第十六話 ギルド
投稿が遅れてすみませんでした。年末年期の仕事とリアルが忙しく、思いの外時間が取れないのと少しスランプにもなってしまいました。
これは所謂定番のザコモブによる新人いびりかと、巧亜はテンプレキターと内心喜んだ。
暫くはこの状況に流されてみようと巧亜は考えている。
「新入りさんよ、ちょっとこのボギーさんが色々教えてやるからこっちきな」
髭面男は巧亜に近づくと、馴れ馴れしく肩を組んで自分が使っていたテーブルまで誘導して行く。
巧亜は促されるまま素直に席についた。少しテンプレと違うなと心のなかで独りごちる。
回りのテーブルにいる他の冒険者達がこちらをチラチラ見て、笑ってる姿も窺える。
「おい新入り、名前は何て言うんだ?」
「僕ですか、巧亜と申します」
ボギーが名前を聞いてくるので素直に答える。
「コーアか、格好良い名前じゃね~か、ヒヒッ」
ボギーはニヤニヤ笑いながら話し続ける。
「おい、ねーちゃん、新入りコーアさんに飲み物持ってきてくれや。何時ものミルクな、あと俺の分もよろしくな」
奥にいた女給仕にボギーは注文を投げ掛けた。
その言葉を聞き、坊やにはミルクがお似合いだぜとか言われるのだろうかとドキドキしながら、巧亜は後の展開を待つ。
どうやら何時ものお約束なのか、女給仕はすぐにジョッキ二杯を持ってくる。奥にいたのは既に用意している最中だったようだ。
炒った豆や干し肉等のつまみが盛られた皿や、空のジョッキが数杯置かれたテーブルにジョッキが二杯、ドンと置かれた。
二杯ともミルクが並々と入ったジョッキが。
(あれ~?何なのこの展開、聞いてないっすよ。何でミルク二杯なの?なんで乾杯とか言いながらその一杯飲んでるの?この髭面は酒と違うんかい)
ボギーはジョッキを巧亜に渡したジョッキにぶつけ、勢いよく飲んでいく。
「冒険者は体が強くないとな。カルシウム採って骨を強くしないと」
ガハハと笑いながら今度は干し肉をかじる。
巧亜はポカンとこの展開に着いていけないのか動きが止まっていた。
「早く飲め。つまみも食いながらで良いから聞いとけよ。このギルドの暗黙のルールとか色々教えてやるから」
「はぁ、頂きます。暗黙のルールですか?」
巧亜は勧められるままにミルクを飲み、炒り豆をかじる。
(もしかして……この髭面は良い人なのか?)
《もしかしなくても、その可能性が高いと思われます》
アイリスは他人事のように巧亜に告げる。
「いいか、まず常設されてる3つある受付のうち、左端の受付は高ランクの人達用になるべく空けとく事になってる。
高ランクの奴らは報告が長ぇんだ。それで時間がかかるからな。」
ボギーは説明に慣れているのか、淀みなく話し続ける。
一番奥のテーブルは、Aランクのワガママな冒険者が自分専用の席だと言って、誰かが使うと機嫌が悪くなり暴れてしまうから、あそこは使わないようにと釘を差す。
また、他に扱いが難しい冒険者のことも教えてくれる。
採取クエで薬草とかを採取するときは数株は残しておく事、
給仕をしてるあの子はイケそうでいけないばかりか、貢がせるだけ貢がせて、男を手玉に取る悪女だから気を付けろとか、冒険者の誰と誰が付き合ってる等、要らない情報まで教えてくれた。
面白おかしく冒険者のイロハまで丁寧に教えてくれる。
どうやら見た目とは裏腹に、本当に巧亜の為を思って話をしていることに改めて気付く。
ふと、近くの会話が耳に入ってくる。
「本当にボギーはお節介だよな~」
「話長いからあの兄ちゃんも疲れるだろうな」
と、笑っている。
(この人、とんだテンプレバスターじゃないですかヤダー)
《見た目と話し方で損してますね、おかわいそうに……》
「……でだ、ダンジョンに初めて入るなら、まず荷運びをやって慣れてからアタックした方が良い」
「ポーターですか?」
(ポーター言うたら魔法学園に通う、眼鏡の男の子か。そりゃポッターや)
なんて思わず心の中でボケとツッコミを入れてしまう。
「ポーターはダンジョンで手に入れた宝や魔物の素材、中で必要な荷物を専門に運ぶ役割を担うんだ。他の事はパーティーがやってくれるから、ダンジョンで必要な技術はそれで盗むんだ。
良いパーティーに当たると色々教えて貰えるしな。お前には関係ないがポーターなら成人前のガキでもダンジョンに入れる」
巧亜が静かに話を聞いていると、再び受付に呼ばれる。
ボギーに断り席を立つと、巧亜は受付に向かう。
