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第五話 異世界転移成功!?

「知らない天井、いや青空だ」


 気付けば大地に寝ていたようだ。心地よい風が巧亜の頬を撫でる。先程までは花の香りが辺りに漂っていたのに、今は緑の匂いがする。暑くも寒くもなく、丁度よい気温で気分が良い。

 どうやら山に転移してきたらしい。崖のすぐそばに寝ていたようで、目下には大森林がそびえていた。

 都会人には馴染みの無い風景、その壮大な森に目を奪われていた。


 立ち上がり、壮大な森を眺め、しばらく感動していたが、転移した場所が数mずれていたらそのまま落ちていたのだろうか、それとも崖下に転移していたのだろうか、危ないなぁ。と肝を冷やす。


 何はともあれ無事に異世界に来たな、取り敢えずどうするかと考えた時、また巧亜の頬、いや巧亜の全身に風が吹いた。


「ん?風向き変わったんかな?後ろからごっつい風が吹いてきてるやん。

天気は良いから雨は降らんと思うけど、移動したほうが良いかな」


 目の前は急な崖なので降りることは出来ない。他に道は無いかと辺りを見回そうとして、いつの間にか日陰に入ってることに気付く。


「あれ?暗なった。しかも妙に動くな、この影……」


 振り返るとほんの数m先に壁が有った。しかもでかい鱗がびっしりと生えた壁だ。呼吸するかの様に動く壁だ。でかい腹のような壁だ。

 頭の左上から風が吹いてくる。思わず顔を上げると、逆光になっていて見にくくなってはいるが、何かの顔らしきものが巧亜を見下ろしている。



「ド……ドラ……ゴン」



 思わず思考が停止する。恐怖したわけでは無い。その姿に、圧倒的なほどの存在感に、畏怖し感動したのだ。



「すげぇ……かっこ良すぎて死ねるわ……さっきから感動しまくりやわ。あっ、目が合うた……」


 ただただ見つめ合うだけで時間だけが過ぎていく。

 段々停止した思考が動き出した巧亜に、次は恐怖という感情が生まれてくる。

 思わず、乾いた笑いが出る。


「ははっ、また詰んだ。」


 余り危険な所には転移しないって聞いていたのに、よりによって竜の目の前である。


 なんて日だ!ここ最近の自分の運の無さには、ホント呆れがくる。

 このあとどうなるのか?食われるのだろうか?踏み潰されるのだろうか?

