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第九話 スローライフ的な何か

「ねえ、コーア。後でコーアの部屋に遊びに行ってもい~い?」




 巧亜がイルージ村に滞在して一週間が経った。


 すっかり村に溶け込んだ様子で、農作業を手伝って汗をかき、子供達の面倒を見たりして冷や汗をかく、なんていうスローライフ的な暮らしを送っていた。


「いやぁ~、癒されるわぁ~」


《それは何よりですね。満喫なさることは良いことだと思われます》


 そんなスローライフでも刺激的な事は起きる。


 お客さん→コーアさん→コーア、と気付けばマーシャと仲良くなっていて、夜に酒場の仕事が落ち着くと、マーシャが部屋に遊びに来るようになった。


「コーアって、あたしの二つ年上なんだね、全然見えないね」

と、あははと笑う。


「童顔ですんません」


「いいじゃん、かわいくてさ。そいやコーアがこの村に来たのって、やっぱ大森林の神竜様目当て?」


「神竜って始祖竜のこと?」


「そだよ。村の人は神竜様って呼んでるの。

凄い昔に大きな戦争が有って、逃げてきた人達がこの村を作ったんだって。

その時にはもう神竜様は山に居たらしくてさ、村を護ってくださいってお願いしたんだって」


「へぇ~、守り神みたいな感じなんだ」


「そうらしいよ。秋には収穫して一杯お供えもするんだよ」


「そうなんだ、お供えしに行く所、見てみたいかもな。

元々ここに来たのは、始祖竜を見てみたいって思ったけど怖いからさ、近くのこの村に来て、空気だけでも感じたかったからだし」

「あはは、何それビビりじゃん」


 笑い話になったが、嘘も方便である。まさか始祖竜の死に対面し、そこから村に来ましたなんて言えるはずがない。

 騙してることに少し心がチクッとした。



「それまで居ればいいじゃん」

 ぼそっとつぶやかれたその一言は聞こえない振りをした。


 ある日、そんな話をした。





日が変わって、ガキ大将が問いかけてくる。


「コーア!今日は何して遊ぶんだよ!?」


「そうだなぁ、昨日は笹舟っぽいやつでレースをやったからなぁ。今日は何すっかな」


 子供達にすっかりなつかれてしまった巧亜は、何をするか悩んでいる。


 そういえば、そこら辺に生えてる木は結構柔らかい木だったな。

 枝を使って竹トンボみたいなの作れないだろうか。

 木登りをして遊んでいた時に折れてしまった枝を持ってきて試しに作ってみる。


 変化する小剣をナイフに変え、サクサク形を整えていく。

 最初の頃、お前、弱っちいんじゃないの?と、舐めてかかってきた子供達に小剣の変化を見せて、少なからず尊敬を獲得したのは悲しい思い出である。


 ほい♪っと竹トンボもどきを飛ばしてみればなかなか上手く作れたようで、空を駆け昇っていく。


「すげぇじゃん、コーアすげぇじゃん。早くやらせてくれよ」


人数分作らされ、誰が一番高く飛ぶか競争を始める。

 こんな日も良いなぁ。ああ、でも自分の子供には作ってやれんかったなと、少々もの悲しくなった。

 日暮れまで竹トンボもどきで遊んだ。


 宿屋に戻り、巧亜は猛烈に風呂に入りたくなった。水浴びだけじゃ物足りないのだ。


「女将さん、お風呂に入りたいんですけど」


「え?今から用意するのかい?勘弁しとくれよ。あんたしか入らない上に、言ってる間に酒場で忙しくなるんだよ?」


 けんもほろろに怒られる。


「あ、いや自分で用意しても良いですか?風呂場だけ貸して貰えれば……」


「自分で用意出来るなら良いよ。頑張って井戸水組んでくるなら薪代はサービスしとくよ」


「よっしゃあ、ありがとうございます。晩御飯食べたら入らせてもらいますね」


 今日の晩御飯は山菜の炒め物と川魚の煮付けだった。


 落ち着いてから風呂場に行き、灯りの魔法で風呂を照らし、そこでふと考える。


「いつも水を出してから温めているけど、最初からお湯出せば良いんじゃね?」


 髪を乾かすときは温風の魔法をつかっているのだから、出来ないはずも無かった。


「え?コーア、お風呂いれてるの?あたしも後で入りたいんですけど」


 女将さんから話を聞いたのかマーシャが見に来た。


「マーシャも入る?じゃ、湯船から少し溢れる様にしとくよ」


「ってか何か明るいし、お湯が溢れてるじゃん。凄い、コーアって魔法使えるんだ」


「あれ?言って無かったっけ?実は少しだけ使えるんだよね」


 ホントは少しじゃ無いんやけどな。と心の中でつぶやく。


「え~、ズルい、もっと早く言ってよ」


 プンスカと怒るマーシャを宥めてから、久しぶりの風呂を満喫する。

 結局は巧亜の後で、マーシャ達家族は全員、風呂に入ったらしい。風呂上がりに部屋に来たマーシャが教えてくれた。なんか解せぬ。



 少し、ピンク色に染まったマーシャが仄かに色っぽい。

 ベッドに二人して座る。


「ねぇ、コーア。ちょっと聞きたいことあるんだけど」


 照れたようにマーシャが聞いてくる。

話を促すと、

「真面目に答えてね。あたしのことどう思ってるかなって……」




「あたしの……こと……好き?」




「え?」

 突然の質問に思考がエターナルフォースブリザード(笑)した。


「えっと、ぶっちゃけ好きか嫌いかで言うたら、結構好きかも知れんで」


「何その変な喋り方」


 巧亜は思わず素で答えてしまう。


 じゃあ、とマーシャは前置きして爆弾発言をコーアに向けた。


「ねぇ、コーア。あたしとHしない?」


「ちょっとでもあたしのコト好きなんだったら……いいよ」


(あれ?これ据え膳じゃね?据え膳て、確かあれだろ?ヨーロッパの福祉に強い国だろ。そりゃ、スウェーデンやっちゅうねん!……違うか)


 動き出した頭の中はパニックになり、余計なことを考えてしまう。

「ごめん、何で急にそんなこと……」


「あのね、ここ小さい村だからさ、新しい血を入れなきゃいけないとか、何かそんな話があるの」


「で、コーアはいま結構狙われてるんだよ。あたし、他の人にコーアを取られたくない」


「あたしも来年で成人するし、どうせなら年の近いコーアの赤ちゃん産みたいの」


(マジっすか)

「ホントに俺で良いのか。つってももう止まれんぞ、俺」


「いいよ……やさしくしてね」


重なったシルエットがベッドに倒れていく……








《ゆうべはお楽しみでしたね》


「おまっ、久々に喋ったかと思えば何言うてんねん!!」

ラスト部分は書いててはずかしかったです。

これくらいの表現なら大丈夫ですよね?


読んで頂いてありがとうございます。

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