「ダンジョン初心者講習と試験官の確認が取れました。講習は明日の午前の部に空きが有りました。その次の講習は三日後の午前ですね。
それと試験できるギルド職員は今出払っているので予約という形になります」
スラスラと話す受付嬢によく噛まないなと感心しながら返事をする。
「明日の講習でお願いします。それと試験の予約なんですが……」
「おっと、試験官なら俺がやってやるぜ?昨日ダンジョンに入ったから明日までは休みだからな」
ボギーが巧亜の会話を喰いぎみに被せて試験官を買って出てきた。
「ボギーさんなら何度も試験官の経験がお有りなので、お任せしても大丈夫ですね」
受付嬢がそう答え、巧亜に何時試験を行うか聞いてくる。そこにボギーがまた話を被せてきた。
「どうせこの時間なら訓練場は空いてんだから、今からやってしまえば良い」
ボギーのこの一言で、訓練場に移動してテストを行う事になった。
ギルドの地下に広がった訓練場に巧亜とボギー、手が空いていたギルド職員と暇潰しの冒険者が集まる。
「じゃあ、壁際に掛けてある武器を選びな」
壁には木製の剣や槍が数種類立て掛けて有り、巧亜は小剣を、ボギーは小剣と円形の盾を手に取った。
二人して訓練場の真ん中程で向かい合う。
「まずは軽く打ち込んで来いや」
ボギーはそう言い、剣と円盾を構える。
「おい、新人。ボギーなんてこてんぱんにノシてしまえや」
野次馬からそんなヤジが飛んでくる。ギルド職員は静かに佇んでいた。
(ヤジうるさいなぁ、ノシてしまうも何も試験やっちゅうねん。さて、D級の実力はどんなもんやろ)
巧亜は間合いを測りながら少しずつ距離を詰める。ボギーの実力も解らないので、軽く剣を打ち込んでみる事にする。
袈裟斬りに打ち込んだ小剣を、いとも簡単にボギーは盾を使い受け止めてしまう。
「何だこの軽い剣は?お前ぇやる気あんのか?」
ボギーのこの一言を皮切りに、巧亜は少しずつ力を込め、スピードを上げていく。
か
(こんな感じでどうだ?まだ余裕そうだな、もうちょい速くするか)
打ち下ろし、切り上げ、横払いと次々と連続してボギーに攻めかかる。
段々と剣速が上がっていき、ボギーは盾で受け止めるが押し込まれる力の強さに体勢を崩す。徐々に攻撃が捌き切れなくっていく。
鍔迫り合いになった所で巧亜に待ったを掛ける。
「……よし、攻撃はこんなもんでいい。次は防御だ」
(なんだよこいつ、あんだけ連続攻撃してきて息一つ上げてやがらねぇ)
ボギーは巧亜がまだ本気で攻撃をしていない事に気付いた様だ。
次に攻守を入れ換え、ボギーは小剣を振りかぶり巧亜に斬りかかる。
巧亜は流れる様な体捌きで剣を躱す。
相手に対して横向きに半身になり、剣による攻撃に前後左右に体を振って躱したり、後ろに飛び下がったりしながらも周りを見る余裕が巧亜には有った。
巧亜に距離を取られたボギーは、斬り上げた剣をそのままに助走をつけ、一気に振り降ろそうとする。
しかし、一瞬早く間合いを詰めた巧亜が下から二の腕を押さえてしまう。
これにはボギーも驚きを隠せない。
「うぉ、これをそんな風に止めるか。お前さんかなりやるんだな。おい、そこの職員、試験はこんなもんで良いんじゃねぇか?」
ボギーはギルド職員に問いかける。
職員も同意し、試験は終わることになった。
「そういや、たまに余所に意識が向いてたが、えらい余裕噛ましてんだな」
ボギーの問いに対して巧亜は、
「戦ってる時に周りの状況にも注意して置かないと、何が起きるかわからないですからね」
と、返した。
「おぉ、それがわかってるとは本当に素人じゃ無えな。こりゃ余裕で合格だわ」
受付に戻った巧亜とボギーは試験の結果を受付に伝える。
「この兄ちゃんなら、ソロでも浅い階なら全然余裕で行けんじゃねぇかな。かなり強ぇわ」
ボギーが押した太鼓判に受付は、巧亜にギルドカードの提出を求め、机に置いてある箱のような物にカード差し、何か操作したた後、返してくれた。
「では、コーア様のダンジョンへの進入は許可されました。明日の講習には遅れずに来てくださいね」
「お手数をお掛けしました。また明日よろしくお願いします。ボギーさんもありがとうございました」
巧亜は受付嬢とボギーにそう言ってその場を離れる。
外に出た巧亜は、ふぅ息をもらす。
(もう夜じゃん、疲れたし宿に行こうか)
《宿屋までのナビを開始します。到着予定は十分後の予定です》
読んで頂き、ありがとうございます。




