見ないようにね」
「わかってるよぉー」
裏面? あぁ……家庭トランプだと何度も使ううち、裏面に付く特徴的な傷でカードが分かっちゃうことがあるよね。美宇の場合、そんなレベルではないだろうが。一度見た文字を一語一句覚える程の記憶力だ。すべてのカードが分かっても不思議ではない。
なるほど。裏面を見ないようにしてプレイするのが疲れるということか。
「いいよ、美宇」
「!」
「裏面をちゃんと見てやっていい。それでも俺が勝つから」
「いや、弦くん。
美宇のは多少カードが分かるとかそういう話じゃ」
「わかった!」
「…………」
それにしても、あんなふうに人を鬱陶しがる美宇は新鮮だな。他の人の誘いを冷たく断る事はあるけど、母親相手だとあんな感じなのか。
まず、始まったのは神経衰弱。
「先に捲る方はじゃんけんで決めようか」
「うん!」
能力起動。
俺は美宇をずっと見てきた。それだけの情報すべてと、今の美宇の情報を入力、求める結果は美宇に勝てる手。
結果は、エラーにならず俺の手はグー、美宇はチョキだ。
「じゃあ弦くんから!」
美宇の目は輝いていた。美宇は危ないことをするなとは言うけれど、実際積み木を積むときも、アクロバティックを披露したときも、心配しつつも俺の出す結果に目を輝かせていた。美宇は俺がすごい結果を出すのが好きなのだ。だから見せよう。演算能力を使った、人を超えるその極地を!
8と8。
「おー!」
2と2、7と7、3と3、11と11、1と1…………。
「うわぁーー!」
俺はめくり続けた。出力した結果に身を任せ、開いたカードを回収することもなく、最後の1組まで引き続けた。
「げ、弦くん?
それ、どういう手品?」
美宇の母親が引きつらせた笑みで俺に聞いてくる。
当然だろう。俺は美宇と違って一度もトランプの表と裏を照合する機会はなかった。仮に俺が美宇並の記憶力を持っていたとしてもできるわけないのだ。
「美宇の視線や仕草、表情、などからどのカードと、どのカードを引けば同じ数字が引けるか推測しました」
「えぇ……」
そんなバカな、とか、ありえん、とか呟いている。俺も実際そんな事言われたらそんなアホなと返すだろうなぁ。というか、美宇の母親、若干口調が崩れてるね。
「1組、2組ならともかく、全部?」
「はい」
2組でも神業だと思うけど。演算能力様々だ。
「弦くんすごい!
そんなこと、ふつーできないよ!
私もできる気がしないよ!」
「ハッハッハ」
「…………」
一頻り褒められた後、俺は聞く。
「それで、続ける?」
「つぎいこ、つぎ!」
美宇はやる気だが、これ以上はあまり意味がないと思うぞ。
「次行くのはいいけど、もう全部の裏と表を俺も確認しちゃったぞ?」
「あーそっか」
「」
美宇の母親は口を開けて呆けている。もう全部のカードの裏と表の組み合わせを見たので、演算能力に入力すればどのカードがどのカードか結果を出力できてしまうのだ。
「じゃあ別のふつーにやろー」
「普通に裏面見て?」
「そー!」
そだね。裏面見ないようにやるのは疲れるからね。
美宇の母親が、パクパク口を動かしている。演算能力で読み取ってみると
――弦くん、美宇よりすごくない?
すごいーってのは美宇の母親の口癖なのかもしれんなぁ。というか、美宇から俺の話聞いてないのかな? 非現実的すぎて話半分に聞いてたのかも。
「弦くん、これからも美宇をよろしくね」
「はい!」
親公認だぜ、やったね!
「へ、へんなこと言ってないでやるよー!
すぴーど!」
この後美宇の母親とスピードやって勝利、筋肉痛になった。
「本当にすごいねぇ、弦くん」
「すごいー!」
信者が一人増えました。