 逃げたら追いかけて来るのだろうか?ヤバい、おしっこ漏れそう。


 色んな考えが巧亜の頭の中で回るが上手く纏まらない。恐怖のあまり、パニックになっている。



「何用じゃ、人よ」



 竜が巧亜に話しかけてきた。が、巧亜は辺りを見回す。まさか竜が話しかけてくるとは思ってなかったからだ。


「いやいや、目の前におるじゃろう。そうそう、また目が合ったのぅ」


「あぁ、やっぱりドラゴンが喋ってる。話せるならお願いです、食べないで……」


 ガタガタ震えながら必死で懇願する巧亜に竜は、


「安心してよい、儂はお主を食そうとは思っておらんよ。儂の目の前にいきなり現れたからのぅ、話をしたかったのだよ」


 巧亜の心を落ち着かすように、ゆっくりとそう話す竜の瞳は、透き通っていて凄く綺麗であった。


 その後、ようやく落ち着いた巧亜に竜が見たことを話してくれた。


 竜が昼寝していると雲の切れ間から自身の前に光が差し、強く輝いていく。巧亜はその光と共に現れたようだ。


「光が消えたと思ったらお主が倒れておるから、びっくりしたのだよ。

見たところ神の力は感じるが、神の使徒というわけでは無いだろう?こんな所に何用なのだ?」


「私は別の世界から来た人間なんです。と、いうのもですね……」


 竜に異世界転移した一部始終を説明する巧亜。


「儂らが生きているこの世界の他に、見ることも、行くことも出来ない、知らない世界があるというのか……そしてお主は知らない世界の人だと……

面白い!ずっと退屈していた所だ。お主の世界の話をもっと聞かせてくれ」


求められるまま、元の世界の事を話す。

なかなかどうして聞き上手なのか、巧亜はどんどんよい気分で話す内に口調も軽くなっていく。

 話し疲れてきた巧亜はここらで一度保存食でも食べようかと思い、竜に断りを入れる。


「あ~竜さん、俺はそろそろ何か食べようと思ってるだけど、竜さんは普段何を食料にしてるの?」


「何も食べてはいない」


「あ~、魔力とかを取り込めば大丈夫的なアレですか?」


「何も取り込んではいない。お主の事ばかり聞いていて儂のことは何も話しておらんかったよな。改めて自己紹介しよう」


「儂はバルゴディアスという、この世界の始まりから存在しておる古い竜だよ」


 この世界が一体、何年存在してるか巧亜は分からない。


「それは儂もわからんの。わざわざ数えてはおらんしの。ただ途方もない時間であったの」



「ゆえに、儂はもう十分に生きたのでここで静かに死を待っておるのだよ」



 死を待っているから何も食べていないのだと古竜は言う。


 ただ、静かにというが麓に村が有るらしく、そこから村人が供え物を捧げに来たり、古竜を倒して名を上げようとする冒険者等が来ることが有るそうだ。


 言われてみると、古竜が寝ている場所から少し離れた所に、武器や防具といった物や、夜営するためのテントなど明らかに人間用の荷物が置いてある。

 古竜は好戦的では無いので、こちらの話聞かず襲って来る者だけを、返り討ちにしたのだと言う。


「そろそろ静かに逝けると成ったときにお主が現れたのだよ。お主に頼みがあるのだが、どうか叶えてくれないか」



「お主に儂の介錯を頼みたい」

「いや、無理っす。勘弁してください」


 巧亜は自分がまだ戦ったことが無いこと、命のやり取りですらしたことが無いから、こうして会話をした古竜に介錯といえども刃を向けることは出来ないと説明した。

 古竜はそんな巧亜をさらに気に入り、巧亜が折れるまで頼み続けた。

 気付けばいつの間にか夜になっていた。


「会ったばかりのお主にこんなことを頼んですまんの。と言っても儂の鱗はかなり固いのだよ、普通の人間では傷なんて付けるのは無理なのだよ」


 古竜はそう言いながら自身に魔法をかけていく。


「防御力低下など、掛けられるだけの魔法を使った。逆にお主にも支援魔法を掛けていくぞ。これで儂に一撃くらい与えられるだろう」


「本当にやるんすか?」


「こうしてお主に会ったのは、何か意味があるのだと儂は思うのだよ。この世界の始まりより生きる儂が、違う世界のお主に看取れられて生を終える。儂はそれがとても嬉しいのだよ」


 じっと巧亜を見つめる古竜の澄んだ目に腹をくくった。


 小剣を槍に変化させ少しでも与ダメージが増えるように腰だめに構える。


「ちなみに儂のHPはここ五百年程、残り1じゃ。当たれば死ぬるぞ」


 助走をつけ、踏み込みを強く下半身から生まれた力を腰へと伝え、上半身から腕に流れ込む。攻撃が当たるインパクトの瞬間に腕を捻り、回転する刃先が古竜の固い鱗をえぐり、貫通したのか血が弾け飛ぶ。 



「人の子、巧亜よ。最後にお主に会えて儂は良かったと思っておる。儂が死んだら儂のものは全てお主にやろう。あそこの荷物など儂にはゴミ同然だからな。好きにすると良いのだよ」


そう言い残して古竜は世界に向け、別れを告げるかのように雄叫び、静かに目を閉じた。


 ーー始祖竜を倒しましたーー


 頭の中でアラーム音と共にそんなメッセージが聞こえたと思うと、とてつもない痛みが襲ってきた。


 ーーLvが上がりましたーー

 ーーLvが上がりましたーー

 ーーLvが上がりましたーー

 ーーLvが上がりましたーー

 ーーLvが上がりましたーー

 ーーLvが上限に達しましたーー

 ーー取得経験値が膨大な為、上限を突破しましたーー

 ーーLvが上がりましたーー

 ーー取得経験値が膨大な為、上限を突破しましたーー


 そんなメッセージが何時までも続く。巧亜は気が狂いそうな痛みの中、またもや気を失った。


 ーーLvが種族限界値に達しましたーー

 ーー種族限界値を突破しましたーー

 ーー取得経験値が膨大な為、他スキルに分配しますーー

 ーーLvが上がりましたーー


 気を失っている巧亜には内容は分からないが、いつまでもメッセージは鳴り続けていた……

読んで頂いて有り難うございます。感想等お待ちしてます。

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