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第六話 結局チート

《……い。……ろ……お……さい》

《そろそろ起きて下さい》


「ん?誰や、まだ眠いのに起こすなや」


 巧亜は寝起きの時に機嫌が悪くなる癖がある。普段はなるべく丁寧に喋ることに気を付けているが、機嫌が悪いので素で話している。


《怒らないで下さい。そろそろ正午なので起床を促しました》


「え?もうそんな時間なの?やっべ寝過ごした。遅刻やんって会社とかもう無かったか」


 身体を起こしあくびをした後、目の前に倒れている古竜の姿を見つける。


「異世界に来たのも、古竜と出会ったのも夢じゃなかったのな。そういえば、俺いつの間に寝たんだっけ?」



《始祖竜を倒した後すぐにです。急激なLvアップについてゆけず、気を失った模様です》


「あ~、そういえば確かに頭の中にLvアップしましたとか聞こえとったな。ってか始祖竜?」


《目の前の亡骸の事です。始祖竜バルゴディアスという個体です》


「へぇ~、古竜さんはそんな凄い名前の竜やったんやな……ん?」


 そこまで話して、巧亜は今自分が誰と会話しているのかと疑問に思った。周りには誰も居ないことを思い出したのだ。


「頭の中に響いてるこの声は一体なんだ?君、誰なん?」



《私は『スマホ』スキルにインストールされていた『AIアプリ』です》


「なるほど、アプリなのか。昨日は全然喋らなかったのに今は話すんやね」


《昨日まではアプリの起動や停止、または検索に対して返答をする等、

受動的な機能しか有りませんでしたが、スキルLvが上がった為、能動的な会話が可能となりました》


「Lvアップすげえな。そうか、俺Lvアップしちゃったんだよな。AI さん、どれだけアップしたのか教えてくれる?」


《視界に投影する形でステータスを開示します》


 ステータスを確認すると名前や種族などの表記があり、Lv100Eとある。

 取得しているスキルLvには、全て10Eと表記されていた。また筋力などの基礎能力値はSEと表記されている。

 何の事やらさっぱり解らないので説明を求めることにした。


《人族のLv上限は100Lvです。膨大な経験値取得の際に上限を突破しました。

人族のステータス表記は100Lvまでですので、越えた分はEと表記されております。

スキルLv上限は10Lvまでです。同様の理由から10Eと表記されております。次に基礎能力値の上限は……》


「いや、もういいっす。上限はSだからSEなんでしょ……ちなみに普通、基礎能力値ってどれくらいなの?」


《人族の基礎能力値はS、A~Fまで7段階があります。Cが一般的な平均となっております。筋力で例を上げますとBなら力持ち、Aなら凄く力持ちとなります》


 解るような解らないような説明を受け、巧亜はため息をつく。


「それでS越えってあかんやつやん。これヤバいやつやん。

神様にチート要らないって言うたのに、チートになってもうてるやん。何やねんこれ、陰謀か」


 どうしようもないこの事態に途方に暮れるが、もはや後の祭りである。

 早々に気持ちを切り替えた方が良いかもと考える。


「まぁ、チートになったしまったのは仕方ないや。古竜さんが悪いわけでも無いし。取り敢えずあれか、修行パートか」


 何気なしに手を降ると突風が吹いた。

これにはびっくりする。早急に何とかしないといけないと切実に思う。


《常駐アプリ『ステータス管理アプリ』を表示しますか?》


「お、何その使えそうなアプリは。説明をヨロシク」


《各ステータス値やLvの変更、スキル毎のON、OFFや称号の表示の変更等が出来ます。ステータスを開示するとき、設定されたものが表示されます》


「じゃ、転移した時のステータスってわかる?それに変更したいんだけど」


《管理アプリに保存されている、過去ログを参照します。設定1として保存しますか?》


「あ~、ちょっと自分でいじるわ……よし、これでいいわ保存して。ちなみにこれ、設定したのと違うのをステータス開示できるの?」


《可能です》


「じゃ、他人に開示するときは設定1でお願いね」


 もう一度さっきのように腕を降ってみると今度は突風を生み出す事は無かった。


「しばらくはこれで慣れていこう」


《すみません。お伝えしていないことがあるのですが》


「なに?教えて」


《私との会話で実際に声を出されて会話していますが、思考による会話も可能です》


(そうなん?こんな感じ……?)


 今さらかよ、とは思うが、独り言を何時までも喋ることになるのは嫌だから、助かったなと考える。


「まぁ、AIさんもいるしなんとなりそうだな。これから仲良くしてな。

あっ、そうだ、AIさんて名前無いの?何て呼べばよい?」


《人工知能プログラムIris『アイリス』と名付けられております。卵運びテストが得意です》


「呼び捨てで良いかな。これからよろしくな、アイリス。俺の事は巧亜と呼んでくれ。それと卵運びテストって何だ?」


《宜しくお願いします巧亜様。卵運びテストは内緒です》


 内緒ですか、そうですかと巧亜は流し、いい加減お腹も空いているので、保存食を食べる。

 しばし、休憩したあと刀を構え素振りを始める。


「しばらくはここを拠点にして生活するか。保存食だけでは物足りないから狩りとかしないとな」


《では、ゴーグルマップに『索敵スキル』、『鑑定スキル』をリンクさせますか?》


「便利だな。便利過ぎてやっぱド定番チートやん。」


 ぼやきながらも素振りを続け、走り込みや筋トレ等をして新しい身体に慣れていく。

 この日はそれで終わりを告げた。



 拠点にした場所は山頂付近にあり、すぐ近くにあった洞窟にした。どうやらこの洞窟が竜の寝床であったらしく、ここにも色々冒険者等の遺品が置いてあった。



 一週間ほどたち、新しい身体にも慣れ、今ではステータスはチートモードのままで設定1で偽装した状態にしている。


 山の麓にある大森林には、数多くの動物が繁殖しているため、狩りには事欠かなかった。


 今も巧亜は大猪と狩ろうと風下からゆっくりと近づいている。

 手には変化させたメイスを持ち、打撃で仕留めようと考えていた。


 大猪は巧亜には気付かず、何か根菜でも取ろうとしてるのか、穴を掘っている。


「よし、行くぞ」


目当ての物を見つけたのか、掘った穴に頭を突っ込んだ時、巧亜は走りだし、後ろ足に向けてメイスを振り落とす。

 足を攻撃すると、機動力が落ち、戦闘や逃走されそうになっても動きが鈍くなり、狩りの成功率が上がるのをこの一週間で巧亜は学んでいた。


「近くに川があったよな。そこまで持っていってから血抜きして捌くか。アイリス、後でまた捌き方の動画を見せてくれ」


 動画サイト様々である。血抜きの仕方、捌き方など色んなキャンプ動画を見て、巧亜のサバイバル技術は進歩していた。


 アイリスも打てば響くように巧亜の相手をするため、一人でも寂しくなく、順調に生活できていた。


「さぁ、拠点に戻るか」

読んで頂きありがとうございます。

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