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第十五話 迷宮都市エリルダール

 迷宮都市エリルダール。夢と希望、富と堕落。人々のあらゆる感情、欲望が集まる街。


 二週間程の旅を終えて、巧亜は無事に迷宮都市へと辿り着いた。

 途中で魔物に襲われたり、仲良くなった行商人と行き先が変わるまで、旅は道連れと一緒に行動したりした。

 離れる時にはまた会おうと約束する程であった。




 迷宮都市エリルダールは高い壁に覆われ、外界からの侵入を阻んでいる。

 石や煉瓦造りの家が立ち並び、正門から続く石畳の主要道路は馬車も走り、また余裕ですれ違うことが出来る様に幅広く作られていた。

 通りすぎる人々は皆、活気に溢れ楽しそうだ。


 迷宮に挑む冒険者の為に生まれたと言っても過言では無い街。


 ここには、夢を叶えて独り立ちを願う若者や、一発当てようとする冒険者、それに群がり大儲けしようとする商人が集まる。

 武器や防具など装備品を扱う商店、怪我を治療するための治療院、飲食店、娼館、奴隷市場などが増えていった。


 多くの金や価値の有る物が溢れ、それを掠め取ろうとする貴族等が暗躍する。


 そうして、街は欲望を糧に段々と成長して行く。今も其れが留まることは無い。




「お~、着いたなぁ、迷宮都市。街に入るのに時間かかったよなぁ」


 お昼頃に正門の前に着いた。しかし街中に入ろうとする順番待ちの長い列に並び、中に入れたのは夕方に近かった。

 ブラブラと歩いていると、忙しく動き回る人の中には成人前の子供を見ることが有り、総じてみすぼらしい格好をしている者が多いのが少し気になった。



「さて、ギルドにでも参りますか」



 メインストリート沿いに佇む煉瓦造りの建物。そこに冒険者ギルドは有る。



 風に揺れる木製の看板には、冒険者ギルドを表すマークが見受けられる。見上げた顔に反射した日の光が当たり、眩しくて瞳を細めた。


 飴色に熟成され、艶がでた木の扉を押し開けると、喧騒が耳に飛び込んでくる。

 入ってすぐのこの場所は、酒場になっているようだ。テーブルを囲んで食事や酒盛りをしている客がちらほらと居る。



 室内の喧噪が一瞬だけ止まる。誰も彼もこちらを窺うような視線を突き刺してくる。

 巧亜が少し顔をしかめたのは正直うっとおしいと感じたのだろう。


 半ばそれを無視して、酒場を越えた先の3人が並んで座っているカウンターの側まで行く。その内の一人と目が合ったのでそこへ向かう。


「こんにちは。ここ、受付で合ってますか?」

 右端に座る女性に向け、穏やかに微笑みながら訊ねてみる。

 サイドで髪を纏めた金髪碧眼の美しい女性だった。


 訊ねられた女性も微笑んで挨拶を返し、質問に答える。

「ええ、大丈夫ですよ。ここで合っていますわ」


 綺麗な笑顔だと巧亜は思った。媚びている訳でもない。上からのバカにしたような雰囲気も感じない、極々自然体で優しい笑顔だと一瞬見とれてしまう。


「先ほど迷宮都市に着きまして、落ち着いたら迷宮に挑戦しようと考えているんですよ」


 我に返った後、受付嬢の反応を見ながら話し続ける。


「つきましては迷宮に挑戦するに当たり、注意して置かないといけない事や、アドバイスが頂けたらと思うのですが、宜しいですか?」


「わかりました、説明させて頂きますね。まず迷宮に入り探索を行えるのは、基本的に成人してることが前提になっております。次に冒険者ランクがEクラス以上であることです」



 冒険者ランクとは、S、A~Fの七ランクがある。

 依頼達成等のギルドへの貢献度の高さ、冒険者の実力を指し示している。


 ちなみに巧亜は迷宮都市に来る前に登録しただけなので、ランクは最低のFランクである。

 成人はしているが、このままではランクのせいで入れないのかと顔をしかめる。



「成人はしていますが自ランクはFなので、そうしたら迷宮には入れないのですね」


 ダメ元で訊ねる巧亜に受付嬢は答える。

「いえ、基本的にはそうですが、実力的にランクと見合わない方もいらっしゃますので、救済措置がございます」


 何かしらの措置がなされるようだ。その言葉に巧亜は少し安心する。気を取り直し救済措置とは何なのかと訊ねる。


「救済措置は戦闘能力の確認ですね。迷宮に挑戦するには戦える実力が不可欠ですから。」


「一体どのような方法で確認するんですか」

「ギルド職員、もしくはこちらで指名した冒険者と模擬戦を行って頂きます」


 それなら何とかなるかとほっと胸を撫で下ろす。

 模擬戦を受ける旨を受付嬢に伝える。



「では、確認してその様に致しますね。模擬戦後に軽い迷宮講習を受けることが出来ますが受講されます?」


「講習があるんですね。ぜひ受けたいと思います」

「そうしましたら、残りの説明は講習でお聞きください」


 内容が被ってますからと、イタズラっぽく笑って伝えてくる。

 なかなかチャーミングな人の様だ。


「確認を取りますのであちらの席でお待ち下さい」



 巧亜は促されるまま、空いている席に座る。

 するとそこに近付いてくる者が居ることに気付く。受付嬢と会話して居る時から、ずっとこちらに視線を向けていた者だ。


(お、誰かこっちに来るぞ。定番の雑魚が絡んでくるやつかな)

《何かワクワクしてますね、巧亜様》

(そりゃ、テンプレ展開きたーってなるでしょ)


 心の中でアイリスとそんな会話をしながら近付いてくるのを待つ。


「おい、兄ちゃん。ちょっと良いかい?」


 話し掛けてきたのは、そこそこの筋肉で覆われた、むさ苦しい髭面の男だった。


 周りで飲んでいる男の声が耳に入る。


「おい、あれ見ろ。ボギーのかわいがりがまた始まるぞ」

 飲んでいた男がニヤニヤしながらこちらに注意を向ける。


「かー、あの兄ちゃんもかわいそうに」

 席を共にしている者が同情の目を送ってくる。



「俺ぁ、ボギーっていうD級冒険者だ。よろしくな新入り」

 自己紹介をしながら男はニタリと嫌らしい笑みを浮かべた。

ご覧頂きありがとうございます。

感想、レビュー、ブックマーク等、して頂けるなら嬉しいです。

次話は27日投稿予定です。

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