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第十七話 初ダンジョンはポーターとして

お待たせしました。


 宿を探す時間が遅かったので、少し安めの宿に泊まった巧亜は早朝、ギルドにダンジョン講習を受けに行く。


 赤茶色の煉瓦で作られた四階建ての建物では、今日もその存在を表す木製の看板が、風に揺られている。

 酒場には殆ど人がいない。その所為か奥の方に有るテーブルで一人で飲んでる男がやけに目立つ。



(なかなか聞き応えの有る講習だったな)

《真剣に傍聴なさってましたね》

(ああ、俺は説明書は隅まで熟読するし、ゲームのチュートリアルはしっかりやるタイプなんだわ)

 巧亜とアイリスは軽く感想を言い合う。


 無事、二階で教習を受けることが出来た。二時間程、ダンジョン踏破に向けて、本当に基本的な事を教えて貰った。

 まず、始めはポーターとしてパテに参加することにする。しかし、講習を受けていた為に時間がずれてしまい、ギルド内に冒険者があまり居ない。


 ボギーが居たので話しかけてみると、朝一、昼頃、夕方とダンジョンに入る人が多いタイミングがあるようだ。


 今からダンジョンに向かうと、昼のピークに間に合うだろうか。

 ダンジョンは西門から街を出た所に有るようだ。大通りには辻馬車が走っているので、それに乗り西門を目指す。





 ダンジョンは資源である。という言葉は誰が言ったのだろう。

 食用肉になる魔物や、貴重な鉱石、薬草、魔力を帯びた武器防具と魔道具。

 それに魔道具の燃料になる魔石が魔物が取れる。どれも人の生活には欠かせない物ばかりで、まさしく資源の宝庫だ。


 一攫千金を求めて人が集まるのも理解できるという話である。

 西門近くにはダンジョン専門のギルド出張所が有る。

 ここにもポーターを求めている冒険者パーティーは居なかった。


 西門を潜るとそのままダンジョンに直結する通路に出る仕組みになっている。

 少し歩くと広場に出た。広場の奥にはでかい扉があり、この扉の向こうがダンジョンのようだ。


 扉の横手には簡易の受付が作られており、ダンジョンに入る前と出てきた後に報告する必要があるらしい。また、有事の際の戦闘員もここで待機している。


 広場には、露店や飲食の屋台等が立ち並び、その周りには食事を取れる様に、テーブルやベンチも点在していた。

 高い天井に幾つも存在する天窓からは光が差し、十分な明るさが確保されている。


 受付を済ませた巧亜は、そのまま受付にポーターを募集しているパーティーが居ないか確認する。

 すると、冒険者のポーターを募集しているパーティーが一組居るらしい。

 そのパーティーは今は屋台で腹ごしらえしていると聞いたので、屋台近くのパーティーに声をかけていく。


「スルベデの炎パーティーの方はいらっしゃいませんか~?」


 片っ端から声を掛けて行くと、目当てのパーティーを見つけることが出来た。


「おい、俺たちがスルベデの炎だ」

「あぁ、見つかって良かった。ポーターを募集していると伺ったのですが?」

「おぉ、ガキばっかりで困ってた所だ。お前は一人か?ダンジョンに潜った経験は?」

 なんとも偉そうな男が質問してくる。巧亜はそれに愛想良く答える。


 見つかったパーティーは五人、片手剣、両手剣、槍の前衛職三名と杖、弓の後衛職二名からなるパーティーの様だ。

 ポーター役に子供を二人程、雇っている。


「経験無しか……まぁポーターだし良いだろう。この荷物を持ってくれ」


 渡された大きめの鞄には、大小のズダ袋が数枚に回復アイテム、保存食等が入っていた。

 子供達にも水袋等の小さい荷物を持たせている。


「そろそろ行くぞ。ポーターは俺達の後ろを着いてこい」


 両手剣の男がリーダーである様だ。男の掛け声でパーティーは迅速に移動していく。


(いよいよ初ダンジョンか。胸踊ってきたわ)

《しかし、何か嫌な感じがするパーティーですね》

(偉そうなのはまぁ我慢出来るから許容範囲だな)


