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第二話 神との対面

本日二話目です

 只今、巧亜は知らない老人に爆笑されている。

 だが、いち関西人として笑わせるのは良しとして、笑われるのは我慢が出来ない。


 笑われるよりも笑わしたいマジでなのである。


 恥ずかしさでもう一度死ねそうだと羞恥を噛み締めているが、落ち着こうと辺りを見回す。

 自分は屋上から落ち切る前に意識を失ったのでここは庭園なのだろうか、絶妙に手入れが行き届いた花達が色取りどりに咲き誇っている。

 何故か老人と二人でテーブルに向かい合って座り、お茶を飲んでいる。庭園の向こうにはギリシャ神殿のような建物も見える。


 ハーブティーっぽい何かで口を潤しながら、老人を盗み見る。欧米かっ!と突っ込みたくなるような顔、肩まで伸びた髪、そして鼻の下から伸びて、顎と合体したふさふさの髭。極めつけはただの布を巻き付けたかのような服。

 いまだ爆笑しているが、醸し出す雰囲気はまるで、冬の早朝にお参りする神社のような、どこか粛々とした威厳に満ちたモノが感じられる。


 あぁ、神様っぽい。いやもう何ていうかゼウスっぽい。ぶっちゃけスーパーを頭に付けても良い位ゼウスっぽい。

 そんなことを巧亜は考えていた。


 巧亜は老人に話しかける。


「もうそろそろ笑うのを止めて頂いても宜しいでしょうか神様」


「あぁ、すまない。少し待て……よし落ち着いた」


 老人はそう答えたが巧亜の顔を見てまた笑い出す。


「駄目だ。そんな真面目な顔をしても先程の行動とのギャップが激しすぎるわ。

自殺を止めたと思いきや、足を滑らせポクポクチーンって巧亜くんよ、そなたは我を笑い殺す気か」


 おめー、そんなことで神殺しするなんておかしいなっ!と関東の芸人に突っ込まれたら嫌だと思いながら巧亜は話を進めようと試みる。


「率直に結論から述べさせて頂きますが、これはいわゆる異世界転生的なアレ何ですかね」


 アラフォーの巧亜は、営業の仕事の合間や寝る前とか、時間が空いた時にネット小説を読むのが好きだったので、そうだったら良いなとゼウスっぽい老人に訊ねる。


「そうだな。こんなに笑ったのも久しいので褒美をやろう。異世界転生で良いのか?というか先程から心の中でゼウスっぽいとうるさいのそなたは」


 あっ、やっぱり考えてる事は筒抜けなんやね、テンプレやなぁと思いながら巧亜はゼウスに頭を下げる。


「これは大変失礼なことを考えておりました。どうか平にご容赦を賜りますよう」


 ゼウスは笑いながら答える。


「良い。怒ってはおらん。我がゼウスなのは合っておるからな。この姿はそなたが持つイメージを投影してる仮初めに過ぎぬ」


「ははぁ、寛大なその御心に感謝を。なるほど神の姿は直視できないとかそういった感じなのでございましょうか?」


「そうだな、我の本来の姿はそなたたち人の子には正しく認識することは無理だ。恐怖とはまた違った意味でSAN値が大爆発するわ」


 どないやねん、そんなん嫌やわと思いながらも巧亜は話を続ける。頭の中では素で突っ込んだり関西弁丸出しで、最早不敬どころの話では無いが、それは見逃しているようだ。

 つかこのカップ、どれだけ飲んでもお茶が減りもしないし、ずっとずっと適温なんですけどと、どうでも良いとこに感心を抱く。


「ゼウス神様、私めの希望なのですが自身の姿に愛着を持っておりますので異世界へは基本的に自身のまま転移したいと愚考しております」


ゼウスは顎髭を触りながら、

「ふむ、そなたの希望はある程度は叶えてやるつもりだ。何なりと申してみよ」


「では、御言葉に甘えさせて頂いて、希望は10代中頃、今より少しだけ体重を適正値に近づけた上……」


 途中で話すのを止め、巧亜はおもむろに五体投地してゼウスに向けて懇願する。


「死ぬまでハゲないようにして下さい!!それと私のムスコのティン長を4センチ、いや3センチ、2センチでも良いので伸ばして下さい!」


 切実だった。巧亜は30代後半から少しずつ頭の砂漠化は進んでいたのだ。某戦闘民族の王子にひけを取らないくらいM字なのだ。


 関係の無い話だが、王子が途中である敵に操られ、額にMの文字が浮き出ていたのは、あれいらないよね。だって王子は元々M字入ってんじゃんと巧亜はその時思っていた。

 巧亜にしても父方、母方の家系もハゲている。ハゲ界のスーパーエリートである。

 そして中年に有りがちなメタボなボディも、この際に何とかしてもらう算段のようだ。


 そしてゼウスは巧亜の魂からの叫びを聞き、また爆笑していた。


「これが高校生くらいだとこういう話ではチートをくれ、いやよこせとうるさくは詰めよってくるのに、そなたの願いは切実と申すか何と言うか、ほんに面白いの。

我の笑いのツボを突いて喜ばせてくるとは越後屋よ、そなたもワルよのう」


 機嫌が良いのかゼウスのノリが軽くなってるのを巧亜は感じとり、それに合わせていく。


「いえいえ、お代官様には敵いませんよ。少しばかり便宜を図って頂くことで私めは満足でございます」


するとゼウスは少しばかり困った様子になる。


「それがの、我ら神が調子に乗って大きすぎるチートを与えすぎての、色んな所からクレームがきておるのだ。一度与えたものは管轄する世界が違ったりするのでなかなか取り上げることも出来ぬ。その為、そなたには悪いが先程も言った通り、ある程度で納得せよ」


 ゼウスはそこまで話すと暫し溜めてから続きを喋る。

「我らとしてはチート過ぎた方が見ていて楽しいのだがな」


 いやはや残念と少し笑みを浮かべ、ご機嫌で茶を飲むゼウス。結局の所、ゼウスの匙加減一つであることを巧亜は気付いた。


「私が望むのは、10代の健康な(ハゲない)肉体、転移する世界の一般常識と言語、少しの資産、向こうで使えるスマホ、魔法が使える世界なら使ってみたいので魔力もお願い致します」


「スマホはどうするのだ?使えると言っても電波も届かないのだから不要では無いか?」


「そこを神様の力で何とか機能的に使えるようにして頂きたいのです。検索エンジンはゴーグル先生の代わりにアカシックレコードにしたり……とか出来ませんか?」


「おいおい巧亜よ、それは知識チート過ぎるであろう。認めたら我が後で怒られてしまうではないか」


「ゼウス神様が、スマホやアプリの管理者権限を持っていらっしゃればどうとでもなりませんか?」


 巧亜はここが踏ん張り所だと、気を引き締めて話す。


「私はチートをアプリとしてもらう。チート過ぎると思えば制限をかけたり、アプリ自体を停止すればクレームが来ることも有りません」

 巧亜は話を続けながらある意味本題をゼウスに向け切り出す。


「逆に後からでもアプリを提供する事で、楽しんで頂くことも出来ます」

読んで頂いて有り難うございます。


少し、会話文を修正しました。

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