 アイリスと話しながら遅れないように着いていく。

 

 ダンジョンの中は洞窟といったところか。

 岩が壁面からごつごつと飛び出していて、不規則な形を作っている。

 剥き出しの地肌は所々仄かに発光しており、視界は何とか確保出来る様だ。

 冒険者たちは慣れているのか、さしたる警戒もせずに先を歩いて行く。


 先行している弓職の男が『索敵』スキル持ちなのだろう、先に敵を発見するのでパーティーは余裕で倒していく。目当ての狩り場は地下三階層らしい。

 倒した魔物の魔石と討伐部位を剥ぎ取り、ズダ袋に詰める。勿論ズダ袋を持つのは巧亜の役目だ。魔石は小さい袋に詰めて子供に持たせていた。



 ダンジョンを進行して行く内に巧亜は気になる事が有った。このパーティーは巧亜達、ポーターを全く意識していない。

 用が無い時はまるで居ないかの様に、巧亜達の事を無視している。


(拙いなぁ。バックアタックとかされたら俺はともかく、子供らは危険じゃないか)

 巧亜は、自分が後ろを警戒するかと思案する。


 二階層の探索の途中で行き止まりの道で立ち止まった時、休憩に入った。

(成る程、ここなら注意するのは一方向で済むから楽だな)

 巧亜は適当な場所に腰掛けると、パーティーに質問してみる事にした。


「少しお聞きしたいのですが良いですか?」

「何だ?」

 どうやらリーダーが相手をしてくれる様だ。

「ポーターは戦闘中に何もするなと言われてますが、例えば後方を警戒したり、余剰の魔物に対して牽制させて、動きを止めたりとかさせないのですか?」


 リーダーは鼻で笑って、

「何でお前らにそんな事をさせないといけないんだ?そんな事をやらせて俺達に危険が起きたらどうするんだ。お前らは黙って荷物を運んでりゃ良いんだよ」

「それにポーターなんかの実力なんて信用出来ないしな」


 パーティーの一人がリーダーに追従してくる。


「そうですか、すいません変なことを聞いて」

(何だよ、そんなけんもほろろに言わんでもええやんけ!)


 巧亜は内心では憤慨するが謝って話を流す。このパーティーへの歓心はどんどんと無くなっていく。


 休憩も終わり、そうこうしている内に三階層までやって来た。

 三階層には水辺が点在しており、食用とされる大蛙が居るらしい。


「この先の水辺に何体か居るみたいだぞ」


 弓職が索敵で感知したのか、リーダーに報告している。

 水辺に出ると確かに大蛙が五体居ることがわかる。


「よし、近くにいる奴から叩いて行くぞ。後衛は遠い奴を牽制して置いてくれ」


 小型犬サイズの大蛙が二匹近付いている。遅れて残りの三匹も水際からこちらに向かって来ている。

 盾持ちの片手剣の男がタンク役をこなし、大蛙の攻撃を防いだ。その隙を狙ってリーダーの両手剣が猛威を振るう。


 前衛職の連携は、なかなか上手い。苦もなく大蛙に攻撃を与えていく。

 次々と撃破していくパーティーは、後方に居た残りの大蛙を倒しに水際近くまで移動していた。

 後衛の二人は周囲を警戒しながら前衛の援護をしている。


 その時だった。ポーターの子供の一人が、最初に倒した大蛙に向けて、こっそりと石を投げているのを巧亜は見てしまった。

 大蛙は微かにまだ生きている様だ。子供はパーティーの方を気にしながら、また石を投げる。


(これ、講習で言ってた禁止行為だよな。どうしよ、止めるべきか……)

《"荷運び(ポーター)の横殴り"と言われる行為ですね。禁止されてる上に冒険者からは反感を買い、制裁される事も有るようです》

(見つからんかったら良いけど)


 このパーティーには良い印象を持っていないので、巧亜は横殴りには気付かなかった事にした。


 戦闘が終わり、パーティーが戻って来る。


「おい、お前!今横殴りしてただろう!!」

読んで頂き、まことに有難うございます。

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